【加藤 裕則】法廷で連発された”痛すぎる答弁”…!関電経営陣が告白した「隠ぺい体質の実態」と社長が「社外取締役」を信用できない危うい事情

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拡大し続けた腐敗

2019年、関西電力の会長、社長、副社長らが、福井県高浜町の元助役・森山栄治氏から現金や金貨、商品券など多額の金品を受け取っていたことが発覚した。

前編で示したように、2026年春、かつて関電の中枢にいた元会長、元社長らがついに証言台に立った。

前編はこちら→『あのとき、関西電力の会長と社長は何を恐れていたのか…?金品受領3億6000万円の悪弊を見逃した元首脳証言が物語る「同調圧力の危うい罠」』

彼らが繰り返したのは、「金品はもらったのではない。森山氏が怒るので、預かっていただけだ」という説明だった。だが、原告側弁護士や裁判長の質問は、その説明のさらに奥へと踏み込んでいく。

関電トップたちが繰り返した弁明

本人尋問で、旧経営陣が繰り返した説明は、「森山氏との関係悪化を避けたいので、その場では返せなかった」というものだ。

原告側の弁護士は、森山栄治氏から金品を渡された元会長、元社長らに、「なぜ、その場で返さなかったのですか」と繰り返し問いただす。これに対し旧経営陣は、森山氏が福井県高浜町の元助役として地元に強い影響力を持ち、高浜原発の運営にも無視できない存在だったと説明した。

金品を強く突き返そうとすると森山氏は激高し、「関電との付き合いもこれで終わりだ」、「むしろ旗を上げて、再稼働をさせない」と口にしたという。

だから、旧経営陣はその場では受け取った。ただし自分のものにはせず、いったん保管する。そして森山氏の機嫌を損ねない時期を見計らって返す--。

要するに、「もらった」のではなく、「返すまで預かっていた」というのである。

原告側は、「それなら、個人が自宅で保管するのではなく、会社でまとめて預かり、金庫に保管する方法もあったのではないか」と迫った。被告側は、「個人に渡されたものだった」、「会社で預かれば会計上の処理にも困る」などと反論した。

法廷では、この「預かっただけ」という言葉をめぐって、双方の主張が何度もぶつかった。

金貨10枚が保管された「会社の金庫」

ところが、その説明を揺さぶる事実が出てくる。2026年5月14日、証言台に立った岩根茂樹元社長の証言だ。

岩根氏は、質問に一つひとつ慎重に答えていたが、その日の終盤、株主側代理人の河合弘之弁護士が、金品の保管方法を追及した。

旧経営陣の多くは、森山氏から渡された金品を「個人として預かっていた」と主張していた。自宅のクローゼットなどで保管していた元役員もいる。

しかし岩根氏の場合は違う。

2017年3月15日、関電本社で森山氏と面会した際、紙袋を渡され、面談後、中を確認すると金貨10枚などが入っていた。岩根氏は、それを部下に指示し、関電社内の金庫に保管させていた。

河合弁護士が尋ねる。

「会社の仕事として、秘書総務の人に命じたのですね」

岩根氏は、「会社の仕事かどうかは別にして……」と言いかけた。

すると河合弁護士は、「別ではない」、「命じたんですね」と畳みかける。

岩根氏は、「部下に命じました」と答えた。

ここで、「個人として預かった」という旧経営陣の説明と、実際の保管方法との間にズレが生じる。

他の被告らは、会社で預かると本気で返還しようとしない。個人で預かるから懸命に返そうとするという説明をしていた。では、岩根氏はなぜ会社の金庫を使ったのか。

河合弁護士はさらに、「ほかの人たちにも、会社で保管しようとなぜ言わなかったのですか」と、当時の社長としての対応を問いただした。

岩根氏は、「本人がそれぞれ適切な方法で保管していました」と答えるしかなかった。

「それは不適切…」、裁判長が口にした一言

本人尋問を傍聴していて、印象的だったことがある。原告、被告双方の弁護士による尋問が終わり、裁判官からの質問に移ると、法廷の空気が変わったのだ。

裁判官が繰り返し聞いたのは、「違法だったかどうか」よりも、「その判断は企業経営者として本当に適切だったのか」という問いだった。

岩根氏への質問もそうだった。

松阿弥隆裁判長は、森山氏から金品を渡され、それを保管し続けたことについて、「一般的には不適切なことではありませんか」と尋ねた。

岩根氏は最終的に、一般論としては不適切だと認めた。それでも当時は、森山氏との関係を壊せば高浜原発の再稼働に影響する危険があったと説明した。

そこで裁判長はさらに踏み込んだ。再稼働のためなら、この問題には「目をつぶるしかない」という判断だったのか--。

岩根氏は、「(当時の判断としては)これしか選択肢がなかった」「やむを得なかった」と答えた。

岩根氏自身も、一般的には不適切だと分かっていた。それでも、原発再稼働という経営上の最優先課題のためなら、例外もやむを得ないと考えたのである。

関電首脳のこの言葉は、裁判の行方を左右するかもしれない。

「取締役会を信用していないのですか!」

裁判官の疑問は、もう一つの大きな争点、なぜ、問題を取締役会に報告しなかったのか、ということにも向けられた。

岩根氏に対して裁判官からは、「社外取締役と共に再発防止策を考えるべきだったのでは」という質問があがる。これに岩根氏は、「社外取締役は大所高所から意見をもらう存在」などと説明した。

だが、そもそも重大な事実を知らせなければ、「大所高所」から意見を述べることもできない。

この問題は、八木誠元会長への尋問で、さらに鮮明になった。

5月11日の八木氏への尋問で、八木氏は、「森山氏側に不正な発注をしたことはない」、「会社に損害を与えていない」と繰り返し、取締役会に報告しなかった判断は妥当だったと主張した。

すると裁判長は、「(あなたが)言われたことは、すべて『(取締役会に報告を)しない理由』ですね。報告するメリットを考えたことはなかったのですか」と尋ねた。

驚いたことに、この質問に八木氏は取締役会へ報告しなかった理由の一つとして、情報漏洩の危険を挙げたのだった。

金品受領問題を取締役会に持ち込めば、社外取締役らを通じて外部へ情報が漏れるかもしれない。それが森山氏の耳に入れば、森山氏を刺激し、原発再稼働に悪影響が出る可能性がある--。

これを聞いた河合弁護士が発言を求めた。

「あなたは取締役会のことが信用できないのですか。それでは重要な情報を(取締役会で)とりあげられないではないか」

本来なら、経営トップだけでは判断できない重大問題だからこそ、取締役会に報告するのだが、関電では逆だった。重大な問題だからこそ、外に漏れることを恐れ、取締役会に上げなかった。

それでは、社外取締役は何のためにいるのだろうか。

スーツ16着は「社会的儀礼」

尋問では、旧経営陣の金品に対する感覚そのものも問われた。

元副社長の豊松秀己氏は、森山氏から渡されたスーツの仕立券を使い、16着のスーツを仕立てた。その是非を問われた豊松氏は、「スーツは社会的儀礼の範囲内」と明言した。

豊松氏は京都大学大学院工学研究科を修了。岩根氏は京都大学法学部、八木氏は京都大学工学部。森詳介元会長も京都大学工学部を卒業し、2011年から関西経済連合会会長を務めた。

このように、関西電力は、関西財界を代表する企業である。そのトップに上り詰めたエリートたちが、現金、金貨、商品券、スーツ仕立券などを渡してくる一人の元助役に対し、「返せば激高する」「原発再稼働に反対される」として、金品を抱え続けた。

なぜ、そんなことが起きたのか。

旧経営陣が法廷で繰り返したのが、福島第一原発事故後の経営危機だった。

原発停止によって関電は巨額の赤字を抱えた。経営を立て直すには、原発を再稼働させる必要がある。関西への電力安定供給のためにも、再稼働は最重要課題だった。そのためには、高浜町で強い影響力を持つ森山氏と正面から対立することは避けなければならなかった--。

原告側が、「森山氏自身も原発再稼働によって利益を得る側だった。なぜ本当に再稼働へ反対する必要があるのか」と疑問をぶつけると、被告側は、「激高すると何をするか分からない人物だった」と反論した。

巨大企業のトップたちが、一人の元助役をそこまで恐れるとは、何度聞いても腑に落ちない。しかも、その状態を何年も放置したことは、巨大公益企業の経営として許されるのか。

社員は給与カット、役員には「労苦に報いる」

もう一つの大きな争点が、役員報酬をめぐる問題だ。

福島第一原発事故後、原発停止によって関電の経営は悪化した。電気料金を値上げする一方、政府や利用者の理解を得るため、役員報酬も大幅に削減した。

削減率は55~70%に達した。

ところが金品受領問題の発覚後、関電が調べると、退任した旧役員らに対し、その後、別の形で多額の報酬が支払われていたことが判明する。月490万円という元役員もいた。

2016年3月、秘書室が作成した「役員の報酬返上に係る対応措置の取り扱いについて」という資料には、「その労苦に報いるため本措置を採る」という記載があった。

第三者委員会は、こうした支払いを、過去に削減した役員報酬を事実上補填するものと認定した。

一方、森詳介氏ら被告側は、その見方を否定した。退任役員には実際に新たな業務を委嘱しており、支払ったのはあくまでその仕事への報酬だという。

原告側は、「具体的な業務内容が明確ではない」などとして、業務対価という説明は後付けではないかと追及した。

森氏自身、「労苦に報いる」という発想が当初あったことは認めたが、そのうえで、次のように説明した。

「当初は労苦に報いたいと考えたが、もっと大事なことがあることに気が付いた。原発の再稼働のためにこれまでの経験を活かしてもらおうと思った」

社員には給与削減を求め、利用者には電気料金の値上げをしておきながら、一方で、経営トップ経験者だけには「労苦に報い」ようとする。金品受領問題と役員報酬問題には、どこか共通するものがある。

法廷の最後に株主代理人の河合弘之弁護士は「(当時の関西電力の役員らは)わが国の会社法とその精神を否定するもので容認できない。この訴訟は上場会社の法令順守とガバナンス問題の総ざらいのような事件。市民や経済界がこぞって注目している。重要判例として残るものだ」と述べた。

6年に及んだ訴訟は、来年3月3日の判決を待つ。

さらに連載記事『【独自】「永守氏は不正を知っていた」…!--熟練弁護団がニデック創業者の責任を問う根拠』でも、企業不祥事の実際についてレポートしているので、参考にしてほしい。

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