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公衆トイレで個室に並ぶ行為は、ともすれば判断力や忍耐力が試される切羽詰まった状況にもなりかねないシリアスな要素もある場面だが、その渦中で起きた珍事件を紹介する。
都内で営業職として勤務している古川大地さん(仮名・34歳)は、その日、朝の通勤ラッシュの最中に腹痛に見舞われていた。

◆限界寸前で乱入された

「前夜に食べた激辛の麻婆豆腐のせいだったのか、満員電車に揺られているうちにだんだんとお腹の痛みが強くなっていて、このままだとヤバいという状況でした。それで、乗り換え駅に着いた時に駅の公衆トイレへと駆け込んだんです」

だが、男子トイレに唯一ある個室は使用中だった……。

「改札を出て駅ビルのトイレを探すという選択肢もあったんですが、その駅ビルを利用したことがなく、探すよりも確実性が高いと判断して待つことにしました。ただ、だんだんとお腹の痛みが強くなっていて、ドアが開くのを待ち侘びている状態でした」

焦りを感じながら待ち続けていると、ついにその時が訪れた。

「個室から水が流れる音と鍵が外れる音がして、ゆっくりとドアが開きました。出てきた男性と入れ替わるように、一歩中へ足を踏み入れようとした時でした。背後から『すみません~っ!!』という声が聞こえて振り返ると、スーツ姿の中年男性が弾丸のようなスピードでやってきて、自分の横をすり抜け、個室の中に飛び込んで行ったんです」

◆せめぎ合いの果てに、譲ることに

あまりの出来事に一瞬あっけにとられてしまったが、古川さんにとっても尊厳の危機ともなりかねない状況である。とっさに閉まりかけるドアの隙間に足を挟み、「並んでましたよ!」と叫んだ。

「そうしたら、ドアの向こうから『すみません! 本当に申し訳ありません! もう限界だったんです! どうかお許しください!」と凄まじい勢いの謝罪が聞こえてきました。さらに『このあと、今期の事業部の予算達成を左右する重要な商談があるんです!  ここで粗相をして遅れてしまったら、商談がダメになりかねないんです……。どうか、先に使わせていただけませんか……』と必死な声で言うんです」

古川さん自身も営業職。「絶対に外せない商談を控えている」という切実な状況は刺さるものがあったという。

「それに、自分も緊迫感がある腹状況でしたが、フルダッシュで個室に飛び込んできた様子を見るに、明らかに自分よりもやばそうな状況でした。今ここで無理に引きずり出せば、大惨事が起きてお互いにトラウマになりかねない。それで、『……分かりました、お先にどうぞ』と言って、ドアに挟んでいた足を引っ込めることにしました」