66分に両ウイングバックを同時交代。森保監督には明確な意図があった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 日本代表にとって、W杯の決勝トーナメントでの“初勝利”をかけたブラジル戦。前半はゲームプランが機能していた。ブラジルにボールを握られながらも粘り強く守り、ボールを奪えば素早く攻撃へ転じる。そして29分、佐野海舟の先制点でリードを奪う。優勝候補を相手に、狙い通りの展開へ持ち込んだと言っていい。

 しかし、後半は流れが変わった。ブラジルは攻撃の形を修正し、エースのヴィニシウス・ジュニオールを左サイドに張らせて幅を使った攻撃を増やす。日本が彼にダブルチームで行く分、左サイドバックのドグラス・サントスをインサイドから押し上げて、シンプルにクロスを送り込む形を徹底する。

 それまで耐えていた日本は徐々に自陣へ押し込まれる。66分、森保一監督は堂安律、中村敬斗に代えて、菅原由勢と鈴木淳之介を投入。両ウイングバックを同時に交代させる決断を下した。

 結果だけを見れば、この交代策は試合の流れを変えられなかった。終盤、自陣でのミスから勝ち越し点を許した。ただ、この交代策は単なる「失敗した采配」と片付けられるものではない。

 森保監督は交代の意図について「ブラジルはシンプルにサイド突破、サイドからクロスということで戦術的にもより明確なことをしてきた。その意図を止め、かつ自分たちの流れに持っていくためにカードを切った」と説明した。
 
 外目には“ウイングバックのサイドバック化”という消極的な采配にも映ってしまうのは、森保監督の意図していた守備からの攻撃が機能しなかったためだ。森保監督は両ウイングバックに新たな運動量を加え、ブラジルのサイド攻撃を抑えながら、日本も攻撃へ出ていく流れを取り戻そうとした。

 ハーフタイムには失点しないことを前提に、守備だけの守備にならず、そこから攻撃につなげることを選手たちに求めたという。森保ジャパンが4年間、積み上げてきた「良い守備から、良い攻撃へ」という考え方を最後まで貫こうとしていたのだ。

 しかし、ブラジルの修正に対して日本が組織として対応し切れなかった。途中交代した堂安律は「ヴィニシウスが中に入らず、サイドに張るようになった。ダブルチームをかけると空いたボランチを使われたし、ムキになってドリブルするのではなく、試合を作ってきた」と振り返った。

 サイドを警戒すれば中央を使われ、中央を締めれば再び外からクロスを送られる。ブラジルは日本の守備の動きを見ながら攻撃の出口を選び続けた。ウイングバックをフレッシュな選手に替えただけでは、この変化を止め切ることはできなかった。

 そこで明確な課題として浮き彫りになったのが「守備から攻撃への質」だ。試合後、指揮官は「守備から攻撃に移る最初のパス、そのための動き、トランジションをもっと早くしなければならない」と繰り返した。

 ボールを奪っても、ブラジルのプレッシャーをかわす一本目のパスがつながらず、すぐに押し返される。その結果、自陣で守る時間が長くなり、交代で運動量を補っても守備の負担そのものを減らすことはできなかった。

 森保監督は「一度プレスを回避できれば、組織でも個人でも攻撃を組み立てられる時間帯はあった」と振り返る一方、その回数をもっと増やさなければ、世界のトップとは互角に戦えないと分析している。
 
 さらに、この試合では選手層も小さくない要素だった。もちろん主力を担ってきた南野拓実と三笘薫の負傷による不在、さらに大会直前の遠藤航の離脱は痛かったが、ただ、そこは分かったうえで、この26人のメンバーを選んだわけで、言い訳にはならない。

 森保監督の采配をより難しくさせたのは、大会中の久保建英の負傷だ。そのため、本来はゲームチェンジャーとして最も流れを変えられる伊東純也をスタートから使わざるをえなかった。