“家族4人でディズニー”が約10万円!?「毎月35万円で節制しても全然投資できない」子育て世帯の資金が溶ける夏休みの落とし穴【FPが助言】
毎月の家計簿は黒字なのに、年末になるとなぜか貯蓄も投資も増えていない――。そんな家庭が見落としがちなのが、帰省やレジャー、誕生日、家電の買い替えなど、年に数回発生する「特別支出」だ。とくに夏休みは、「親を安心させたい」「子どもを楽しませたい」という思いから出費がかさみやすい。簡単には削れないこうした出費をどうコントロールすればいいのか。子どもをめぐる出費に詳しく、文部科学省の委員なども歴任してきたFPの八木陽子さんが、月々の家計簿だけでは見えない「年間家計の盲点」と、その防衛術を解説する。
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【CASE】帰省費12万円+テーマパーク9.5万円…「いつもの節約」が吹き飛ぶ夏休み
「夫婦の手取りは月に計40万円。支出は、家賃13万円、食費と日用品費が9万円、塾・習い事が3万円、水道光熱費が2万5000円、通信費が1万5000円、生命保険料が2万円、夫婦のこづかいが2万円ずつ……。毎月の生活費を35万円に収め、残る5万円とボーナスは投資に回したいと、やりくりしています」

そう語るのは、東京都内の中小企業に勤める陽さん(30代後半、仮名)。会社員の妻と、小学4年生の長男、小学2年生の長女の4人暮らしで、普段は毎月の生活費予算を「35万円」と決めて家計をまわしている。
ところが、その努力がなかなか実らない。月々の生活費に加えて、何かにつけ「必要な出費」が発生してしまうのだ。とくに8月は出費がかさみ、今年もお盆の時点で、通常の生活費とは別に21万円以上を使っていた。
まず、「お友だち一家と一緒に」という子どもたちのリクエストで行った東京ディズニーランドでは、大人2人と子ども2人の1日パスポートに加え、人気アトラクションなどの体験時間を指定できる有料サービス「ディズニー・プレミアアクセス(DPA)」を家族4人分、2種類購入し、それだけで約5万円。加えて、園内での食事や飲み物、ポップコーン、お土産などに4万円以上。合計すると、ディズニーランドだけで9万5000円ほどを使っていた。さらに、夫婦の出身地である関西への帰省費が、新幹線の往復料金とお土産代、現地の外食代で約12万円……。
こうした大きな出費が続き、生活費の管理もわけがわからなくなってしまった。
「赤字を補填するために、新NISA口座で積み立てていた投資信託の一部を売却することになりました。ただ、ディズニーにしても帰省にしても、私たち夫婦にしてみれば“家族を喜ばせるための必要経費”で、簡単になくせるものではありません。今後どうやって管理していけばいいのか……」
【FPが助言】家計のバランスを崩す「年間特別支出」の盲点
「家計管理の相談に乗っていると、『毎月予算内でやりくりできているはずなのに、なぜか貯金が増えない、赤字になる』とおっしゃる方が非常に多いのです」
FPの八木陽子さんは、陽さん夫妻のようなケースは子育て世帯の“典型的なしくじり”だと指摘する。
「原因は明確で、『特別支出』を年間の予算としてあらかじめ計算していないからです。子育て世帯には、毎年のゴールデンウィークや夏休み、年末年始の帰省費やレジャー費、それから七五三、スタジオでの家族写真撮影など、十万単位で『お金が飛んでいくイベント』が年に何度もやってきます。この特別支出をしっかり見積もらず、日々の生活費とい一緒くたにして処理しようとすると、イベントのたびに家計がガタガタになって、日ごろは引き締めている生活費の管理までおろそかになってしまう。そして、運用資金や貯蓄を取り崩す羽目になるのです」
生活費をやりくりするモチベーションを保ち、計画的な資産形成を継続するためにも、八木さんは以下の2つのステップを提言する。
【ステップ①】1月~12月のイベント予算を書き出し「特別支出専用口座」へ隔離
「まずやってほしいのが、1月から12月までに発生するイベントと、そこにかかるおよその金額を書き出すことです。帰省、レジャー、誕生日などの恒例行事のほか、進学や七五三などその年ならではのイベントもあるでしょう。家電の買い替えを予定しているなら、それもピックアップしておきましょう」
これらを合計した金額が、わが家の『年間特別支出』というわけだ。書き出した結果、特別支出が年収に対して多すぎるようなら、例えばレジャーの行き先や回数、内容、移動手段などを再検討し、予算を組みなおす必要があるだろう。
特別支出の予算が決まったら、別口座に確保しておくことも重要だと八木さんはアドバイスする。
「日々の生活費とイベント資金を物理的に分けておくこと。そうすれば、イベントのたびに生活費のやりくりに戸惑うこともなくなります。仮に年間60万円かかるのであれば、毎月5万円ずつをメイン口座から「特別支出専用の普通預金口座や目的別口座」に移しておきましょう。夏休みに帰省や旅行へ行くときは、毎月の生活費口座からではなく、この専用口座から支払うのです」
もっとも、陽さん夫妻の場合、生活費35万円を除いて手元に残るのは月5万円。この全額を特別支出に備えるなら、毎月の投資に回すお金は残らないことになる。
「陽さん夫妻は、毎月5万円を投資できていたのではなく、本来は特別支出に充てるべきお金を、いったん投資に回していたともいえます。結局、赤字を埋めるために投資信託を売却するのであれば、実質的な資産形成にはなりません。投資額を月2万円に減らして残る3万円を特別支出用に積み立てる、ボーナスから特別支出を先取りするなど、無理なく続けられる配分を考える必要があります」
【ステップ②】子どもに“予算のハンドル”を握らせ、散財防止×マネー教育の一石二鳥に
さらに八木さんは、レジャーの出費が際限なく膨らむのを防ぐため、「子どもに予算管理を任せる」というユニークな解決策を提案する。
「夏休みに家族でプールや遊園地へ行く際、あらかじめ『今日の予算は家族全員で1万円ね』と子どもに提示し、予算配分を任せてみるのです」
たとえば、「プールの入場料が3,200円で、駐車場代が500円。残り6,300円。このお金でお昼ご飯、おやつ、晩ご飯をどうやりくりしたらいいと思う?」「じゃあ、帰りに回転寿司を食べたいから、プールサイドの買い食いはやめて、パンと水筒を持っていく!」といったぐあいだ。
小学5・6年生以上であれば、旅行のプランニングや安い交通手段の検索、現地予算の計算などを任せてみるのもいいだろう。
「予算内でおさまるよう子どもに知恵を絞らせると、散財を防げるだけでなく、子どもにとっても『世の中はお金がかかるんだ』『限られたお金でやりくりするって面白い』と体感できるマネー教育になります」
すでに夏休みに散財してしまった夫婦も、投げやりになってはいけない。
「今年は9月19日から23日までが5連休となり、シルバーウィークにもレジャー費が膨らむ可能性があります。まずはクレジットカードや電子マネーの利用明細をチェックし、夏休みの出費をしっかり把握しましょう。その反省を踏まえ、シルバーウィークや年末年始に向けて、『特別支出の仕組み化』をスタートさせてください」
※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。
八木陽子(やぎ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)。キャリアカウンセラー。株式会社イー・カンパニー代表。2001年に独立。全国の小・中・高等学校での金銭教育や、教育費に悩む保護者へのコンサルティングを数多く手がける。著書に『10歳から知っておきたいお金の心得~大切なのは、稼ぎ方・使い方・考え方』など多数。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
