コメ農家は「本当に追い詰められています」 “コメ離れ”“離農者”が加速して日本人が“外国産コシヒカリ”をほおばる未来…「消費者が5キロ3500円のコメを買えない日本の経済状況が最大の元凶」
前編【相次ぐ「概算金ショック」で“コメ大暴落”危機…「離農が加速して、生産量も激減しかねない」新潟のコメ農家が嘆く「国の本音は“足りない分はカリフォルニア米で補う”ではないか」】からの続き──。高知県や新潟県で「コメの概算金」が発表され、昨年に比べて約4割減という急落に関係者からは悲鳴が上がっている。あまりにも高値を付けた昨年のコメは在庫として積み上がっており、これに新米が加われば“大暴落”の可能性も否定できない。(前後編の後編)
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その新潟県でコメ農家を営む男性は「ここまで追い詰められると、国産の牛肉やミカンのように『ブランドと安全で売る』やり方も参考になるかもしれません」と言う。

「今は新たな付加価値を創造する時代にある、ということです。その前提として、私たち“零細農家”は、販売をあまりにも農協に委ねすぎたのではないか、という反省が必要だと思います。農協は頑張っているとは思いますが、やはり『自分で儲ける』というビジネスセンスも必要な時代になってきました。たとえ水田を大規模化したとしても、コメを作りたい人がゼロになれば意味がありません。農業の自動化を指す“スマート農業”も多額の投資と維持費が必要で、限られた農事法人以外は不可能です。本当に日本のコメ農家を持続可能なものにするには、総生産量の約3割を生産する零細農家を、この先いかに活かしていくかが農政として大きな課題になっているはずです。だからこその、今回の備蓄米の買い戻しだろうし、消費税減税分の補助金の導入だと想像していますが、国民の99%にあたる非農家である人たちの理解を得ることは、そうはたやすいものではないでしょう。その意味で、これからの農家は、単に概算金や補助金に一喜一憂するのではなく、非農家の人たちにいかに農業についてわかってもらうか、そしてその先で相互に納得できる価格設定について検討していくべきかが大切だと思っています」
農業“移民”解禁の未来予想
コメ農家の男性は「具体的には、ブランド力や安心安全もあるだろうし、食育や農業体験と組み合わせることで新しい価値観を生み出していくことも、あるいはできるかもしれません」と言う。
そもそも根本的な問題として、日本人はコメを食べなくなっている。コメ農家が“淘汰”され、生産量も減少していく可能性がある。
「中長期的に見ると生産量の減少は需要の減少を上回り、コメの値段は上がっていくと思います。消費者の多くは価格の上昇を嫌うので、さらにコメ離れが進む悪循環が起きるはずです。小麦粉を主食とする日本人が増えていくのではないでしょうか。また小売の現場では高額で安全、美味しい国産米という高級路線と、外国産米に代表される安いお米という二極化が進むのだと思います。日本人の好きな短粒種を栽培する国は少ないので、アメリカなどの国にコシヒカリの栽培を依頼し、それを輸入して高額の関税を払っても採算が取れる時代が来るかもしれません。また日本国内で水田の耕作放棄地が続出した際には、水田機能を維持するために外資の誘致や、農業従事者の“移民”解禁も議論される可能性があると想像しています」(同・男性)
何よりも究極的な問題は「高いコメが買えない」ほど貧しくなっている日本人の経済状況だという。
日本人の収入が大問題
「そう思うことが当たり前なのはなぜか、最終的には私にも分からないのですが、『とにかくコメは安くないと困る』と、かなりの日本人が考えているようです。まあ、そうした気持ちは理解できなくもないのですが、安さだけを最優先に考える消費者を対象にした継続的な営農はできないと感じるようになりました」(同・男性)
コメ農家の男性は「美味しさと安全性を反映した販売価格を理解してくれる消費者に向けて売るという経営方針です」と言う。
「確かに『コメは高くて買えない。安い麺類にシフトしないと生きていけない』という方々も少なくないのは承知しています。農家を含め、日本国民の多くが収入の伸び悩みに苦しんでいます。今日という一日を生きるだけで精一杯で、日本のコメ生産について考える余裕など、生まれるわけがありません。なので政府にはぜひ、日本人全体の収入が上がる政策を心から期待しています。5キロ3000円台のコメを、多くの日本人が普通に買える時代になってほしいですし、それこそが、“豊かな日本”のひとつの形だと思うのです」
日本のコメ農業を再生するために必要な改革は、まだまだ山のようにあるという。そもそもコメの消費量が減っているのだから、少量販売を充実させる必要がある。昭和の時代は誰もが米穀店で「5合買い」が可能だった。
“コメ体験”の必要性
また価格を巡って「農家vs消費者」の対立関係が強まっているが、この“無意味な対立”を解消する必要がある。
その原因には、都会に住む多くの人が農家の次男、三男で構成されていたかつての時代とは異なり、今は農業に縁遠くなった国民の99%の非農家が消費者の多勢を占めていることも挙げられるだろう。
だとすれば、コメの生産現場を観光資源として見直し、田植え体験、稲刈り体験などの農体験、自然体験の拡充、農家民宿の充実も考えられる。意外にも、繊細で緻密な営農をする日本農家に対し、インバウンドの需要があるかもしれない。
前編【相次ぐ「概算金ショック」で“コメ大暴落”危機…「離農が加速して、生産量も激減しかねない」新潟のコメ農家が嘆く「国の本音は“足りない分はカリフォルニア米で補う”ではないか」】では、提示された概算金があまりに安いため、全国で離農者が続出する危機的な状況について詳細に報じている──。
デイリー新潮編集部
