星野リゾート「界 別府」で”はじめてのひとり温泉宿”やってみた!【後編】
猛暑を迎える前のいま季節、ぜひ試してもらいたいのが温泉へのひとり旅です。仕事をしてると友だちとも家族ともなかなか予定が合わないし、でも、ひとりで旅行するのは不安だし……。そんなあなたに、全国24ヵ所にある星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」は、“はじめてのひとり温泉宿”という、“おひとりプロデューサー”まろ氏と開発した素敵なプランを用意してくれています。大分県「界 別府」でそんなプランを満喫する旅、後編は多彩なアクティビティを楽しみます。
お風呂で、朝食で、「温泉絞り」で……おひとり様を満喫!
「界 別府」で素敵な夕食や地元の焼酎、夜のアクティビティなどをさんざん楽しみ、「ああ、ひとり温泉旅に来てよかった」としみじみ床についた(【前編】参照)。
その翌朝。客室から見た別府湾の日の出は、このうえなく美しかった(冒頭写真)。まずは、部屋の露天風呂にザブン! 海風に吹かれつつ湯に浸かって朝陽を愛でる。最高の気分だ。
その足で大浴場に向かう。早朝のためか先客はなし。赤みがかった湯をたたえた浴槽の、向かって左側は少しぬるめと聞いていたので、まずはそちらから。体が湯温に慣れてきたところで右側=熱めの湯がたっぷりの浴槽に移る。うーん、極楽、極楽!
湯上がりにパブリックスペース「湯の広場」を通りがかると、ちょうど早朝のアクティビティ、「現代湯治体操」が始まるところだった。もちろん参加。ぽかぽかの体から、じんわり汗がにじみ出してくる。
体が整い、お腹が空いたところで食事処を訪れると、“おひとり様”仕様に簾(すだれ)で仕切られた、庭を望める半個室に通された。完全個室で無音だと、ひとり旅の寂しさが募るかもしれないが、ここは他の客の声やスタッフが行き交う音が微妙に聞こえる。そのくせ視線はさえぎられているから、まったく孤独感がないうえに落ち着く。このあたりの心配り、さすがは界だ。
そして運ばれてきたのは地域色あふれる和食膳「ご当地朝食」。おひつにたっぷり入った白飯もついてきて、お代わりもできるという(とてもそんなに食べられないが)。
メインのおかずは大分県のソウルフード「ごまだし」が添えられた「海鮮鍋」。ごまだしを少量ずつ溶きながらアサリや魚の練り物、キノコにゴボウ、ニンジンなどいろいろな地元産の具材をいただく。朝から満腹、満足だ。
そしてまた湯の広場に戻って、予約していたアクティビティ「別府温泉絞り」に参加。あらかじめ赤や青に染められ、一部美しい模様がつけられた木綿布に、参加者がそれぞれのセンスでビー玉や箸のような棒などを紐や輪ゴムできつく結わえ、布を別府の温泉水に浸けて染料を落として乾かすと……結わえた部分だけは色落ちしないため、上写真のような模様ができる。われながら、なかなかのできばえだ。
別府のまちをそぞろ歩いて温泉めぐり!
同じく湯の広場で「温泉文化いろは『ジモ泉と別府の暮らし』」なるレクチャーも受ける。一日に数回開催されるこのアクティビティは、界のスタッフさんが、別府のまちに100ヵ所以上も点在し、長年地元の人びとの暮らしに溶け込んできた共同浴場=ジモ泉の入り方、マナー、楽しみ方を教えてくれる。
・ジモ泉に入館する際は、番台の人などに挨拶すべし。
・浴室に入ったらまず、湯船から風呂桶で湯を汲んで体を清めるべし。
・地元民は湯船の縁(ふち)を枕にして入浴するため、縁に腰掛けるべからず。
などなど、なかなか気づきにくいポイントを短時間で学べる、マジで有意義なものだ。
というわけで、いっぱしの地元民気取りで別府のまちに飛び出した。これから3時間ほど温泉めぐりをしたいが、有名な“別府地獄めぐり”をするなら車での移動が必須だから、少々気ぜわしい。ひとり旅だし、ここは歩いて、まちと温泉をのんびり回ってみよう。
界 別府にほど近い「竹瓦小路」は大正10年(1921年)にできた日本でもっとも古いアーケードだ。しかも木造で、中は激渋のネオン街。ここを通って目的地に向かう。
アーケードを出ると、目の前に現れたのが「竹瓦温泉」。こちらはさっきのアーケードよりさらに古く、明治12年(1879年)創設の、別府の“顔”ともいえる温泉だ。
ここにはレトロなしつらえで味ありまくりの、ふつうの温泉(風呂)もあるが、なんといっても有名なのは「砂場」だ。これはぜひ体験してみたい。
男女別の更衣室で専用の浴衣に着替えた後、広〜い砂場に入ると、緑の作務衣を着た“砂かけさん”が待っていた(下写真)。私たち入浴客のために、早くから砂を温泉で温め、その後、湯を抜いて待機してくれていたのだ。ちなみに、砂場では男湯、女湯の区別はなく、みんな仲よく、砂かけさんの指示に従い、並んで寝転ぶ。
砂の上にゆっくり寝転び、木の枕に頭をもたげると、砂かけさんが専用のスコップで、足から順に砂をかけて(載せて?)くれる。砂は温かく、そしてずっしり重い。胸から首元までを分厚く覆うように砂を載せられると、少し圧迫感が出てくるため、砂かけさんは、「大丈夫ですか? 呼吸は苦しくないですか? 暑すぎたら言ってください」と声もかけてくれる。
砂は湿っていてかなり温かい。スチームサウナのような感じで、どんどん汗が出てくる。顔も汗だくになってくるが、砂に入っているので拭(ぬぐ)えない。と、そんなタイミングで砂かけさんが「お顔の汗、拭きましょうか」と、ふかふかのタオルを顔にチョンチョンとやさしく当ててくれる。至れり尽くせりだ。
そうして砂の中にいること約15分。砂場体験が終了した。浴衣は砂だらけ、汗まみれだから、更衣室に戻ってシャワーを浴び、浴槽に浸かってすなと汗を落とす。浴衣を返却用の容器に入れたら、体を拭いてフィニッシュ。いや〜、スッキリした〜! だいぶ汗をかいたから、しっかり水分を摂ろう。
すっかりリフレッシュして竹瓦温泉を出、また別府のまちをそぞろ歩く。さて、もうひとつジモ泉をめぐりたいが、ここから歩いて行けるところは……。界 別府でもらったマップを見ると、近くに「紙屋温泉」ってのがある。行ってみよう。
あれ? このへんのはずなんだけどなあ……と探していると、細い路地から風呂桶を手にしたお年寄り女性2人が出てきた。いかにも風呂上がり。エッ? こんなとこにホントに温泉なんかが……ありました! 年季の入った2階建てアパートの1階、みたいな佇まいのジモ泉が。こんにちは〜。開けっ放しのドアを入っても、番台らしきところには誰もいない。仕方なく、そこに置かれた、いかにも手づくりの紙の箱に300円をチャリンと入れ、半地下の脱衣所へ。先客ゼロ。ロッカーはあるが、見たところ、ちゃんとカギがかかるかは微妙な感じ。思い切って(?)服を脱ぎ浴室に入る。中央に、たっぷり湯をたたえた3×2mほどの長方形の浴槽。かかり湯をしてから入ると……とってもいい湯! ひなびた感じとひとり占め感もたまらない!
ふと浴室の端を見れば、「飲み湯」の表示がある小さな浴槽と、「ひとりにつき2リットルまで」の張り紙。専用のひしゃくでこの湯を汲んで持ち帰り、愛飲している地元の人は多いのだという。紙屋温泉、味ありすぎでしょ!
身も心もホカホカになって、界 別府に戻る途中、店前に長い行列のできた「友永パン屋」を見つけた。おお、ちょうど小腹が空いたところだ。整理券と注文用紙を受け取って列に並び、買いたいパン名を書いてゲットしたのは……焼きたての「つぶアンパン」1個130円。アツアツを紙袋に入れてもらって、歩きながらほおばる(行儀悪いけど)。しみじみ、おいしいなあ。行き当たりばったりでジモ泉に入ったり、地元グルメを楽しんだり……。これも、ひとり温泉旅だからこそって感じもする。
いい気分で界 別府に戻り、館内の“ドラマティック温泉街”ぶりを再び目に焼きつけ、今度は海辺の公園に出て、外から界 別府の姿を眺める。ああ、ホントにここに来てよかった。はじめての温泉へのひとり旅、自分的には大成功!
Photo & Text:T.Funakawa(FRaU)

