板野友美氏の公式インスタグラムから

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元AKB48の板野友美氏が9月3日、自身のYouTubeチャンネルに公開した家族旅行の動画(Vlog)をめぐり、SNSで批判が相次ぎました。

投稿された動画には、ザ・リッツ・カールトン日光の大浴場の脱衣所で、板野氏や長女が身支度をする様子が映っていました。

これにより「脱衣所というプライバシー性の高い空間で撮影をしたのは非常識ではないか」という批判が、SNSを中心に巻き起こりました。

板野氏は9月5日、「こちらのシーンにつきましては、ホテル側より特別に撮影許可をいただいた上で撮影しております。また、本動画についても、リッツ・カールトン様に撮影協力いただいております」と説明しています。

ところが、ホテル側は当初、週刊誌の取材に対して「館内全般に関する撮影許可は下りていました」としながらも、「一般常識でも法律でも撮影ができかねる脱衣所等では、撮影許可は下ろしていません」と回答したとのことで、板野氏の説明との食い違いが見られました。

一連の経緯を受けSNSでは、「もう一般常識がない迷惑系YouTuberじゃん」「リッツカールトンからの板野友美への『常識のなさ』を皮肉る想いが感じられる」など、板野氏を批判する投稿がなされました。

しかしその後、ホテル側は週刊誌の取材に対し、追加で「当該の撮影は大浴場の営業時間外に行われたものであり、他のお客様がご利用になる状況ではございませんでした」との回答を行ったと報じられました。

こうした経緯から、当初SNSで広がった「ホテルの許可なく脱衣所で撮影した」という前提は、必ずしも正しくなかった可能性が浮上したのです。

現時点で真実がどうであるかは定かでないものの、事実誤認に基づいて他人を批判することには、法的リスクが伴う点に注意が必要となります。

本件のようなケースにおいて、投稿者にはどのような法的責任が生じるのか、解説します。(弁護士・阿部由羅)

SNS投稿でも「名誉毀損罪」が成立する可能性

「無許可で脱衣所を撮影した」「他の利用客がいる時間帯に脱衣所を撮影した」など、相手の社会的評価を下げるような具体的事実を公然と摘示して批判した場合は、名誉毀損罪(刑法230条1項)の構成要件に該当します。

名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。

後述するように「公共の利害に関する場合の特例」などによって違法性が否定されるケースもありますが、SNSで他人を批判する投稿には処罰のリスクが伴う点に留意すべきです。

また、名誉毀損罪に該当するような投稿をした場合は、民法上の「不法行為」も成立し、被害者に生じた損害を賠償しなければなりません(民法709条)。

特に被害者が事業者や著名人で、営業妨害に当たる投稿をした場合には、多額の損害賠償責任を負うこともあり得る点に注意が必要です。

「公共性」「公益性」は満たせるかもしれないが…

名誉毀損罪については「公共の利害に関する場合の特例」(刑法230条の2)が設けられています。

不当な言動の規制と表現の自由の確保のバランスをとるための特例で、次の3つの要件を満たしていれば、名誉毀損罪は不成立となります。

(1)公共性:摘示された事実が、一般の多数人の利害に関係するものであること
(2)公益性:相手の社会的評価を下げるような事実を摘示した主たる動機が、公益を図るためであったこと
(3)真実性:摘示された事実が真実であることの証明があったこと

本件に関する投稿において多く見られた「無許可で、あるいは他の利用客がいる時間帯に脱衣所で撮影をした」という事実の摘示については、(1)公共性が認められる可能性はあります。

ホテルの脱衣所は一般客が利用するプライベート空間であるところ、そこで不当に撮影が行われているとすれば、それは一般の多数人の利害に関係すると考えられるためです。

また、(2)公益性についても、認められる可能性があると思われます。

たしかに、SNS上で注目を集めたい、著名人を批判して憂さ晴らしをしたい……といった不純な動機もあるかもしれません。しかし同時に「プライベート空間である脱衣所で不当な撮影が行われていることについて問題提起をしよう」といった動機もあるとすれば、その動機には一定の公益性があると認められる余地があります。

複数の動機が併存している場合は、主たる動機に公益性が認められれば足りると解されています。本件において板野氏を批判した投稿についても、社会に対する問題提起の動機が主である、といえるケースがあり得るでしょう。その場合は、公益性が認められ得ると考えられます。

一方、(3)真実性の要件については、本件において特に問題になりやすいと考えられます。

事実誤認に基づいて板野氏を批判する投稿については、公共の利害に関する場合の特例が適用されません。何が真実であるか判明していないのに、憶測に基づいて批判をするのは危険といえます。

事実について裏付けのない投稿は法的責任のリスク

本件については「無許可で脱衣所を撮影した」「他の利用客がいる時間帯に脱衣所を撮影した」といった認識に基づいて、板野氏を批判する投稿が多く見られました。

しかし、週刊誌の取材に対してホテル側が回答したとされる内容を見る限り、上記の認識が必ずしも正しくない可能性があるように思われます。

板野氏を批判する投稿が事実誤認に基づいている場合は、前述の「公共の利害に関する場合の特例」は適用されません。

もっとも、「無許可で脱衣所を撮影した」「他の利用客がいる時間帯に脱衣所を撮影した」ことが真実だと思っていた、つまり名誉毀損罪の「故意」がなかったという反論は考えられるところです。

この点、名誉毀損罪の故意の成否は「摘示した事実が真実であると誤信したことについて、確実な資料・根拠に照らして相当の理由があるかどうか」によって判断すべきものと解されています(最高裁昭和44年(1969年)6月25日判決)。

「確実な資料・根拠に照らして相当の理由がある」場合に当たり得るのは、たとえば権威ある公的な資料によって真実性を裏付けることができるケースや、当事者に対して十分な取材を行っているケースなどです。

一方、週刊誌の記事やウェブニュース、SNSのタイムラインなどを見ただけでは、誤信について「確実な資料・根拠に照らして相当の理由がある」とは言いにくいでしょう。

本件に関して見られたSNS投稿の大半は、事実について十分な裏付けのないまま板野氏を批判するものであったように見受けられます。

もし事実誤認であったことが分かれば、そのような投稿をした人は、名誉毀損罪や不法行為の責任を負う可能性が十分あると考えられます。

匿名でも、発信者情報開示請求で特定は可能

板野氏を批判するSNS投稿の多くは匿名で行われていますが、匿名なら責任を免れることができるわけではありません。

被害者が「発信者情報開示請求」を行うと、投稿先のサイトの管理者や、投稿者が用いている端末のインターネット接続業者などから個人情報が開示され、匿名投稿者が特定される可能性があります。

「匿名だから大丈夫」などと考えて、十分な根拠がないのに著名人を批判する投稿をするのは、きわめてリスクが高い行為と言わざるを得ません。

■阿部由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。