春のお彼岸に家の駐車場に迷い込んだレース鳩。85歳の父は、8年前に亡くなった母と重ねているようで
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迷い込んできた鳩
ある日、私が帰宅すると、85歳の父が「実は鳩が……」と深刻な面持ちで切り出してきました。鳩が関係するいったいどんな事件があったのか聞いてみたら、「ここにいるんよ」とのこと。
話によれば、わが家の駐車場の隅に黒っぽい生き物を見つけた中2の姪が、「じじ、なんかおるよ!」と父に報告。あらためて2人で見てみると、それが鳩だったらしいのです。
首をすくめ、うずくまったまま動かなくなっていたので、「近所の野良猫やカラスにいじめられてはいけない」と案じた父が、段ボール箱に入れ、家まで連れて帰ってきたと言います。水や米を与えると、少ししっかりしてきたようで、私が鳩と対面した時点では《ちょっと元気がない》程度まで回復していました。
明るいところで箱から出してみると、足環が。「これはレース鳩やね」と私が言うと、姪が「レース鳩っち、何?」とたずねてくる。なるほど、伝書鳩もレース鳩も、今時の子には未知のことなのだな、と時代の変化を感じました。
足環のついた鳩が迷い込んだ際の対応を調べてみれば、日本鳩レース協会のホームページに、「記号や番号を確認したうえで協会まで連絡を」といった記載が。そこでさっそく電話してみると、はたして連絡がついた飼い主の方は「それはお世話になりました。自分で帰ってくると思いますので、元気になったら飛ばしてください」とのこと。
そんな経験を、通っている足爪補正士の方に話すと、なんと彼も子どもの頃に同じような体験をしたとおっしゃる。それは日中平和友好条約が結ばれた1978年。彼のお父様が仕事で外航船に乗っていた時に、鳩が船に迷い込んできたといいます。
足環で中国の鳩とわかったので、大使館に届けたところ、お礼にタペストリーをいただいたそうです。時代や背景は異なれど、鳩についての思い出を語り合える人が身近にいるなんて考えもしませんでした。
その後、徐々に元気を取り戻していった、わが家の鳩。世話をしている間に情がわいた父と姪は、回復した鳩と別れがたい様子。特に父は、鳩がやってきたのが春のお彼岸だったからか、8年前に亡くなった母と重ねているように見えました。
17日の滞在ののちに鳩は元気に飛び立ち、飼い主の方から無事に帰宅したとの連絡が。「いつかまたレースの途中で、うちに顔を出すことがあるかもしれんから、鳩小屋はそのままにしちょこう」と言う父。そんな日が来ることを、私も信じて待ちたいと思います。
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