受験勉強が捗る家庭環境とは。過去問の出版社・声の教育社代表の後藤和浩さんは「中学受験の学習は子どもにかかる負担が大きい。勉強させるという空気ではなく、みんなで頑張ろうという雰囲気とサポートが必要だ」という――。

※本稿は、後藤和浩『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■子どもの学習は「薄く塗り重ねていく」もの

志望校の合格を勝ち取るための、「家庭学習」についてお話しします。

最初にお伝えしたいのが、子どもの学習は、大人の学習のようにはいかないということです。大人が学ぶときは、単元ごとにきっちり「ひとつずつ修めていく」スタイルが通用しますが、小学生相手ではそうもいきません。

すごろくのように一つひとつコマを進めていくというよりは、色鉛筆で塗り重ねていくイメージが近いかもしれません。

最初の頃は、「あれ? 本当に色を塗った?」と思うくらいに薄〜い塗り方かもしれませんが、何度も何度も薄く塗り重ねて、だんだんと色を濃くしていく感じです。

出所=『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』

■「受験」を大人の感覚で捉えない

親自身が経験した高校受験や大学受験と同じ感覚でいると、「何回もやっているはずなのに、どうしてうちの子はわからないのだろう?」とイライラして、子どもを責めたくなってしまうかもしれません。

同じ「受験」でも、大人が考えている受験と中学受験はまったくの別物だと考えておきましょう。

本番の日まで、同じ単元を繰り返し学ぶタイミングは何度でも来ます。ですから、塾の毎月のテストでも、宿題でも、模試でも、とにかく「完璧」を目指す必要はありません。

好きなもののことなら子どもはあっという間に覚えてしまいますが、勉強に関しては、残念ながら話は別です。「子どもは記憶力がいい」なんて、幻想です(涙)。

■学力は本番当日まで伸び続ける

秋くらいからいよいよ過去問演習が始まり、そのあたりからようやく少しずつ応用力が上がり始めます。

バラバラだった知識やスキルが結びついて加速度的に伸びていくのは、年も明けてからでしょうか。「そんなにギリギリで間に合うの?」と思うかもしれませんが大丈夫です。

多くの子どもが、その段階で一気に伸びていきます。

おそらく、最初に過去問を見たときには、「とんでもなく難しいぞ……」と感じるはずです。でも、最後の最後には、子どもはちゃんと合格点を取れるようになります。

それまでは心配し過ぎず、気長に見守るしかありません。子どもの学力は本番のその日まで伸びますから、どうか焦らずに。

写真=iStock.com/SeventyFour
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeventyFour

■「勉強しなさい」がなくなる雰囲気づくり

中学受験の学習は基本的に塾で進めていきますが、当然、自宅でも塾の宿題をしたり、過去問を解いたりしていきます。

その際、家庭の学習環境を整えてあげることで、快適に学習を進めることができ、学習に取りかかるときの心理的なハードルも下げることができます。

大切なのは、「勉強させる」という空気ではなく、「みんなで頑張ろう」と思えるような、明るい雰囲気が家庭の中にあることです。

■受験勉強はリビングで? 子ども部屋で?

「リビングで勉強させるべき? それとも子ども部屋のほうがいいの?」という疑問は、中学受験に限らず、子どもの学習に関してよく聞かれます。

もちろんその子に合う環境なら構わないのですが、どちらかといえば僕はリビング学習派です。

理由は、子どもの様子を親が自然に見守れるからです。

中学受験の学習は子どもにかかる負担が大きいものです。顔色がすぐれなかったり、疲れていそうだと感じたりしたら、「ちょっと休憩しようか?」とすぐに声をかけてあげられる距離にいることが大切だと思うのです。

また、親やきょうだいのいる空間で勉強することによって、「ひとりきりで勉強しているわけじゃない」といった雰囲気を作ってあげられるのも、リビング学習の大きな利点です。

■学習ポスターを“風景化”させない小ワザ

家庭でできる、子どもの学習がはかどるちょっとした工夫についても紹介しましょう。

リビングやトイレなどに、地図や漢字、四字熟語、ランキングといった資料や表のポスターを貼っているご家庭も多いと思います。貼ってすぐの頃は物珍しさもあって子どもがよく眺めたり覚えようとしたりしているかもしれません。

しかし、そのうちだんだんとただの“風景”と化してきて、壁紙の一部に同化してしまっている……ということも多いのではないでしょうか? せっかくなら、うまく活用して子どもの学習に役立てたいですよね。

そこでおすすめなのが、何度も貼り直せるタイプの付箋を矢印の形にちょきちょきと切って(矢印の形をした市販の付箋もあります)、それを表やポスターの「覚えたい箇所」に貼り、定期的に動かしていく方法です。

写真=iStock.com/Aleksei Lagunov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Aleksei Lagunov

日数が経ったら付箋を剥がして、「次に覚えたい箇所」に移動させてください。すると、子どもは「ん? なんか変わったぞ?」と、そこを見るようになります。いつもの風景の中に“変化”が発生すると、子どもはそこに意識を向けるようになります。

■「いつでも見られる」と思うと覚えない

そして、最終的に最後の箇所までいったら、その表やポスターを丸ごと剥がして捨ててしまいましょう。

「捨てちゃうの⁉ まだ覚えてないかもしれないのに」と思うかもしれませんが、「いつでも見られる」と思っているとなかなか覚えられないものです。

「最後までいったら剥がすからね」と子どもには伝えておき、ときどき、終わった箇所を口頭で“抜き打ちテスト”してもいいでしょう。その際、「絶対に正解しなさいよ?」といった空気で迫るのではなく、親子で楽しむゲームのような感覚で取り組めるといいですね。

むしろ、子どものほうから親に問題を出してくるくらいになると、ぐっと楽しくなってきます。

写真=iStock.com/miya227
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■「勉強時間」よりも「学習習慣」

「ほかの子は何時間くらい家で勉強しているのだろう?」と、毎日の学習時間の目安について気になっている人もいるかもしれません。

子どもによっては、塾のあとにそのまま宿題を終わらせてきたり、勉強はいつも塾の自習室でやったりと、家でほとんど勉強しない子もいます。

そう考えると、学習時間は本当に子どもによってさまざま、という印象です。

僕の考えとしては、「何時間勉強するか」よりも、「学習習慣を身につける」ことのほうが大切だと思っています。

そういう意味では、小4であれば、塾のある日は家庭学習を無理にやる必要はありませんが、塾のない日には、必ず30分か1時間は机に向かう時間を作っておきたいところです。

早いうちから学習習慣を身につけることができれば、小5、小6と強度が上がっていく中学受験の学習の土台につながっていきます。

■スケジューリングは子どもと一緒に

また、「1日何時間」と決めるのではなく、「塾のある日」と「ない日」のそれぞれでやるべき内容を明確にして、1週間単位で無理なく回るスケジュールを立てられるといいでしょう。

後藤和浩『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』(プレジデント社)

我が家では、100円ショップで買ってきた小さなホワイトボードを使って、1週間の学習計画を立てていました。縦軸を「曜日」、横軸を「時間帯(朝・昼・夜)」として区切り、学習内容を書き込んだマグネットを貼りつけていきます。

スケジュールづくりは、毎週日曜日の夜に、子どもと一緒に行っていました。

「今日は何をやればいいのか」がはっきりしていると、子どもは勉強に取り組みやすくなります。それに、子どもに完全に任せる形にしてしまうと、毎日漢字の練習ばかりしている、といった偏りも起こりがちです。

■「受験後」も役立つすごい習慣

そのように1週間単位で学習スケジュールを管理していたことで、うちの息子たちは、勉強は闇雲にやるものではないことや、計画を立てないと直前で慌てるはめになるといったことを体感的に理解できるようになったようです。

息子は中学に入学後もホワイトボードを使ったこのやり方をもとに、テスト前などに1週間のスケジュールを立てて勉強するようになりました。

中学受験のときは親である僕が中心になって管理していましたが、中学生になってからは完全にひとりで回せるようになっていました。

当時はそこまで見越していたわけではないのですが、中学受験のときに身につけた学習習慣が、その後にもうまく生きているのを感じると、やはり嬉しいものです。

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後藤 和浩(ごとう・かずひろ)
声の教育社 代表取締役
塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ入社。編集者時代は年間500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。息子の中学受験も経験。三度の飯より過去問が好き。首都圏を中心に中学・高校入試の受験情報の発信などを行っている。
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(声の教育社 代表取締役 後藤 和浩)