「眠れない。ぎりぎりのラインでやっている」双子を育てる母親…産後ケア「利用したくてもできない」支援届かぬ背景に人手不足と“4か月の壁”
母子の心身のケアや育児サポートを支援する「産後ケア事業」。しかし、特に双子や三つ子の母親から「利用したくてもなかなか利用できない」という悲鳴の声も。産後ケア利用に立ちはだかる“高い壁”とは…。実情を取材しました。
【写真を見る】双子の母親が“念願”の産後ケア利用…その様子は
双子の女の子を育てる女性 睡眠時間「2時間」の時期も…
滋賀県大津市に住む田中さん(仮名 37)。去年12月に双子の女の子を出産しました。最近、表情を出すようになった2人の姿に目を細めます。
(田中さん 仮名)「一挙一動がいとおしいし、かわいい。幸せも2倍以上」
ただ、同時に2人を産み育てることは、負担も大きくなります。
順番に離乳食を食べさせ、1人を抱っこしながらもう1人をあやします。
夫の協力もありますが、産後2か月くらいまでは授乳に時間がかかり、一日2時間ほどしか寝られなかったといいます。
(田中さん)「1人が寝ると、1人が起きるリズムがある。2人が同時に寝るというタイミングはほとんどない。産後4か月くらいに体調もしんどくなってきて、産後ケアがあることを知ったので、利用したいと検討しました」
産後ケアを利用したいのに…直面した「2つの壁」
「産後ケア事業」は、市町村からの委託を受け、助産院や病院が行っています。
産後1年以内の母子が対象で、助産師を中心としたスタッフが赤ちゃんの面倒をみている間に母親は育児相談をしたり睡眠をとったりすることができます。
田中さんは市の保健師に受け入れ可能な施設を探してもらいましたが、戻ってきた回答に驚いたと話します。
(田中さん)「全体的に探してもらって、ここもダメ、ここもダメと。まず双子なので人手が足りなくて受け入れられないというのが一つ。4か月を過ぎているので受け入れられないという理由がもう一つ。なかなか実際は利用が難しいんだなと」
児童虐待のニュースに「気持ちは分かる」
受け入れが可能だと紹介されたのは、自宅から車を使って1時間以上かかるなど休息したいという目的にはほど遠い2つの施設だけ。 結局利用を諦めました。
(田中さん)「児童虐待のニュース見ても『人間の所業とは思えない』と思っていたが気持ちは分かる、やらないけど。眠れないというのが一番ですかね。通常の精神状態でない。ぎりぎりのラインで何とかやっている感じ」
こうした問題に直面した人は、ほかにもいます。
「双子三つ子は『受け入れできない』と…」
神戸市で双子を育てる上山由希奈さんは、市の予約アプリで産後ケア施設を探しましたが、利用できるところがなかなか見つからなかったといいます。
(上山由希奈さん)「『双子三つ子は受け入れできません』と書いてある所があって。双子は安全面・設備や従業員の数から受け入れができないと直接お断りされたところもありました」
双子を理由に断られ、さらに受け入れ期間の短さも壁となりました。
(上山由希奈さん)「(産後)3か月までしか使えない、4か月までしか使えないとあって。(受け入れ期間が)短くなってしまっているのは本当に不安が募る」
なぜこうしたことが起こるのか。 産後ケア事業を行う施設を取材すると…
「産後4か月を受け入れの目安に」「十分なスタッフを雇える委託料ない」
(兵庫県内の助産院)「十分なスタッフを雇える委託料や加算がない」
(滋賀県内の病院)「寝返りをうつようになると転落のおそれがあり、産後4か月を受け入れの目安にしている」
育児の環境づくりに詳しい専門家は、必要としている人に支援が届いていないと指摘します。
(神戸女子大看護学(母性看護学) 服部律子教授)「多胎妊娠というのは医学的にみてもハイリスク妊産婦になるので、なかなか身体が回復していかない。4か月で母親が楽になったと言われることはほとんどない。育児のニーズに見合った支援が必要だと思います。多胎児は1年でも足りないかもしれない」
双子や三つ子を受け入れる施設 設立者は双子の母親で自身も双子
今年6月、滋賀県草津市に誕生した産後ケア施設「そらのね」では、 双子や三つ子を積極的に受け入れています。
その際はスタッフの増員や、受け入れ人数を制限して対応します。
設立者の一人は、看護師の伊藤芽那倖さん。伊藤さんは双子の母親で、自らも双子です。
(産後ケア施設「そらのね」 伊藤芽那倖さん)「双子の母になれたからこそ、これから困っている人に対して手助けしたいという思いで(そらのねを開設した)」
双子を育てる田中さん 「そらのね」で初の産後ケア利用
8月、大津市で双子の女の子を育てる田中さんが、「そらのね」にやってきました。
田中さんが産後ケアを利用するのはこれが初めてです。
(伊藤さん)「だいたい今ミルクは何時間おきぐらいですか?」
(田中さん)「4時間から5時間おきぐらい」
伊藤さんが、子どもたちそれぞれの特徴や食事の状況を丁寧に聞き取ります。
(伊藤さん)「ごはんの後はミルクを足していますか」
(田中さん)「足しています。だいたい150mLくらいですね」
別室で眠り、ゆっくり食事 育児話も
田中さんは双子と離れて個室に移動。子どもたちは沐浴したり、ミルクを飲んだりして穏やかに過ごします。
別室でその様子を確認。
(田中さん)「かわいい。すごく安心しました」
心置きなく眠りにつきます。
休息した後は、昼ごはん。伊藤さんらと双子の育児について語り合いながらゆっくりと味わいます。
(田中さん)「ゆっくり食べられるのと、大人と会話しながら食べられることがうれしい」
「ほかの人に甘えてもいいんだと。また頑張ろう」
産後ケアの利用を終えて…
(田中さん)「本当に利用していいのかなとか考えていましたが、ほかの人に甘えてもいいんだと。また一緒に頑張ろうねという気持ちです」
伊藤さんは、産後1年を迎えるまでその時々の悩みに寄り添い、誰もが安らげる居場所にしていきたいと話します。
(伊藤芽那倖さん)「双子三つ子を産んでよかったと思いながら子育てしてもらえるように、これからも居場所として守り続けていきたいと思います」
(2026年8月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)
