真面目に働いているのに、なぜ仕事は減らないのか。資料を完璧に仕上げ、チャットにはすぐ返信し、進捗をこまめに確認する。どれも丁寧で誠実に見えるが、それぞれに問題があるという。日本能率協会マネジメントセンター(編)『なぜか余裕がある人のやらない技術』から、仕事を増やさないための術を紹介する――。(第1回)
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thapana Onphalai

■「完璧な資料」を作らなくていい

資料を開いた瞬間に、「量が膨大で読み切れない」と圧倒された経験はないでしょうか。丁寧に整理されているはずなのに、やたらとページ数が多く、どこから理解すればいいのかがつかめない。そうなると受け手の集中は緩み始め、説明する前から要点を探す姿勢に切り替わってしまいます。資料は、完璧なデータを見せるものではなく、業務を伝達するためのものです。

資料づくりでは、「抜け漏れがないこと」が正しいとされがちです。背景、経緯、データ、補足――あらゆる情報を揃えれば、相手を納得させられるはずだという発想があります。しかし実際には、情報が増えるほど受け手は取捨選択を強いられます。どれが重要でどれが関連が薄いか、受け手が判断しなければならないのです。つまり、資料の完成度を高めようとあらゆる想定を網羅するほど、受け手側に理解の負担がかかります。

たとえば、過去のデータや競合比較、想定リスクまで丁寧に盛り込んだ、新施策の提案資料のケースを考えてみます。どれも必要な情報ですが、選択せずにすべて列挙していくと、結論にたどり着くまでに時間がかかります。受け手は「結局どうしたいのか」をつかめないまま読み進めることになり、途中で集中が切れてしまうことにもつながります。

また、資料を簡潔にまとめたつもりが、「説明不足ではないか」「完成度が低く見えるかもしれない」と不安になり、スライドを追加してしまうこともあります。こうして補足が増えると、資料全体の重心がぼやけていきます。結果として、伝えるべき軸が曖昧になり、どれだけ丁寧に説明しても、聞き手が整理しにくい状態になってしまいます。

■「8割で出す」を意識して

資料の役割や求められる情報は、場面によって変わります。意思決定の場では結論と判断材料が重視され、共有の場では全体像が求められます。また、見る側の立場や目的によっても必要な情報は異なります。

そうなると「誰にとっても完璧な資料作成」自体が現実的に難しくなるため、どの場面にも最適化されない中途半端な構成になりやすいのです。

完璧さを求めるほど時間がかかり、推敲のタイミングを逃してしまいます。時間をかけて細部まで整えた資料でも、状況が変わればすぐに古くなります。最終的な相手に見せる前に、修正期間を確保するためにも、早めの提出が欠かせません。にもかかわらず、「まだ不十分ではないか」という感覚から調整を続けると、提出が遅れ、目的のための修正の機会を失ってしまいます。

見直すべきは完成度ではなく役割です。資料はすべてを説明するものではなく、判断や理解を進めるための道具です。結論と軸を据え、必要な情報だけを載せる。詳細はあとから補足できると割り切り、資料は「8割で出す」という意識に切り替える。そうした不要を削ることで本質が整うのです。

POINT
・「誰にとっても完璧な資料」はつくれない
・資料は軸を意識して8割で前に進める

■「即レス」はやめていい

仕事において、「すぐ返すこと」に固執していると、リズムが崩れていきます。メールを受け取ったらすぐに開いて返す。こうした「即レス」を続けていると細かいやり取りが増え、仕事は軽くなりません。

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即レスする人は「いつでも対応してくれる人」として認識される。その結果、確認や相談が集まりやすくなり、依頼の窓口のような位置になっていく……。(写真はイメージです) - 写真=iStock.com/tadamichi

即レスする人は、一見すると仕事が早く、信頼されるように見えます。しかし実際には、即レスを優先するほど思考は途切れ、仕事の質は下がっていきます。すぐに対応しているはずなのに余裕がなくなるのは、構造によるものです。重要なのは反応の速さではなく、どのタイミングで反応するかです。

通知や依頼には、すぐ応じるのが当然とされています。相手を待たせてはいけない、早く返すほうが評価される。この前提があるため、本来は考えてから返すべき内容でも、整理しないまま反応してしまう。その場では対応できたように見えたとしても、やり取りはそこで終わりません。返信をきっかけに追加の確認や相談が生まれ、仕事が増えていきます。早く返すほど、次の仕事を呼び込んでしまうのです。

資料をつくっている最中にチャットが届いた場面を考えてみます。本来であれば、区切りのよいところまで作業を進めてから確認したほうが流れは保たれます。しかし即レスが習慣になっていると、一旦手を止めて対応に当たるため、そのあと元の作業を再開する際には、どこまで進んでいたかを思い出すところから始めなければなりません。こうした分断が積み重なると、まとまった思考ができなくなります。

■「常に対応する人」となり、仕事が増え続ける

また、判断が必要な相談でも問題が起きます。すぐに答えようとすると、十分に検討しないまま結論を出してしまう。その場は収まっても、あとから認識のずれが見つかり、やり直しや追加のやり取りが発生する。早く返したことで、かえって時間を使う非効率な結果になります。

さらに、この行動は役割にも影響します。即レスする人は、「いつでも対応してくれる人」として認識されます。その結果、確認や相談が集まりやすくなり、依頼の窓口のような位置になっていきます。丁寧に対応しているつもりでも、気づけば自分の仕事よりもやり取りに時間を使っている状態になるのです。

即レスはよいこととされているため、見直すきっかけが生まれません。「常に対応する人」という役割が強化されていき、さらに依頼が集まります。即レスは、構造として仕事を増やし続けます。

見直すべきなのは、「どれだけ早く返すか」ではなく「いつ返すか」です。すぐに対応すべきものか、まとめて返せるものかを切り分ける。作業中であれば区切りを優先し、判断が必要な内容は時間を取って考えることが大切です。

POINT
・即レスが逆に仕事を増やす
・反応のタイミングを選び、仕事の質を守る

■「細かすぎる確認」が仕事を止めている

資料のレイアウト、言い回しまで何度も見直している。メールの文章を打っては消し、違和感がないかまた読み返す。あるいは、人に任せた業務が気になり、細かく状況を確認してしまう。不安をなくすために確認を繰り返していると、判断や次の一手が後回しになっていきます。やりすぎる確認は、仕事を止める行為になります。

日本能率協会マネジメントセンター(編)『なぜか余裕がある人のやらない技術』

確認には大きく2つの種類があります。ひとつは資料やメールなどの「細部の確認」。もうひとつは仕事の進み具合を見る「進捗の確認」です。どちらも欠かせないものですが、重視しすぎると「前に進める」よりも「整える」「確かめる」ことに時間を使う状態に偏っていきます。

たとえば、資料の表現やデータの見せ方を何度も見直し、少しでも完成度を上げようとする細部の確認です。本来は結論や方向性が伝われば十分な段階でも、成果に直結しない細かな表現に気を使い、時間をかけ続けてしまいます。

整えれば整えるほど安心感は得られますが、些細な違和感などでいちいち作業が止まり、仕事が進みません。

進捗の確認でも同じことが起きます。「まだ途中だから」と共有を遅らせると、あとで修正が大きくなります。一方で、途中の段階で何度も状況を確認されると、そのたびに作業は中断され、流れが途切れてしまいます。本来の進捗共有はずれを早めに整えるためのものですが、回数が増えるほど、作業そのものの効率は下がっていきます。

■「丁寧な仕事」の実感がスピードを落としている

過剰な確認は立場を問わず起こります。リーダーが細かく状況を追い続けると、いわゆるマイクロマネジメントになり、作業者の手が止まります。確認は、作業者にとってはミスを防ぐために重要ですが、リーダーに求められるのは全体の方向性や優先順位の判断です。

それにもかかわらず、作業者と同じ粒度で確認を重ねると、本来見るべきポイントがぼやけます。誰がどこまで確認するのかが曖昧になると、確認の重複や抜け漏れも起こりやすくなります。確認の問題は、個人だけでなく、チーム全体の動きにも影響するのです。

過度な確認は「丁寧に仕事をしている」という実感と結びついてしまっています。細かく見ているほど安心でき、やっている実感が得られます。

しかしその安心のために、仕事のスピードを落とし、判断を遅らせているのです。確認はミスを減らすメリットがありますが、やりすぎると全体の進行が滞っていきます。

確認しすぎないために必要なのは、「確認どころ」を絞ることです。方向性が固まった段階で一度共有する。進捗は抱え込まず、過剰に介入せず、節目で合わせる。細かな表現はあとから詰めると割り切り、判断に関わる部分を優先する。すべてを自分の責任で確認しないことが重要です。

POINT
・すべて確認しようとすると仕事が止まる
・見るべきポイントを絞って確認する

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日本能率協会マネジメントセンター(にほんのうりつきょうかいまねじめんとせんたー)
1991年、一般社団法人日本能率協会(JMA)から分社独立。JMAグループの中核企業として、「人材育成支援」「手帳」「出版」の3事業を展開し、組織の持続的成長と個人の能力開発を支援している。出版事業では、マネジメント、リーダーシップ、ビジネススキルなどの実務書を中心に、資格試験対策や学習参考書まで幅広く発行。ビジネスパーソンの成長を支える専門性の高い知見を多様なメディアを通じて発信し続けている。
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(日本能率協会マネジメントセンター)