「パパパ〜ヤッパ〜」大合唱! 高中正義をSNSで再発見 ヨーロッパのZ世代を魅了する50年前の「昭和サウンド」

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ロンドンで開かれた、イギリス初となる日本音楽に特化した大規模野外フェス「City Pop Waves」。大勢の観客が詰めかける中、ヘッドライナーとしてステージに登場し、ひときわ大きな歓声を浴びたのが、日本を代表するギタリスト、高中正義さんだ。

高中さんは70年代に「サディスティック・ミカ・バンド」などでギタリストとして活躍した後、ソロ・アーティストとして独立。1970年代から80年代に日本の音楽シーンで一世を風靡してきた。

そのサウンドが50年あまりの時を経て、今、SNSや動画・音楽配信サービスをきっかけに、海外の若い世代から熱い支持を集めている。世界最大級の音楽配信サービス「Spotify」では、月間リスナーが200万人を超える。

「メロディーが頭から離れない」ファンには10代も多数

19歳、19歳、19歳、24歳、22歳――。この日の会場でも目立ったのは若いファンたちだった。高中さんは昭和28年生まれの73歳。50歳近くも年齢の離れたヨーロッパの若者たちがなぜ今、高中さんのサウンドに熱狂するのか。会場で話を聞くと、20歳前後のファンが次々と高中さんへの思いを語った。

高中さんと同じ赤いスーツを着た16歳の男性は、クロアチアから駆けつけた。

「普通に勉強していたら、YouTube Musicに赤いスーツを着たこの人が出てきて、クリックしたんです。そうしたら突然、僕の人生が変わりました。高中さんが大好きです」

彼らにとって、高中さんの音楽は「昔の日本の音楽」ではない。

19歳の男性は「彼のメロディーが頭から離れない」と話し、24歳の女性は「フレッシュで、聴くとすっきりする。永遠の夏のような、すごく楽しい音楽」と表現する。

ステージでは、演奏だけでなく、高中さんが水を飲んでも、ギターを拭いても大歓声。本来、歌詞のないインストゥルメンタル曲にもかかわらず、観客はメロディーを声にして歌う。手拍子をしたり、体を揺らしたり、踊ったり。最前列では、エアギターをかき鳴らすようなしぐさで全身でリズムに乗る男性の姿もあった。

「BRASILIAN SKIES(ブラジリアン・スカイズ)」が始まると、会場では「パヤッパ〜」というメロディーの大合唱が起きた。

オフィシャルグッズの売り場にも長い行列ができ、高中さんを見るためだけにヨーロッパ各地からファンが集まった。

「懐メロ」は眠れる音楽資産

人気はライブ会場だけにとどまらない。ロンドンのレコード店でも、1970年代から80年代の日本の音楽への関心が高まっている。

日本では「懐かしい音楽」として扱われてきた楽曲が、海外の若者には「新しくて格好いい音楽」として受け止められているのだ。

高中Tシャツを着た男性ファンは、高中さんのサウンドの魅力についてこう話す。

「今の音楽はすごく商業化されていて、みんな売り上げを伸ばそう、お金を稼ごうとしていると思います。そんな中でも彼が活動を続け、ただ音楽を芸術として追求していることが、本当に格好いいと思います」

かつて日本国内を中心に消費されてきた音楽が、SNSによって国境を越えて拡散され、海外公演のチケット、レコード、グッズなど、新たな需要を生み出している。

派手な衣装、南国を思わせるサウンド、サーフボード型のギター――。半世紀前に生まれた独自の世界観そのものが、Z世代には新鮮に映る。

過去のヒット曲は、ただの「懐メロ」ではない。デジタル時代だからこそ再発見され、世界で新たな価値を生み出す“眠れる音楽資産”になり得る。

高中正義さんの海外での再ブレイクは、日本に眠る膨大な音楽資産が、SNSを入り口に世界市場へもう一度飛び出す可能性を示している。
(FNNロンドン支局長 郄島泰明)