ウイングバックの二枚替えは「失敗した采配」と片付けられない。浮き彫りになった日本代表の「守備から攻撃への質」
そこで明確な課題として浮き彫りになったのが「守備から攻撃への質」だ。試合後、指揮官は「守備から攻撃に移る最初のパス、そのための動き、トランジションをもっと早くしなければならない」と繰り返した。
ボールを奪っても、ブラジルのプレッシャーをかわす一本目のパスがつながらず、すぐに押し返される。その結果、自陣で守る時間が長くなり、交代で運動量を補っても守備の負担そのものを減らすことはできなかった。
さらに、この試合では選手層も小さくない要素だった。もちろん主力を担ってきた南野拓実と三笘薫の負傷による不在、さらに大会直前の遠藤航の離脱は痛かったが、ただ、そこは分かったうえで、この26人のメンバーを選んだわけで、言い訳にはならない。
森保監督の采配をより難しくさせたのは、大会中の久保建英の負傷だ。そのため、本来はゲームチェンジャーとして最も流れを変えられる伊東純也をスタートから使わざるをえなかった。
ただ、そこも鈴木唯人や塩貝健人、後藤啓介、このブラジル戦でW杯デビューした町野修斗も含めて、本当に勝負どころで送り出せるカードになれていたかと言えば、疑問が残る。カタールW杯の反省からベースアップに努めてきたが、本当の勝負というところでスモールスカッド化してしまった事実は否めない。
後半アディショナルタイムに1-2とされてから、ようやく5枚目のカードとしてFWの小川航基を投入したが、森保監督は「交代枠を一枚残し、延長戦を見据えて準備していた」と明かした。
90分で無理に勝負を決めに行くのではなく、120分を見据えたゲームマネジメントを考えていたようだ。しかし、そのプランは終了間際の失点によって崩れ去った。そこも結果論ではあるが、消化不良感が出てしまう要因ではある。
改めて振り返ると、ウイングバック二枚の交代が十分に機能しなかった最大の理由は、ブラジルの修正に対して、守備から攻撃へ転じる質を最後まで取り戻せなかったことにある。そして、その課題は森保監督自身が試合後に何度も口にした「最初のパス」「プレス回避」という言葉にも表われている。
世界との差は確実に縮まっている。しかし、その差を勝利へ変えるには、90分の中で相手の変化に対応し、自分たちの流れを取り戻す力がまだ必要だった。今回の両ウイングバックの交代は、その現在地を象徴する采配だったと言える。
取材・文●河治良幸
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