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内閣府の『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』によると、70~74歳女性の約4割が収入を伴う仕事をしており、シニア世代が定年後も働き続けるライフスタイルとして定着しています。親の生活を心配して「仕送り」を提案する子の提案を笑顔で却下した、年金月8万円・貯金800万円の71歳女性の事例をもとに、現代のシニア世代の就労実態と老後のライフプランについて解説します。

年金月8万円の71歳母、42歳娘の「仕送り」を却下したワケ

ユカさん(仮名・42歳)は、実家で一人暮らしをする母・キョウコさん(仮名・71歳)の生活をずっと心配していました。

キョウコさんは10年前に夫を亡くしています。今まで専業主婦や短時間のパートをしてきたため、受給している年金は月約8万円のみ。ローン完済済みの持ち家に住んでいるとはいえ、毎月8万円だけで生活していくのは困難なはずです。

「お母さん、毎月赤字でしょう? 貯金だって800万円くらいって言ってたし、足りないなら私から毎月少し仕送りしようか?」

帰省した際、ユカさんがそう切り出すと、キョウコさんは明るく笑って答えました。

「仕送りは大丈夫よ。私、今も働いているから」

キョウコさんが近所のスーパーでパートをしていることは知っていました。しかし、すでに70歳を超えているため、シフトにもあまり入っておらず、お小遣い程度の収入だろうとユカさんは思っていたのです。

「だいたい月に10万円くらいはいただいてるわ」

キョウコさんは週に5日、早朝からお昼過ぎまでのシフトに入っており、勤務先のスーパーが人手不足なこともあって、安定した収入を得ていたのです。年金と合わせれば月の収入は18万円ほどになり、一人暮らしの生活費としては賄える額でした。

内閣府の『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』によると、キョウコさんと同じ70~74歳の女性において、現在「収入を伴う仕事をしている」と答えた人の割合は38.1%にのぼります。さらに、仕事をしているシニア女性のうち、仕事の種類をみると「パート・アルバイト」が48.1%と約半数を占めています。

70代を超えてパートをしながら生活を送るキョウコさんのような働き方は、現代のシニア世代にとってひとつのライフスタイルであることがデータからも読み取れます。

貯金800万円でも働き続ける…仕事がもたらす「お金以上の価値」

ユカさんは「体力的にも無理せず、貯金を少しずつ切り崩せばいいのでは」と提案しましたが、キョウコさんには働き続ける理由がありました。

「もちろん、お金を稼ぐためというのもあるわよ。でも、辞めたら生きがいがなくなっちゃう気がして。それが一番怖いの」

キョウコさんの1日は、仕事を中心に回っています。朝早く起きてスーパーに向かい、お昼過ぎに仕事が終わると、同世代のパート仲間と喫茶店に寄るのが日課です。

「仕事があるから毎朝ちゃんと化粧をして家を出るのよ。休みの日に家でゆっくりするのが気持ちいいのも、普段しっかり働いているからだと思ってるわ」

とはいえ、60代のころのように無理をしているわけではありません。店長と相談し、重い荷物を運ぶ作業は若いスタッフに任せるなど、自分の体力に合った働き方を工夫しています。

ユカさんは「少ない年金とわずかな貯金に怯えながら暮らしている」と勝手に思い込んでいました。しかし、キョウコさんは働くことで貯金の減少を抑えつつ、社会とのつながりや生活のメリハリという「お金以上の価値」を手に入れていたのです。

内閣府の『人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)』によると、日常的に「気軽に話せる相手がいない」と答えた人のうち、孤独感を「しばしばある・常にある」と答えた深刻な孤独のリスクを抱える人の割合は25.0%にのぼるのに対し、気軽に話せる相手が「いる」人ではわずか2.5%に留まっています。

職場での交流や健康維持を楽しみながら元気に働き続けるキョウコさんの姿は、仕送りを心配していた娘のユカさんにとっても、実家の貯金額や年金額という数字以上に、キョウコさんのこれからの人生を支えているのでしょう。

[参考資料]
・内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』
・内閣府『人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)』