【東武鉄道事故】線路内で除草中の作業員4人が死亡 保線作業の現場では今でも主流の「手旗による合図」という古典的手法に改善の余地
日光東照宮の陽明門の柱を彷彿とさせる高貴な白をまとった流線型の車体には真っ赤な鮮血が飛び散り、事故の凄惨さを物語っていた──。
【写真】事故を起こした特急と同じ型の車両。他、作業員4人が死亡した新鹿沼駅の事故直後の様子なども
「特急列車に作業員が巻き込まれた」
こんな火急の知らせが消防に飛び込んだのは、8月20日の午前11時頃のこと。
「東京・浅草と栃木・日光や鬼怒川温泉を結ぶ特急列車『スペーシアX』が、栃木県の新鹿沼駅を通過する際に線路内で除草作業中だった作業員と接触。逃げ場のないホーム下の線路で、日光方面から走行してきた特急列車にひかれた50〜60代の4人が帰らぬ人となりました。事故当時、列車の運転士には線路への進入を許可する合図が送られていたそうです」(警察関係者)
2023年に運行を開始した「スペーシアX」は、東武鉄道が独自に開発した車両が導入され、運転席の後方には「走るスイートルーム」と称されるロイヤルシートが設置されるなど、観光客向けに贅を尽くした仕様が人気を博していた。そんな豪華列車がなぜ事故を引き起こしたのか。事故後に記者会見した東武鉄道の説明によると、現場には3人の見張り役がいたという。
「現場から80mほど手前には、作業員の待避を確認する『列車見張り員』が配置され、さらに300mほど手前には列車の接近を確認する『中継見張り員』が配置されていました。ただ、当日はなんらかの理由でこの見張り員同士の連携がとれていなかったそうです」(東武鉄道関係者)
前出の警察関係者は、「事故原因は重大なヒューマンエラーだ」と指摘した上で次のように述べる。
「当初は、列車の接近や待避の完了を知らせる見張り員の見落としが原因だと思われていましたが、現場で複数のミスが重なった可能性も指摘されています。見張り員同士が意思疎通できない状況だった原因の究明もこれから。全容解明には時間がかかりそうです」
手旗による合図という古典的な体制だが、保線作業の現場ではいまも主流だそうだ。実際、この日も事故前に3本の特急列車が通過していた。しかし、線路内での死亡事故は近年も相次いでいる。
「1999年に東京・品川のJR貨物線で信号ケーブルの交換中だった作業員5名が列車にはねられ死亡した事故から20年以上が経過していますが、線路内の作業中の死亡事故はこの間も全国で10件以上発生しています。
やはり、いまだに旗で合図を送り合う手法そのものに改善の余地があるのではないか。人間の判断に頼るだけでなく、早期にIT機器を導入した安全策の構築が求められています」(鉄道会社OB)
原因究明とともに安全対策のアップデートが急務だ。
※女性セブン2026年9月10日号
