多くの戦闘機を搭載した米軍の空母は、米国の強大な軍事力の象徴だ。

 東アジアで空母不在の期間が長引けば、抑止力低下を招きかねず、懸念を抱かざるを得ない。

 イラン情勢に対応するため、神奈川県の横須賀基地を拠点とする米第7艦隊の空母「ジョージ・ワシントン」が、8月半ばから中東に配備されている。空母「エイブラハム・リンカーン」と現地で交代するためだ。

 エイブラハム・リンカーンは5月に米国に戻る予定だったが、イラン攻撃の長期化で中東にとどまった。派遣日数は300日近くに及び、物資不足や乗組員の士気低下が問題になっていたという。

 ジョージ・ワシントンの中東派遣により、西太平洋は当面、米空母が1隻もいない状態が続く異例の事態となった。

 米軍は11隻の原子力空母を運用している。空母と駆逐艦などによる一つの空母打撃群の戦力は、中小国1国分に匹敵する。燃料補給なしに長期間移動できる原子力空母を世界中に展開できることが、米国の力の源泉になってきた。

 ただ、点検や修理のため、同時に展開できる空母は3、4隻とされる。対イラン作戦の長期化で、1回の任務は通常の半年程度から1年近くに延びている。このペースだと、西太平洋に空母が何か月も不在になると指摘される。

 さらに米軍は、中東での軍事作戦で巡航ミサイルのトマホークを備蓄の半分程度使用したほか、パトリオットなどの迎撃ミサイルの8割を消費したとされる。

 このままでは中東での継戦能力だけでなく、他地域での有事対応に悪影響が出るのは必至だ。

 米軍では、陸軍長官と海軍長官が辞任し、高官の更迭も続いている。指揮系統の混乱を現場に影響させないようにしてほしい。

 一方、中国は5月に西太平洋に空母を派遣し、艦載機の発着訓練を行った。北朝鮮は、ロシアのウクライナ侵略を支援する見返りに弾道ミサイル技術の供与を受けたとされ、最近も日本周辺への発射を繰り返している。

 トランプ米大統領は今月下旬に中国の習近平国家主席と会談する。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との会談にも意欲を示している。だが、アジアで米軍の存在感が低下した状態では、中朝から足元を見られるのではないか。

 米国は、中東での戦闘終結を急がねばならない。日本や韓国、フィリピンなど同盟国との連携を強化し、不安を払拭(ふっしょく)してほしい。