「夫の車にGPS付けて」友人に頼まれ“探偵ごっこ”も…すぐバレて事情聴取、安易な浮気調査の協力に潜む罠
「夫が不倫しているかもしれない。どこに行っているか知りたい」。友人から頼まれて、夫の車にGPS機器を取り付けた--。弁護士ドットコムに、こんな相談が寄せられている。
相談者は機器を仕掛けたものの、うまく作動しなかったばかりか、“探偵ごっこ”があまりに稚拙だったのか、すぐに発覚した。相談者と依頼した友人はそろって事情聴取を受けたという。
配偶者の不貞を疑ったとき、行動を把握したいという気持ちは理解できる。しかし、頼まれて実際に手を動かしたのは相談者本人だ。
弁護士ドットコムには、配偶者の不倫の調査を友人に手伝ってもらったという相談が他にも寄せられている。
こうした行為には法的責任を問われる可能性があり、刑事事件にくわしい西山晴基弁護士は「手を出すべきではない」と警鐘を鳴らす。
●各地の条例違反に該当する可能性も
──夫の不貞を疑った友人に頼まれて、他人の車に無断でGPS機器を取り付けた場合、どのような刑事責任が考えられますか。
本人の承諾を得ずに車などにGPS機器を取り付け、その位置情報を取得する行為は、ストーカー規制法や各都道府県の迷惑防止条例によって規制されています。
このうち、ストーカー規制法は、恋愛感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足させる目的で行われる行為を規制しています。そのため、単に浮気、不貞行為の事実を調査するための行為であれば、原則として同法の処罰対象にはならないと考えられます。
一方、迷惑防止条例については、こうした恋愛感情などを目的とすることが要件とされていません。そのため、浮気調査を目的としてGPS機器を取り付けた場合であっても、条例違反として処罰の対象となる可能性があります。
●浮気調査でGPSを車に…探偵業者の責任を認めた判例も
──民事上の請求を受ける可能性はありますか。また、こうした問題に首を突っ込むことは避けたほうがよいでしょうか。
無断でGPS機器を取り付けて他人の位置情報を把握する行為は、プライバシー侵害として、不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。
不貞の有無を確認するという調査目的自体に一定の正当性が認められる場合でも、GPSによる調査方法まで当然に許されるわけではありません。調査の方法や期間、取得した情報の範囲などによっては、刑事上・民事上の責任が認められる可能性があります。
実際、令和6年3月22日の旭川地裁判決では、浮気調査を探偵に依頼し、GPSで位置情報や移動履歴を取得したケースについて、調査目的には正当性があるとしつつも、GPSを車両に設置して継続的に情報を取得する方法は「調査方法として相当性を欠く」として、民事上の責任を認めています。
友人から頼まれた場合でも、「頼まれただけ」「浮気調査のためだった」という事情だけで責任を免れるとは限りません。夫婦間の問題だからと安易に協力せず、必要があれば、事前に専門家へ相談することが重要です。
【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。シニアライフカウンセラーの資格も有する。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/

