女性は見落としがち?コレステロール上昇を防ぐ“3つのステージ”
女性特有のホルモンバランスの変化が、家族性高コレステロール血症のリスクにどのような影響を与えるかについて解説します。閉経後のエストロゲン減少によるリスクの高まりや、妊娠中の服薬制限、ピル・ホルモン補充療法との関係など、ライフステージごとに意識しておきたいポイントをまとめています。受診のタイミングや相談先の目安についてもご確認ください。
監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
家族性高コレステロール血症と女性:ホルモン・妊娠・閉経との関係
このセクションでは、家族性高コレステロール血症が女性に与える影響と、女性特有のリスクについて詳しく説明します。女性はホルモンの変化がコレステロール値に大きく影響するため、ライフステージに応じた注意が必要です。
閉経がもたらすリスクの変化
女性の場合、閉経前はエストロゲン(女性ホルモン)がLDLコレステロールの上昇を抑える働きをするとされています。このため、閉経前の女性は同年代の男性と比べて心血管疾患のリスクが低い傾向にあります。しかし、閉経を迎えてエストロゲンの分泌が大幅に減少すると、LDLコレステロールが上昇しやすくなり、心血管疾患のリスクが高まります。
家族性高コレステロール血症の女性の場合、閉経前でも遺伝的にLDLコレステロールが高い状態にあるため、エストロゲンの保護効果が一定程度あったとしても、高LDLコレステロールによる動脈硬化のリスクは依然として存在します。そして閉経後にはエストロゲンの保護が失われることで、心血管リスクがさらに高まる可能性があります。閉経を機に定期的な血液検査と医師への相談を行うことが大切です。
妊娠中の管理と注意点
妊娠中は、胎児の成長に必要なコレステロールが増加するため、LDLコレステロール値が一時的に上昇することがあります。通常はこの変化は生理的な範囲とされていますが、家族性高コレステロール血症の方では元々の数値が高いため、妊娠中のLDL値がさらに高くなることが懸念されます。
また、妊娠中は服薬に関する制限が生じます。スタチン系薬剤は胎児の発育に影響を与えるおそれがあるため、妊娠中や妊娠の可能性がある時期、および授乳中は安全性の観点から使用できないこと(禁忌)になっています。このため、妊娠を希望する場合は事前に担当医と薬の管理について相談し、計画的に取り組むことが求められます。
妊娠中は食事による脂質管理が中心となりますが、胎児への栄養も考慮したバランスのよい食事が基本です。極端な脂質制限は栄養不足につながる可能性があるため、栄養士や医師のサポートのもとで管理を行うことが望まれます。
ピルや更年期ホルモン療法との関係
経口避妊薬(いわゆる「ピル」)の服用や更年期のホルモン補充療法(HRT)は、コレステロール値に影響を与える場合があります。ピルの種類によってはLDLコレステロールを上昇させる可能性があるため、家族性高コレステロール血症の方が服用を検討する場合は、脂質代謝への影響について担当医に確認することが大切です。
更年期のホルモン補充療法については、エストロゲンが含まれるため、LDLコレステロールを下げる方向に働く可能性があるとされています。しかし、血栓症や乳がんなどに関する影響を心配される方もいらっしゃいますが、現在は定期的な検診と適切なホルモン量の管理によって安全に配慮した治療が行われています。ご自身の状態や治療のメリット・デメリットについて、医師とよく話し合って判断することが大切です。ホルモン療法の適応については婦人科や内科の医師とよく相談し、個別の状況に応じて決めることが求められます。
女性が受診すべき診療科と受診のタイミング
家族性高コレステロール血症が疑われる場合や、すでに診断を受けている女性の方が相談すべき診療科としては、内科・循環器内科・脂質代謝内科などが挙げられます。ライフイベント(妊娠・閉経・ホルモン療法の開始など)ごとに、担当医と治療方針を見直すことが特に重要です。
「健康診断でLDL値が高いと言われた」「母親や祖母が若くして心疾患を患った」「アキレス腱が厚いと指摘されたことがある」といった心当たりがある場合には、早めに医師に相談することが望まれます。女性は閉経前に症状が出にくいこともあり、見落とされやすい傾向があります。定期的な受診と血液検査を習慣化することが、長期的な健康管理において欠かせない取り組みです。
まとめ
家族性高コレステロール血症は、遺伝的な原因によってLDLコレステロールが高い状態が続く疾患です。自覚症状が乏しいため気づかれにくいですが、放置すると動脈硬化が進行し、心血管疾患のリスクが高まる可能性があります。食事や運動による生活習慣の改善とともに、スタチン系薬剤をはじめとした薬物療法が治療の柱となります。女性の場合はホルモンの変化が大きく影響するため、ライフステージに応じた管理が重要です。気になる症状や家族歴がある方は、内科や脂質代謝内科への相談を検討してみてください。
参考文献
日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」
国立循環器病研究センター「家族性高コレステロール血症について」
厚生労働省「79 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
国立循環器病研究センター「脂質異常症」

