「レンタル家族」から(C)KOHSAKAPro

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 映画「レンタル家族」が単館公開から全国61館に広がる異例のヒットとなり、似た流れで社会現象となった「カメラを止めるな!」「侍タイムスリッパー」に連なる注目作となっている。制作費400万円のインディーズ作品による下克上。監督を務めた上坂龍之介氏(31)は短編すら撮ったことのない“映画素人”だったが、実際の家族に導かれるように家族のヒューマンドラマを形にした。完成までの経緯や反響を受けての心境を聞いた。

 「カメ止め」「侍タイ」に続き、今年は「レンタル家族」が自主映画の枠を超えた注目を集めている。昨年12月に新宿K’s cinemaの1週間限定上映が全日満員となり、今年7月31日に同館で本公開されるとオンラインチケットが22日間連続完売。拡大公開が決まり、現在は全国61館まで熱気を広げている。

 反響を受け、上坂監督は「短編映画も撮ったことがなかったので、まさか1本目でこんなにたくさんの劇場さんで上映していただいて、たくさんの方に見ていただけているのは、ただただありがたいです」と破顔した。

 兵庫県出身。大学で上京し、映画学科に通ったが「ほとんど行っていなくて、大学で学んだことは何もないです」と苦笑する。卒業後、テレビ制作会社に入り、格闘技番組のADを担当。海外留学をした直後に現在の妻の妊娠が分かり、帰国して映像制作会社を作った。23歳だった。

 企業の紹介映像やYouTube動画などを手がけ「本当に自転車操業。目の前のことに必死で、映画を撮る夢すら忘れていました。そんな中で父方の祖父が亡くなったんです」と回想。すでに28歳になっていた。

 亡くなった祖父と対面し、「自分でもびっくりするくらい涙が出てきた」という。映画監督の夢を追って上京したこと、その夢を祖父が応援してくれていたこと、作品を見せられなかったこと…。後悔を原動力に、10年前から構想していた「レンタル家族」の制作は動きだした。

 自分の会社が捻出できるギリギリの金額から逆算し、制作費は400万円。撮影期間は10日間しかなかった。2024年3月にクランクイン。普段から案件をともにするメンバーらでチームを作り、「ほぼみんな初めての映画。業界の当たり前が当たり前じゃなかったので、普段の仕事の延長で作れたのがよかったと思います」と、映画界の常識やあるべき論など知らない“映画素人”による挑戦だった。

 レンタル家族サービスを通して、孤独を抱えた登場人物たちのつながりを描くヒューマンドラマ。2025年5月の「中之島映画祭」で一般投票によるグランプリを受賞し、関係者を通じて“聖地”K’s cinemaでの上映が決まったことでシンデレラストーリーは幕を開けた。

 同館での昨年12月の限定上映、今年7月の本公開前には、チラシ配りで地道にPR。3カ月前から朝昼晩と配り続け、総枚数は1万枚に迫る。自主映画伝統の泥臭い活動中には「カメ止め」の上田慎一郎監督と遭遇。上田監督も「中之島映画祭」のグランプリ受賞者で、縁がつながった。拡大公開が決まった際にも相談し、個人のXアカウント開設を勧められるなど助言を受けている。

 制作費に諸経費が重なり「1000万くらいかかっている状態。300万は回収できそうですが、あと700万くらいはどうにかしないと」と必死さが伝わる。

 「この作品が少しでも多くの方に届くこと以上に幸せなことはないです。これからはプロの映画監督として、自分がやりたいと思う作品と世の中から必要だと思ってもらえる作品を撮って発表していきたい。大きなところでチャレンジして、お世話になった人たちに恩返ししたいです」。青年監督の口調は熱かった。

 ◆上坂龍之介(こうさか・りゅうのすけ)1995年1月30日生まれ、兵庫県出身。大学で上京し、卒業後は1年間、制作会社でバラエティー番組やスポーツ中継のADを担当。その後、映像制作会社を立ち上げた。初監督作「レンタル家族」は、大学時代に構想していた企画。中之島映画祭グランプリやハンブルグ日本映画祭ノミネートなど国内外の映画祭で評価を受け、現在は全国で拡大上映中。