AIが作ったものをAIで切り抜いてAIが見る…「ショート動画」でできつつある“奇妙なサイクル”

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“AIによる視聴”で再生数稼ぎ

いまや、ほとんどの人がYouTubeのショート動画を見たことがあるだろう。ごく短時間で満足感が得られて、すぐに次の動画が再生されるため、気づけばかなりの時間を消費してしまう。Instagramのリール動画やTikTokもそうだが、ショート動画は現代人に時間を大量に消費させるものの1つとなっている。

「ショート動画」と呼ばれるものは、もとになった長尺の動画があり、見る人が多そうな部分だけを切り抜いて作られることが多い。

切り抜きのショート動画は、もととなったYouTube動画などへの誘導のために作られることが多いが、再生数や登録者といった数字を稼ぐためだけが目的の場合もある。最近は動画を生成AIによって作成し、音声もAIでアテレコすることが容易にできる。さらに、“AIに視聴させる”ことで再生数まで稼ぐ例も出てきているのだ。

’24年には、自分が投稿した数十万のAI生成音楽をAIのBotアカウントに数十億回再生させ、印税を約14億円稼いでいた男が通信詐欺罪などで逮捕されている。似たような手口で動画の視聴数を稼いでいるケースもあるという。

「AIによる再生数の水増しは、閲覧を自動化する『View Bot』などに指示をすることで動画の再生回数を増加させる仕組みです。Botは人間による視聴行動をモデリングし、近年では『視聴時間』、『動画の停止位置』、『シークバーの操作』、『スクロール速度・クリック間隔』といった行動も模倣します。

YouTubeなどのプラットフォーム側も不正操作への対処をしているため、より人間の行動に近い操作をすることで、それをかいくぐって再生数を稼いでいるのです。

また、近年ではブラウザ自動化を組み合わせたものもあります。人間がブラウザで行う操作をプログラムで再現・自動実行する技術です。『ブラウザを開いて動画を探す』、『関連動画の視聴』といった一連の操作を行えるまでに進化しています」(ITライター)

そんな不正な再生数稼ぎに対するプラットフォーム側の対処も日々進化しているようだ。

「ユーザーのセッションを解析、またデバイスやネットワーク、行動解析を含むさまざまな要因から有効なものであるかどうかを判定しています。単に“人間っぽい”だけでは検出されてしまうので、業者側もさらに巧妙に監視をごまかす技術を開発する。いたちごっこが続いている状態なのです」(同前)

“制作マニュアル”でメソッドが拡散

AIを用いて制作されるショート動画は、基本的にはSNSなどでバズった動画が利用され、とくに海外の動画を用いて作られることが多い。最近では、昨年の12月末ぐらいに“海外人気ドラマに出演していた元子役俳優の現在のホームレス姿”という動画が、SNSで拡散されて話題を呼んだ。

そこからさらにYouTubeやInstagram等で解説動画が作られ、あちこちで“バズの再利用”が見られることとなった。

よく作られるショート動画のネタは、身近な疑問や不思議なことといった人の注意を引き付けるものだ。それらの動画をもとに、AIを用いて解説動画を作るわけだが、その解説も間違っていることが多い。そんな、コンテンツとして成立しているとは考えられないものがYouTube上で垂れ流されているのだ。

この手のショート動画が、なぜここまで急速に広がったのか。画像や動画のAI編集などに詳しいライターの山野祐介氏に話を聞くと、「その制作メソッドが、情報商材としてnote等で急速に広まったことが要因の一つ」と指摘する。

「例えば、noteで『AI ショート動画』と検索をすると、無料で閲覧できるページから、有料のものまで、作り方の手順がたくさん出てきています。台本はChatGPTで作り、ナレーションもAI生成音声で作りましょうといった内容です。ショート動画で集客をしたり、LINEグループや自身の有料のnoteに勧誘したりするなど、作る人の目的はさまざまです」(山野氏)

なぜ、海外の動画ばかりがショート動画として出回るようになっているのか。それについては、「動画の撮影者や投稿者など、権利を持っている人に見つかりにくいから」(山野氏)というのが理由のひとつだという。

「切り抜きのショート動画は基本的に許可を取って作られたものではないので、見つかってしまうと削除要請が来る可能性があります。日本人向けに編集されたものであれば、YouTubeのアルゴリズムにより、海外の人には届きにくくなる。比較的安全に海賊版を作れることが広まり、これがスタンダードになったのでしょう。日本のテレビの切り抜きは海外に大量にあります」(山野氏、以下同)

アカウントを売って儲ける手口

量産されたショート動画で最も確実に稼ぐ方法は、YouTubeアカウント専用の売買サイトで売ってしまうことだそうだ。

「『M&Aクラブ』や『ラッコM&A』など、YouTubeアカウントを売買できるサイトは多数あります。登録者がどのくらいいて、どのような動画になっているのか。それで売買の値段が決まりますが、登録者が1万人以下のアカウントでも、10万円から20万円で取引されることがある。

重要なのは、アカウントを買ったとして、その後どれだけ収益が見込めるか。人間が話している動画だと、売買によって出演者が変わると再生数が減少し収益も下がってしまう可能性がある。そのため、AI音声を用い属人性を極力排しているアカウントが好まれています」

動画の台本から編集に至るまで、すべてAIでできる。バズっているショート動画とまったく同じ動画を作る模倣クリエイターもいる。山野氏は「AIクリエイター向けの台本を売っている人もいますが、それもAI製です。AIが作ったものをAIに入力して動画を作る。悪循環なので粗悪な動画ばかりです」とも語る。

日々ネット上では、再生数稼ぎのためだけの動画がアップされている。AIで数字を稼ぐために動画を作り、その動画がさらにAIによってショート動画に編集され、酷い場合は動画視聴もBotが行い、再生数を水増しする。AIによる制作から編集、そして自動視聴まで、人の手を介さずに”AIが量産したコンテンツをAIが消費する”奇妙なサイクルが生まれつつある。

2月に発表された『第13回 日経「星新一賞」』では一般部門の受賞4作品のうち、グランプリ受賞作を含む3作品が生成AIを使用して創作されたもので、審査員からも「まったく区別がつかない」との声が上がっていた。

AIが作るものと人間が作るものの区別は曖昧になりつつある。AIとの正しい共生のあり方は今後の大きな課題だが、すでにネット上では、AIの作り出したものによる“汚染”が大きく広がっているのだ。

取材・文:白紙緑