競争が激化しているフードデリバリー業界

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KDDIは2026年8月19日、子会社が手がけるフードデリバリーサービス「menu」を9月30日で終了すると発表した。終了後、運営会社は解散・清算される予定。26年2月にはフィンランド発の「Wolt(ウォルト)」が日本撤退を表明し、3月にサービスを終えたばかりだ。

コロナ禍で身近になったフードデリバリーだが、いまや生き残ること自体が難しい市場になった。最大手のUber Eats、国内大手の出前館、韓国発祥の米上場企業Coupang(クーパン)傘下のロケットナウ。menuの終了決定によって日本市場は3強時代が鮮明になったが、この争いは泥沼の「消耗戦」の様相を呈している。

撤退・終了相次ぐ壮絶な歴史

撤退の歴史を振り返ると、かなり壮絶だ。

韓国発の「FOODNEKO(フードネコ)」は21年4月にサービスを終了し、ドイツ系の「foodpanda(フードパンダ)」へ統合。そのfoodpandaも、22年1月に日本から撤退した。中国系の「DiDi Food」は同年5月に撤退、国内スタートアップの「Chompy」は23年5月に終了。26年にはWoltが撤退し、さらにmenuまで終了する。

需要がなくなったわけではない。サカーナ・ジャパンが2025年12月17日に発表した調査によると、同年のデリバリー市場規模は8240億円の見込みで、前年比2.0%増。コロナ禍前の19年と比べるとほぼ倍増している。

問題は市場規模ではなく、もうけることが難しい構造にある。

「店と同じ価格」「送料無料」で誰が配達員の報酬を負担するのか

フードデリバリーは加盟店からの手数料や利用者が払う配送料、サービス料などが収入になる一方、料理を運ぶたびに配達員への報酬が発生する。さらに利用者を囲い込むため、広告やクーポンにも費用がかかる。

そこへ猛烈な価格競争を持ち込んだのがロケットナウだ。25年4月に日本で本格展開を始めた当初から、配送料とサービス料を0円に設定。現在は対象店で商品も「お店と同一価格」としている。

他社も黙ってはいられない。Uber Eatsは26年3月、全国約1万8000店で「お店と同一価格」を導入。出前館は同年8月に「お店と同一価格」の対象が約2万5000店に達し、送料無料も組み合わせている。

利用者にとってはうれしい競争だ。だが、「商品は店頭と同一価格、送料はゼロ」でも、当然ながら配達員への報酬がなくなるわけではない。出前館は自社が送料を負担していると明記しているが、顧客を増やすための「損して得取れ」にも限界がある。

出前館は26年8月期の営業損益予想も下方修正

苦しさが数字にはっきり表れているのが出前館だ。25年9月〜26年5月期の売上高は、前年同期比6.2%減となる282億9000万円、営業損益は63億7000万円の赤字。前年同期の30億7500万円から赤字が倍以上に膨らんだ。26年8月期の営業損益予想も79億円の赤字へと下方修正しており、ここ数年にわたり赤字続きとなっている。

対照的にUber Eatsは、日本事業で23〜25年の3年連続黒字を達成したと公表。26年1月には、過去最高の売り上げを記録したという。ただし詳しい数字は明らかにしていない。

なぜ差がついたのか。Uber Eatsは全国に12万の加盟店、10万人の配達パートナーを抱える。注文と配達員が多い地域ほどマッチングしやすくなり、一つの配送網を効率よく回せる。さらに食事だけでなく、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの食料品・日用品の配達にも領域を広げてきた。

一方の出前館は、26年8月期通期連結業績予想について、オーダー数やGMV(流通取引総額)が期初想定より下回る見込みだ。そうした苦境の中、「お店と同一価格」や送料無料などで利用者を呼び戻そうとしている。しかし、オーダーを増やすためにお得感を高めれば、今度は採算が厳しくなる。このジレンマから抜け出せていない。

業界の疲弊→オワコン化の恐れも...最後に立っているのは何社か

そこへ割って入ったロケットナウの強みは、何より親会社の資金力だ。Coupangの25年売上高は約5兆3600億円。目先の損得抜きで、巨額の投資を続けられる体力がある。

フードデリバリーで一定のシェアと配達網を押さえれば、将来的には料理以外の日用品なども素早く届ける全般的な配送サービスの基盤になり得る。そうなれば、コンビニやネットスーパーなどの市場にも参入することができる。現時点では、あくまで可能性の話だが、そこに狙いがあるなら赤字覚悟の巨額投資も納得できるだろう。

今後のフードデリバリー市場は、Uber Eats、出前館ロケットナウの3社が中心となるとみられる。だが、3強で安定するとは限らない。お店と同一価格や送料無料のサービス競争が続けば、資金力の差が各社の生き残りを左右する「消耗戦」となる。そうなれば生き残った企業も疲弊し、サービスの質の維持が難しくなり、利用者離れを引き起こして「オワコン」化していく恐れもある。

8240億円まで膨らんだ市場で起きているのは、もはや参入競争ではなく生存競争だ。死屍累々(ししるいるい)の末に、最後まで立っているのはどの企業なのだろうか。