少子高齢化の進行に伴い、墓じまいの件数は過去最高を記録。イメージ写真/産経新聞社

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 線香の煙と、草いきれ。この盆、墓前に立って「あと何回ここに来るのだろう」と考えた人もいるはずだ。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、’24年度の改葬件数は17万6105件と過去最多となった。墓じまいへの関心が高まる一方、いざ墓を畳もうとすると、寺との間で思わぬトラブルになるケースもある。その理由に迫った。
◆「離檀料は1000万円」に絶句

 柳沢隆一さん(仮名・54歳)が、北関東にある代々の墓を畳もうと決めたのは去年のこと。母は数年前に亡くなり、父も施設で大往生。空き家になった実家を売ることになり、残るは墓だけだった。

「父の葬式はうちの近くで家族葬に。戒名も葬儀社が紹介してくれたお坊さんに10万円ほどで付けてもらいました」

 しかし寺に電話をかけ、墓じまいを切り出すと事態は急変した。

「『なぜお父様の死をすぐに知らせなかった』と言われて。逆に、そんな必要があるのか分からず『あなたに関係ないでしょう』と言ってしまったんです。そしたら、『お宅は代々の大檀家で、祖父の代までは本堂を直すたびにまとまった額を出してきた。今回の改修でも、他の檀家さんは皆包んでいるのにお宅だけ何もない。護持会費も何年も止まっている。離檀料は1000万円です』と叩きつけるように言われました」

 柳沢さんは、すぐに弁護士に相談した。

「書面もないし、払う義務はないと弁護士には言われました。でも、地元の寺や近所と揉めるのも嫌で、結局、墓じまいは諦めました。そもそも父は施設に入っていて、修繕の寄付を募る手紙が誰もいない実家に届いていたことも後から知りました。そんな事情があるなら、もっと早く一言伝えてほしかったです」

◆遺骨を人質に追加請求。祟りを盾に150万円!

 父の遺骨が“人質”になったケースもある。関口佳世さん(仮名・49歳)はこう語る。

「参る人のいなくなった墓を畳もうと寺を訪ねると、住職は墓じまいの相談より先に父の戒名の話を始めました。戒名には格があって、末尾が『信士』なら標準的で、その上は『居士』、頭に『院』が付くと最上位。『お父さんは信士で、このままでは他のご先祖様が納得しない。院号を付けないと祟られる』と。お布施は150万円だと言われました」

 断ると態度が一変。改葬には納骨時に寺に提出した埋葬許可書か、納骨の事実を証明できる書類が必要だが、それを「出せない」と言うのだ。

「書類がなければ遺骨は動かせない。でも、移す先の樹木葬にはもうカネを払っていて、途方に暮れています。それに、祟られるという言葉が頭から離れないんです。馬鹿らしいと思いつつも、お父さんが浮かばれないんじゃないかとよぎってしまって……」

 二つのケースは、寺側からはどう見えるのか。群馬県前橋市の真言宗豊山派・天明寺の住職、鈴木辨望氏は柳沢さんのケースには「事情がある」と話す。

「離檀料は決まった料金があるわけではありません。多いのは、それまで溜まっていたものが一度に出てくるケース。未納の護持会費や、やってこなかった法事、檀家なのに別のお寺で出した葬式。それを全部足した数字が請求として出るわけです。墓石の撤去費用にも100万円近くかかりますから。大檀家だとその額も莫大になり、1000万という数字もあり得なくはない」

 もっとも、離檀料に法的な支払い義務は原則ない。辨望氏も「最終的には住職との人間関係の問題」という。

◆「その人は坊さんではない」現役住職が“祟り”を一喝

 一方、関口さんのケースに辨望氏は容赦がなかった。

「もし本当に『祟られる』と言っているのなら、その人は坊さんではない。戒名は、生前の仕事や人柄、社会的な貢献度によってお寺側が授与するもの。脅してより上位の戒名のお布施を納めろとは根本から間違っています」