水原一平受刑者に関するポッドキャストが公開されている(時事通信フォト)

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 ドジャース・大谷翔平(32)の銀行口座から約1700万ドルを盗んだとして、元専属通訳・水原一平受刑者(41)が解雇されたのは2024年3月のこと。事件が発覚する直前、違法賭博への関与について語っていたインタビュー音声が7月28日、米スポーツ専門メディアESPNによって初めて公開された。

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 同インタビューで、自身が手を染めた違法なスポーツ賭博について「違法という認識はまったくなかった。100%合法だった」などと繰り返し主張した水原受刑者。ところがインタビューの内容を紐解いていくと、嘘のオンパレードだった--事件の取材を続けてきたノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする。【前後編の前編。以下、敬称略】

「最初からずっと合法だと思っていた」

 インタビューは2024年3月19日(韓国時間)に電話で約90分間行われ、水原は当時、韓国で行なわれるドジャースの開幕戦に備えてソウルに滞在していた。大谷のスポークスマンも聞くなかでの取材となった。ESPNの記者であるティシャ・トンプソンが行なったこのインタビューがスクープとなって違法賭博事件が発覚したが、その音声や詳細はこれまで公開されていなかった。

 公開されたインタビューは、水原が違法賭博の胴元、マシュー・ボウヤー(違法賭博罪で禁錮1年1日、今年5月半ばに出所)と出会った時の場面から始まっている。

 水原とボウヤーとの出会いは2021年9月、米カリフォルニア州サンディエゴのホテルで開かれたポーカーゲームだった。水原はエンゼルスのチームメイトら複数人とポーカーを始めたが、参加者の1人がボウヤーだった。「私は大谷のファンだ」と話しかけてきたボウヤーがスポーツ賭博を運営していると聞き、水原は早速アカウントを開設した。

 水原は、自身がこれまでにラスベガスで経験したスポーツ賭博やドラフト・キングスなどの大手スポーツ賭博事業者が運営する合法なものと思い込み、まったく疑わなかったと振り返った。

〈最初からずっと合法だと考えていた。数日前に連邦捜査当局が動いていることを知り、(違法性があるとわかって)ショックを受けた〉

 こう語ってはいるが、インタビュアーであるトンプソンは常に水原を疑い、突っ込みを入れている。水原はアカウントを開設した際、〈すでにクレジット(賭け用の残高)が入っていた〉という。合法なスポーツ賭博業者で開設するアカウントには、最初からクレジットはチャージされていない。ところが水原は、そのクレジットを違法なサインだと分からず、賭けを始めたと語った。

〈サッカーやバスケットボールの試合には賭けたが、野球には賭けていない。それは100%自信を持って言える。春季キャンプの時に行われたミーティングで『野球賭博は禁止』と言われているから。だが野球以外のスポーツへの賭けは認められている、それが私の理解〉

 水原が居住し、エンゼルス・ドジャースの拠点ともなっているカリフォルニア州はスポーツ賭博が法律で禁止されている。ボウヤーは以前、私の取材に、水原の最初のクレジットは2万ドル(約320万円)だったことを認めた上で、「カリフォルニア州在住の人間なら、スポーツ賭博の胴元は違法に運営していることを知っているはず。州内の胴元は全員が違法だ。だから水原が違法だと知らなかったというのは考えにくい」と断言していた。

 それでも〈合法だと思い込んだ〉と主張する水原は、トルコのプロサッカー1部リーグの試合に1000ドル賭けて負けたのを皮切りに、負け続けた。

〈一銭も勝つことができず、ドツボにハマって抜け出せなくなった。このことは誰にも言っていない。妻すら今に至るまで知らない。妻もソウルに滞在中で、彼女の家族と一緒に素晴らしい時間を過ごしている。だから1分ごとに私の心は引き裂かれていくような思いだ〉

 そう語った水原は声を詰まらせた。

大谷を巻き込む"重大な嘘"

 スポーツ賭博で負けた総額については〈できる限り明かしたくはない。恥なので〉と口を閉ざしたものの、トンプソンから「ボウヤー側には450万ドルが送金されたと聞いている」と取材で得た情報を明かされると、〈かなり正確な額だ〉と答えた。「それ以上ですか?」と続けて問われると、水原は〈違うと思う〉と言った。

 検察側の調べでは、水原は2021年9月から2024年1月までの間に約1億4225万ドル(約217億円)勝っており、負け額は約1億8293万ドル(約278億円)で、差し引きすると約4067万ドル(約61億円)のマイナスだった。450万ドルどころの話ではない。

 そしてその後、このインタビューで最も重大な"嘘"が飛び出す。水原は借金を返済するために、〈大谷に助けを求めた〉と主張した。大谷は明らかに快くは思っていなかったが、水原の代わりに返済を約束してくれたという。

 水原の説明によると、大谷が水原の目の前でノートパソコンを開き、大谷のオンラインの銀行口座にアクセスし、電子送金を行ったという。大谷にはボウヤーの素性を告げておらず、大谷から「違法なことはやっていないのか?」と尋ねられることもなかった、と主張した。

 この説明を受けてトンプソンは「申し訳ないが」と断りを入れた上で、厳しい質問を立て続けに浴びせた。

「これはギャンブルの話で多額のお金が絡んでいる。本当に合法か違法かを考えたことはないのか?」

「大谷があなたの借金を肩代わり返済することで、法的な問題が問われるような状況に陥るのではと一度でも考えたことはないのか?」

「合法か否かに関わらず、あなたが多額の借金を負っている相手に大谷選手を関わらせ、彼の名前が電子送金の記録として残ってしまうことに対し、2人の間で何の疑問も生まれなかったのか?」

 水原はトンプソンの問いに、このように答えた。

〈これは100%合法です。だから彼の名前が送金記録に残っても何のトラブルもないと考えていました。もし違法だと知っていたら、彼の名前を晒すようなことはしない〉

〈大谷は賭博には一切、関わっていない。これだけははっきり伝えたい。そして私はこれ(スポーツ賭博)が違法だとは知らなかった〉

 インタビューは終了。その後開幕戦が始まり、トンプソンはインタビューの内容をもとにした原稿を公開しようとした。そのわずか15分前、大谷のスポークスマンから着信が。相手は叫んでいたという。

「一平は嘘をついていた!」

 これを機に、水原の本性が次々と露わになる。トンプソンがその後、あらためて水原に電話で取材を行なうと、水原は大谷に対して嘘をついていたことを認めた。大谷は胴元に送金をしておらず、電子送金が繰り返された事実も、そして水原が違法賭博に手を出して借金を背負っていたことも知らない--。それだけでなく大谷のスポークスマンや大谷の複数の税理関係スタッフ、そして胴元であるボウヤーに対しても嘘をついていた。

 水原の発言を検証すると、その"嘘のつき方"には共通項も見られた--後編記事で詳報する。

(後編につづく)

【プロフィール】水谷竹秀(みずたに・たけひで)/ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)などの著書がある。10年超のフィリピン滞在歴を基に「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材を続け、ウクライナでの戦地ルポも執筆。