「2900円食べ飲み放題」でもなぜ潰れない?大学生御用達「居酒屋 一休」が激戦区・東京で生き残りつづける理由
居酒屋の倒産ラッシュが報じられる中…
食材や人件費、家賃の上昇……そこに酒類の値上げまで加わって「居酒屋」はかつてないほどの逆境に追い込まれている。東京商工リサーチが今年7月に発表した、2026年上半期(1-6月)「居酒屋」倒産動向によれば、倒産は過去最多の118件。これはバブル崩壊前の1989年以降、初めてとなる100件を上回った形での大幅増だ。
居酒屋側もなんとかコストを抑えようと努力はしているが、それもすでに限界を迎えている。かといって値上げに踏み切ろうものなら、節約志向が高まる顧客から敬遠され客足が遠のく。この苦しい板挟みの結果、倒産を余儀なくされている店が増えているという。
ただ、そういった環境下でも、変化するニーズを的確に捉え、積極的な投資で勢いを増している居酒屋もある。今回紹介する、居酒屋チェーン「一休」だ。同チェーンは1975年、たった15席の小さな高円寺店からスタートして半世紀、「東京で一番安くてうまい店」を掲げ、関東圏で知名度を拡大してきた。
もちろん店舗数で比較すると、大手チェーンに規模感では負けてしまう「一休」。それでも、日本一の激戦区である東京で生き残っているのには理由がある--それは“大学生の飲み会御用達”と言われるほど、学生たちから異様なまでの支持を集めていた点だ。
“諸刃の剣”と言われる「食べ飲み放題」だが
店舗の立地は大学生が集まる高田馬場や新宿歌舞伎町、池袋などの繁華街。そして、店舗の収容人数は100人超えは当たり前、池袋店にいたっては最大収容人数480人を誇っている。どれだけ大人数のコンパであっても恐るるに足らず、というわけだ。
そして、なんといっても「一休」の最大の強みといえば、圧倒的ボリュームと安さを両立した食べ放題・飲み放題コースの存在である。サラダ、揚げ物、もつ鍋などのフード50種類以上、ドリンク60種類以上、合計110品以上が120分食べ放題・飲み放題の対象となるコースが現在でも税込2900円と破格の価格設定となっており、いまなお好調を支えている。
とはいえ、ここで筆者が示しておきたいのが、外食業界的には食べ飲み放題というシステムは“諸刃の剣”であるということだ。つまるところ、様々な問題点を抱えているのである。具体的には、
・客側の「元を取りたい」という心理が強く、過度な注文から食べ残し、飲み残しなどフードロスが起きやすい
・スタート時の集中注文でオペレーションが混乱しやすい
・追加注文の回数が通常の来店時より多くなり、オペレーションの負担が重い
・強い集客力の一方で客層が偏り、高単価客が離反する恐れがある
などがそうだ。つまりよほど盤石な経営基盤が無い限り、安易な食べ飲み放題は店側の身を滅ぼしかねないのである。その点、「一休」はどうだろうか。
自己資本比率は驚きの55.7%
「一休」を運営する株式会社一休の直近の決算公告(第40期、2024年12月末時点)によれば、7600万円の当期純損失、つまり“赤字”を計上していることがわかる。だが、ここで「経営不振じゃないか」と騒ぎ立てるのは早計だ。
この損失原因はあくまで主力店舗の大型改装、新規開店、そして2025年にスタートした「もんじゃ酒場 一休」という新業態への転換などによる、いわば将来の成長に向けた投資によるもの。したがって本業の儲ける力が低下したわけではない。
その証拠に、同社の財務健全性は他の居酒屋チェーンと比較しても、群を抜いて健全な状態にある。利益剰余金は12億3777万円、自己資本比率は55,7%と盤石。借入金による調達に依存することなく、利益留保内で再投資するなど、堅実な経営を実現しているのだ。
さらに付け加えるならば、「一休」は居酒屋という業態では珍しく高い従業員満足度を誇り、離職率の低下と接客レベルの維持を保っていると聞く。また、不動産の賃貸・管理業も営んでおり、上述の通り景気に左右されやすい本業の補完も行っている。
「安さ」だけが取り柄、とは口が裂けても言えない--。半世紀にわたって培ってきた盤石な経営基盤があるからこそ、居酒屋倒産ラッシュと叫ばれるこの時代でも、食べ飲み放題を武器にして、「一休」は生き残ることができているのだ。
【後編記事】『居酒屋チェーン「一休」突然の大改革…店名を一新、さらに名物「会員カード」廃止に踏み切った真相』につづく。
