関連画像

写真拡大

「君が幸せになるのは許せない」「少し痛い目見ますか」

娘の交際相手だった男子中学生に、こんなメッセージを送り続けたとして、50代の女性が8月下旬、脅迫と傷害の疑いで北海道警に逮捕された。

道警によると、女性は2024年12月20日から2026年4月1日にかけて、札幌市内に住む男子中学生の携帯電話に、脅迫する文言を含むメッセージを送信し、精神的な傷害を負わせた疑いが持たれている。

北海道ニュースUHB(8月27日配信)は、記事の見出しで「娘の別れ話がきっかけか」と報じている。今年4月、男子中学生家族から「息子が元交際相手の母親から脅迫を受けている」などと警察に通報があったという。

メッセージは昼夜を問わず送られ、数千件に上ったとされる。女性は容疑を認めているという。

STVニュース北海道(8月26日配信)によると、男子中学生は「完治まで相当日数を要する精神障害」を負ったとされている。

この事件で目を引くのは、容疑が「脅迫」にとどまらず、「傷害」にも及んでいる点だ。

殴る、蹴るといった身体への直接的な攻撃があったわけではない。それでも、文字のメッセージを送り続けることで、なぜ傷害罪が成立し得るのか。刑事事件にくわしい吉田要介弁護士に聞いた。

●「傷害」は身体的なケガに限られない

──殴る・蹴るといった身体への直接の攻撃がなく、メッセージを送っただけでも傷害罪は成立するのでしょうか。

傷害罪というと、殴る、蹴るなど、身体に直接力を加える行為をイメージしがちです。しかし、刑法上の「傷害」は、人の身体の生理的機能を害することとされており、身体的なケガに限られません。

最高裁も、暴行や脅迫などによってPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症させた場合、精神的機能の障害を生じさせたものとして、傷害にあたり得るとしています。

──「相手を病気にさせよう」という意図までなくても成立しますか。

「相手を病気にさせよう」という積極的な狙いまでは必要とされません。自分の行為によって相手が傷害を負う可能性があるとわかっていて、それでも構わないと思っていた、つまり認容していたといえれば、故意は認められると考えられています。

今回のように、昼夜を問わず大量のメッセージを長期間送り続けていたのであれば、相手が精神的に追い込まれる可能性をわかっていたと評価しやすく、傷害罪の故意が認められる余地は十分にあると思います。

脅迫罪2年以下、傷害罪は15年以下の拘禁刑

──なぜ警察脅迫の疑いだけでなく、傷害の疑いでも逮捕したのでしょうか。

脅迫罪の法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。一方、傷害罪は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、刑の重さにはかなりの差があります。

精神的な傷害を裏づける証拠がそろっているのであれば、より重い傷害罪の適用を検討するのは自然な流れです。

特に今回の事件では、約1年3カ月にわたり、昼夜を問わず数千件のメッセージが送られたと報じられています。

単発の脅迫ではなく、長期間にわたって大量のメッセージを繰り返し送った結果、精神的な障害が生じたのであれば、行為と傷害との因果関係や、傷害の故意を裏づける事情になり得ます。

捜査機関がこうした事情を踏まえ、脅迫だけでなく傷害の疑いもあると判断した可能性があります。

●子どものトラブル「相談できないまま被害が深刻化することも」

──報道によれば、メッセージが送られ始めたのは2024年12月で、今年4月に家族警察相談しています。

子どもは、怖い思いをしても「自分が我慢すればいい」と抱え込みがちで、誰にも相談できないまま、被害が深刻になってしまうことがあります。

もちろん、悪いのは被害を受けた子どもではありません。

だからこそ、「困ったこと、怖いことがあったら、いつでも話していいよ」と普段から伝えておくことが大事だと思います。親でも、学校でも、警察でも構いません。

そうした信頼できる環境をつくっておくことが、被害の早期発見や深刻化を防ぐ一番の力になります。

【取材協力弁護士
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会委員、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com