多様な家族やカップルの形が増える中、「選択的シングルマザー」という生き方を選ぶ女性たちがいる。

【映像】ジュリさん、出産時の写真(ほか複数カット)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、1人で子どもを産み育てる決意をした女性を取材。弁護士の三輪記子氏とともに、その現実と生殖補助医療をめぐる法制度の課題を深掘りした。

■「35歳でタイムリミット」卵巣機能の低下に直面した女性の決断

 カメラマンとして生計を立てながら、8歳の娘を育てるジュリワタイさん(46)。自らの意思で選んだのは、1人で子どもを産んで育てる「選択的シングルマザー」の道だった。

「今でいう『選択的シングルマザー』として出産をするっていう選択肢以外思いつかなかった」(ジュリワタイさん、以下同)

 30代前半で結婚したジュリさん。自身は子どもを望んでいた一方、当時の夫は子どもを持つことに消極的だった。

「『子どもが欲しい』『育児がしたい』みたいな話もしていたんですけれど、(夫の答えは)『今はないかな』みたいな。『まあそのうち(夫の)気も変わるかもしれないな』ぐらいの気持ちでいたんですよ。いろいろ会話して、すり合わせをしていく必要があったんでしょうけれど、お互い仕事が忙しかったり。気づけばもうタイムリミットというところに来ていたんですね」

 35歳で婦人科を受診した際、卵巣の機能が低下しており、出産できる年齢がタイムリミットに近いと診断されたという。

「現実を思い知ったというか、『自分でなんとかするしかない』といろいろ調べ始めた」

 あらゆる妊娠の可能性を探る中で、海外の精子バンクで購入して出産する方法があることも知る。しかし、「それで子どもを授かったとして、どうやって子どもにそれを伝えていけばいいのか」…。さらに、相談した病院では「顕微授精は法的に結婚している夫婦にしか行わない」と伝えられるなど、1人で妊娠・出産する上での高い壁に直面する。

■下したのは「元夫の精子」提供を受け→“1人で産む”という決断

 様々な方法を模索する中で、ジュリさんが最終的に決断したのは、当時まだ婚姻関係にあった夫に精子を提供してもらい、1人で子どもを産み育てるという道だった。決意を聞いた当時の夫から伝えられた言葉は…。

「『君には何もしてあげられなかった。だから僕には反対も賛成もすることもできない。父親として家族を作っていくこともできない』。受け入れて理解してもらえたのなら、その後は自分でしっかりとやっていく、そういう気持ちに切り替わりました」

 子どもを1人で産み育てることを承諾してくれた当時の夫に対し、ジュリさんは強い覚悟を告げた。

「『出産とその先育児するにあたって、あなたに迷惑をかけるつもりはありません』『将来的に何か助けてほしいとか、養育費が欲しいとお願いすることはないです』と」

 こうして顕微授精を経て娘を授かったジュリさん。その後、離婚した元夫とは連絡が取れるようにしたという。それは、いずれ娘が将来「自分の出自」が気になった際、元夫の意思もあるが「繋げてあげることができたらいい」と考えているためだ。

■「法律婚至上主義」が背景に…生殖補助医療のルールと実態との乖離

 こうした選択的シングルマザーという生き方について、三輪氏は次のように語る。

「生き方の1つとしては全然珍しくない。そういう生き方を選択したい人ももちろんいるだろうし、現にこうやって選択できるのだから。自分が思うように生きるのはすごく大事なことだと思う」(三輪氏、以下同)

 しかし、日本の現状では、第三者の精子提供を受けられるのは「法律婚をしている夫婦のみ」と日本産科婦人科学会のガイドラインでは定められていて、シングルマザーや同性婚のカップルなどは生殖補助医療の対象外となっている。「精子や卵子の提供者は親ではない」という法整備が追い付いていない中で、自主的なルールの運用と実態との乖離が起きている現状について、三輪氏は背景にある社会の価値観についてを指摘する。

「日本でなぜこうなっているかというと、生殖補助医療に関しては、日本産科婦人科学会のガイドラインがずっと規律の役割を果たしてきた。しかし、学会のガイドラインなので法律上の拘束はない。『私たちが作ったルールを私たちが守ろうね』という形でやってきている。そもそも同性婚も認められていない日本では、法律婚から生まれてくる子どもとその家族というのが当たり前、という価値観。この「法律婚至上主義」がすごく根付いていることが、(様々な形の家族がいるという)実態との乖離の背景にあると感じる」

 「法律婚至上主義」が根強い日本だが、家族の形は多様化している。個人の望む生き方を尊重し、誰もが安心して子どもを産み育てられるよう、実態に即した法整備や社会のアップデートが必要とされている。

(『わたしとニュース』より)