内覧1回で即決! 家賃25万円の東京から脱出した50代夫婦がたどり着いた「520万の中古戸建て」

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首都圏の住宅価格は上がり続け、「家を買う=数千万円の出費」が当たり前になっている。その一方で、千葉、埼玉、茨城、栃木などの東京近郊では500万円台の中古戸建てが販売されている。

千葉県市原市の小湊鉄道沿線の最寄り駅から歩いて10分足らずの住宅地に築50年、520万円の家を買った夫婦がいる。朋行さん(57歳)と妻の壽子さん(54歳)だ。

取材当日、庭で育てたというミニトマトを摘んで、その場で食べさせてもらった。帰り際には摘みたての大葉と、近所の人からもらったキュウリを持たされた。夕方になると、近所の猫がやってくる。一晩泊まって、朝には出ていくそうだ。

なぜこの家を買ったのか。数字の話を聞いていくうちに、持ち家賃貸かという議論の外にある一言が出てきた。

「家って、もらうものだと思ってたんですよ」(朋行さん・以下同)

家賃25万! 東京の残酷な現実

きっかけは、東京の家賃だった。

朋行さんが東京都内のマンションに入居したのは’11年。駅から徒歩圏内の3LDKで、家賃は総額19万5000円ほど。会社の手厚い家賃補助があったため住み始めたが、補助には期限があった。10年間は会社がかなり負担してくれるが、それ以降は個人負担が大きくなる。

「10年経ったら、さすがに会社に頼らないで自分で家を買いなさいよ、ということなんだろう」

補助が手厚いのは、勤務先の本社が地方にあり、賃金水準も地方を基準としていたからだ。首都圏との物価差を住居費で埋める設計になっている。

そして10年後、その補助率は大幅に下がった。しかもその間に東京の不動産価格は上昇を続け、家賃も毎年少しずつ値上げされていた。

「最終的に家賃が25万円まで上がったんです。自分の負担は16万5000円になりました」

自分のものにならない部屋に、毎月16万5000円。

「これはもうやっていけない、と。やってらんないなって」

土地を持つ者と持たざる者の壁

値上げを重ねたマンションのオーナーは、投機目的で複数の部屋を持っていたという。

「たまたま持っていたものが今の不動産バブルの波に乗り資産価値が上がっただけなのに、どんどん家賃を上げてくる。ただのラッキーな人なのに、と思って。戦後の東京では、どさくさに紛れて土地を取得した人も少なからずいると聞く。ずるいよねぇ〜」(壽子さん・以下同)

そんな人たちには何もしなくても地代・家賃が入り続ける。持っていない人は、毎月それを払い続ける。賃貸持ち家かではなく、土地を持つ側にいるか、いないか。その違いは大きいと感じた。

空き家激増「家はもらうもの」

一方、朋行さんの前提はそもそも違った。

「地方は絶対に家が余ると思ってたんで。だから、家はもらえればいいね、ぐらいのつもりでした」(朋行さん・以下同)

10年以上前から、あちこちの空き家情報を眺め続けてきた。

「ぼちぼちタダでもらえるとかないかな、とか見てたんですよ」

実際に無償譲渡の物件を紹介するサイトが存在し、’19年の開設以来、掲載された物件の多くで引き取り手を見つかっているという。

総務省の住宅・土地統計調査(’23年)によれば、全国の空き家は900万戸。空き家率は13.8%でいずれも過去最多・過去最高を記録している。朋行さんの「実感」も同じだ。

「地元に帰ったら、実家の周りが空き家だらけで。こんなに人がいないんだ、と思って」

ただし、0円物件は条件のいいものから消えていく。

「いい物件はサクッと決まっちゃうんですよ。動きがみんな早い」

結局、0円では手に入らなかった。

内覧1回! 520万円で即決の訳

本格的に探し始めたのは3年ほど前。当初は東京に比較的近い地域を見ていたが、値段が合わない。物件サイトがSNSに流してくる情報を追ううち、地域は自然に絞られていった。絶対的な条件は2つ。駅まで徒歩10分から15分以内、東京まで2時間以内。

「とにかく駅からの距離ですよ。絶対それです」

壽子さんが目をつけた候補は千葉県内で築古の9LDK。住むための家ではない。自分の仕事の場として、開業できないかと考えていた。

「無駄に広くて、変わってる物件なんですけど。学校に行きづらい人たちと、あそこでなんかやれたらいいなと思って」(壽子さん)

だが購入希望の順番は3番目。先に内覧した家族が購入を希望し、候補から外れた。

最終的に決まったのは、千葉県市原市の築50年、木造2階建て。土地90平米、建物70平米(うち2階が30平米弱)。住んでいた都内のマンションと同じ床面積だった。550万円で出ていた物件に対し、こちらの希望額は500万円。交渉の末、520万円で決着させた。

動き出してから3ヵ月。内覧は1回きりだった。

「あっちを選んでおけばよかった、っていう振り返りが嫌なんです。中古住宅は多分、縁だと思うんです」(朋行さん

取材・文:田幸和歌子