手元にあったものを投げつける青木氏(関係者提供)

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 9月2日、大手タクシー会社「東京エムケイ」のオーナー・青木政明氏(62)が従業員に対してパワーハラスメントを行ったことが発覚したとして、同社が記者会見を開いた。問題となったのは先月13日、東京・汐留のオフィスで行われた朝礼で、青木氏が「ファック!」「お前帰れ!」など社員に罵詈雑言を浴びせ、椅子などを投げつけて威嚇したパワハラ事案だった。

 会見では、同社の代表取締役であり青木氏の姉である松原京美氏が「お客様、従業員、関係各位、並びに社会の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。青木氏は反省している様子であると前置き、ハラスメント研修を徹底して本人を"出禁"にするなどと述べた。だがしかし、この説明に納得していない社員もいるようだ。【前後編の後編。前編から読む

 前編で報じたように、「東京エムケイ」には独自の英会話教育のシステムが存在する。青木氏はこれを推進しており、すべてのハイヤー乗務員に英会話能力を習得するよう強く促していた。パワハラ事案があった当日も、オフィスを訪れた青木氏はある社員に「この文は英語でなんて言う?」と質問。社員はこれに答えられず、青木氏が怒りをぶちまけた。

「記者会見によれば青木氏は当日、乗務員たちに対し"英語のテスト"を実施した際、交差点を意味する『インターセクション』などの単語を尋ねたが誰も答えられず、激怒したとされています。『社員の中に反抗的な態度をとった人がいた』という説明もありました。

 青木氏の姉である松原社長は、青木氏と直接話したといい、自身が不在中に発生した事案について『周りは止められなかった。私がいなかったことが最大のミスで原因』と悔やんでいました」(キー局社会部記者)

 会見の内容を聞いたという現役社員が不満をあらわにこう話す。

「"ファック慣れ"しちゃいましたよ」

「論点が違うんですよ。問題は『ドライバーに英語力がない』とか、教育の体制がなっていないということではない。本質はオーナーの気質と、彼の言動を看過したり、立場をなあなあにしたりしてきた上層部に責任がある。会見を聞くとまるで『乗務員側にも責任がある』かのような印象を受けます。

 当時、反抗的な態度をとっていた人なんていなかったみたいですし、厳密には『インターセクション』が答えられないからキレたわけではないのですよ。会見で社長が笑っているような場面もありましたし、本当に事態を重く受け止めているのか不安になります」

 青木氏の暴言や理不尽な発言は日常茶飯事だった。2017年12月に暴行トラブルを起こして同社の役員を降り、一旦は"出禁"になったが、数年経つと再び社に出入りするようになったという。前出とは別の社員はこう語る。

「気まぐれで会社に来てああやって怒鳴り散らすんだよね。落ち着いて話すことができない方です。今回報道された動画は氷山の一角で、あんなのは長年ずっと続いています。

 直接、暴力を振るうことはないけど、物を投げてPCのモニターがひん曲がったりなんて日常茶飯事です。暴言だと『ファック』なんかは常套句で、我々はみんな"ファック慣れ"していますよ」

 さらに別の社員曰く、

「オーナーは自分の考えは絶対に曲げない。『これはこうだから、こう改善しよう』なんて提案はなく、意に沿わないことがあれば、いきなり『お前死ね』なんですよ。0か100の人間なんです。

 キレていないときがほぼない。点呼室でも愛想笑いすると『てめぇ笑ってんじゃねぇよ、なに調子に乗ってるんだよ』と怒られる。かといって黙ってうつむいていても、それはそれでキレられる。どうしようもないからみんな怖くて固まっちゃうんです」

 常日頃から社員らは青木氏の言動に困っていたようだ。さらに別の証言によれば、8月13日の"パワハラ事案"があった数日後にもこんな出来事があった。

姉社長も手がつけられず…

「オーナーが50歳以上のドライバーを急に集め、2時間近く拘束したんです。『お前らファッキンルーザー!! お前辞めろ!』などの罵詈雑言が飛び、退職勧告同然の"独演会"のようだったと社内では揶揄されています。当日、集められたドライバーの中にはハイヤーの予約があったが、キャンセルせざるを得ない人もいました」(東京エムケイ関係者)

 他方、実の姉である松原社長も青木氏には手を焼いているようだ。"パワハラ事案"があった7日後、社員に向けて〈オーナーを来させないためには〉と題したこんなメールを送っている。

〈お疲れ様です! 皆さん、英語を頑張ってください! シャッブル(社員向けの英語教材)の1から10迄を完全に覚えて来て下さい! そうすれば、オーナーは来なくなります! オーナーは、怒らなくなります! 皆さん、努力して下さい!〉(原文ママ)

 なぜ長年にわたって、青木氏はこのような言動を続けられたのか。冒頭の現役社員が続ける。

「100%株を持つオーナーだから、誰も強く指摘をしてこなかった。社長が助けるそぶりを見せることもありましたが、少し間に入ってくれるくらいです。社長も『(親族の)私以外が社長になると、もっと酷いことになる』といつも言っているので、同情はしますが……。

 記者会見を受けて、外資航空会社の顧客の方からは、『オーナーの件はよく耳にしていた。けど、エムケーさんが優秀なのには変わりないからね。頑張ってほしい』と励ましの言葉をもらいました。今回の事案で会社がいい方向に改善することを切に願います」

 一連の証言について「東京エムケイ」の管理本部に問い合わせたところ、以下のように回答した。

「当社では現在、当社の業務執行から独立した立場にある外部弁護士に調査を依頼し、
関係者への聴取を含め、事実関係及び発生原因の調査・検証を進めております。 現段階で個別のご質問に回答することは、調査に先立って当社が事実認定を行うことになり、 調査の独立性及び公正性に影響を及ぼすおそれがあるため、回答を差し控えさせていただきます。

 当社といたしましては、外部弁護士による調査に全面的に協力し、その結果を踏まえて、必要な是正措置及び再発防止策を講じてまいります」

 松原社長は記者会見で「できれば(青木氏に)株主から抜けてもらえたらなという思いがあります」などと、オーナーとの関係を断ち切る意向を示している。青木氏が居座り続けてきた"玉座"から降りる日も近いのだろうか──。

(了。前編から読む)

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