殺人グマが”絶対防衛ライン”圏央道を突破、ついに東京襲来か…背筋も凍る奥多摩はいま【現地を徹底取材】

写真拡大 (全5枚)

クマと人間の境界線が崩れ始めている。

連日のようにテレビの情報番組は、各地で相次ぐクマ出没を大々的に報じている。 

とはいえ、都市部、とりわけ東京で暮らしていると、そのニュースはどこか遠い土地の出来事であり、時には「エンタメ化した恐怖」として消費していたかもしれない。

しかし、その距離感が今春に入り、一変した――。

奥多摩エリアに“200頭ほど”いる…!

5月17日正午ごろ、東京都奥多摩町境の林道で、登山中だったロシア人男性がクマに襲われて重傷を負った。クマ鈴はつけていなかったという。

同月19日には、同町の仙元峠の登山道付近で、下半身だけの遺体が発見された。警視庁青梅署はクマに襲われた可能性もあるとみて調べている。

「ストレッチャーに下半身だけを乗せて山から降ろし、ご家族に届けた。もし、クマに喰われたのであれば、自分の『獲物』として執着するため、捜索現場の緊張感は半端でなかった」(警察関係者)

「殺人グマ」の恐怖は、確実に首都・東京に近づいている。

東京都西部の奥多摩エリアには、最深部へ向かう登山道がいくつも伸びている。6月上旬、本誌クマ取材班は、下半身のみの遺体が見つかったスポットを目指し、入り組んだ細い道を進んだ。だが、現場である長沢背稜に続く登山道は通行止めになっていた。

本誌記者は周辺の登山道に足を踏み入れた。道を覆うように茂る木々の葉を避けつつ、一人で歌いながら歩く。しかし、鳥が羽ばたいた音に驚き、思わず道を引き返した。

東京都猟友会奥多摩地区所属のベテランハンター・清水光弘さんが語る。

「今日も午前中は山に入っていましたが、人家からすぐそばの地区で、犬が子グマを追っていました。奥多摩では普通にクマがうろついていますよ。都が行った生息状況調査の分析では都内のツキノワグマの個体数は120〜378頭ですが、おそらく奥多摩エリアに200頭ほどはいると感じています」

「最後の壁」がついに壊れた

清水さんによれば、いまのクマは山の奥にいるだけでなく、道路を普通に歩くという。

「この辺の住人は夜に出歩かない。それゆえ目撃されていないだけ。ただし、奥多摩のクマは、人家に出てきて悪さはしない。ロシア人の登山者の方が襲われた件は、クマがエサを食べているところに出くわして、刺激してしまったのではないでしょうか。下半身だけの遺体の件は、おそらく遭難者だと思います。もしクマが本当に食べているのだとすれば、味をしめる。それが一番怖いですね……」

奥多摩エリアで活動する登山ガイドも危機感を隠さない。

「本来、山はクマの住処なんです。そこにお邪魔するという感覚でないと、今後は山に入るべきではないのかもしれないですね。自治体が発表する数倍は目撃されていると思います。クマを見ても全員が通報などしませんよ。東京都内ではクマは保護対象ですから、狩猟は禁止されています。それもあって、クマ被害に対する抜本的な対策は取られていないのが現状です」

それでも東京都の発表では今年に入り、44件ものツキノワグマの目撃や痕跡などの情報がある(6月15日時点)。これまで目撃情報の多くは、山間部と市街地の境を通る圏央道(首都圏中央連絡自動車道)より西側であり、「圏央道が最後の壁」と言われてきた。

だが、その壁がついに壊れた。クマの姿が市街地で確認されたのは、4月29日20時15分頃。場所は八王子市元八王子町にある雑木林だ。イノシシ捕獲用に設置された箱ワナのセンサーカメラにクマが映っていたことで判明した。1m以上の成獣とみられ、同市西側の山間部から下りてきたと推測されている。

まだ人に慣れていない東京のクマだが

本誌が現場に向かうと、そこは最寄りのJR高尾駅から約2kmの地点。JR西八王子駅からも約3kmで、小学校に隣接し、すぐ近くには福祉施設もある。普段から人や車の往来もあり、2km圏内にはスターバックスコーヒーもある。ほんの3分も歩けば住宅密集地。一歩間違えば事故が起きただろう。ワナを設置したハンター・小寺敦之さんが振り返る。

「おそらくエサを探して迷い込んだのでしょう。クマは活動範囲が広く、行動域が重なった場合は、強いクマが山に留まります。一方で、エサが不足した場合、あぶれた弱いクマは山を離れるしかない。今回現れたのも、そうした弱いクマだと思います。

また、現場の近くには霊園があります。クマに限らず、野生動物はお墓のお供え物を狙うケースがあるため、その可能性も考えられます」

クマの出没を受け、八王子市役所は既存の箱ワナとは別に、雑木林の中に新たなワナを仕掛けたが、いまだ捕獲には至っていない。

小寺さんが続ける。

「警察もこうした事態は初めてのことで、動転したのかもしれません。詳細な住所までメディアに公表してしまった。その結果、現場は大騒ぎになってしまいました。

本来、人間のにおいが強く残る場所にクマは現れません。すでに今回のクマは『ここにエサはない』と判断し、別の場所へ移動したと考えられます。東北地方のクマとは違い、東京のクマはまだ人に慣れていません。しかし、人間に近づいても危険がないと学習すれば、今後は堂々と姿を現すようになるかもしれない」

閑静な住宅地の中で“クマ出没”

クマの姿が撮影された現場近くには、「ホーメストタウン八王子」という大規模な住宅地がある。小高い丘に瀟洒な住宅が建ち並び、クマとは無縁の場所に思える。だが、現地を歩くと、自治会の掲示板に大きく赤字で書かれた注意書きが目に飛び込んできた。

「クマ出没注意!」

それによると、クマらしき動物の目撃情報として「けやき公園 5月18日深夜」「さくら公園の上 雑木林 1月」と記載されている。どちらも住宅街の中にある公園だ。

〈暗くなってからの歩行は安心できませんので、しばらくの間は控えるようにお願いします〉

掲示板を読むと、ここが都内の住宅地であるとは思えず、背筋に冷たいものが走った。

散歩中の住民たちに話を聞くと、「朝、窓のシャッターを開けるとき、クマがいないか毎回ドキドキする」、「いつまで気をつけなくてはいけないのか。もう疲れました」と一様に不安な表情を浮かべた。

【後編記事】『「高尾山にクマは絶対にいます」専門家も断言…このままいけば《立川・府中・二子玉川》にも出現か』へつづく。

「週刊現代」2026年7月6日号より

【つづきを読む】「高尾山にクマは絶対にいます」専門家も断言…このままいけば《立川・府中・二子玉川》にも出現か