北中米ワールドカップ(W杯)が大きな盛り上がりを見せるなか、ひとりの日本人男性が世界中の注目を集めている。

【衝撃画像】SNSで1億再生超えの大バズり…中久木アナが「I'm EXCITED!!!」と絶叫した瞬間を写真で見る

 富山の日本テレビ系放送局・北日本放送(KNB)のアナウンサー・中久木大力(なかくき・ひろちか)さん(39)だ。

 日本対オランダの試合前、ダラス・スタジアム周辺で地元放送局「FOX 4 News」のリポーター、ティシア・ムジンガさんにマイクを向けられた彼は、「I cannot speak English, but…I'm EXCITED!!!」と絶叫。その動画が世界中で拡散され、SNSで累計1億回再生超えを記録する「大バズり」となっている。

 いったいなぜ、中久木さんはあの場にいたのか。あのやりとりはどのようにして生まれたのか。どうしてこんなにもバズっているのか。帰国した本人に話を聞いた。


中久木大力アナウンサー(本人提供)

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「今も毎分のようにDMが…」動画が“大バズり”した反響

――中久木さんの動画、ものすごく拡散されていますね。

中久木大力さん(以下、中久木) 反響がすごくて、今もInstagramに毎分のようにDMが届いている状態です。

 アメリカだけじゃなくて、ドイツやオランダ、インドなど世界各地から「あなたの動画を見て元気をもらっています」「あなたが日本に帰ることが寂しい」「私の地域にもぜひ来てください」といった声が届いています。

外国の方から「あなたの動画がすごいことになっています」と…

――ご自身の動画が“バズっている”ことは、いつ知ったのですか?

中久木 オランダ戦が終わってホテルに帰って、いろいろ仕事をしていたら、全然知らない外国の方から、「あなたの動画がすごいことになっています」という内容のDMが届いて。そこで初めて知りました。

――ご家族やご友人からの反応はいかがですか。

中久木 私の親も、妻も、みんな本当に喜んでくれています。今年の4月に娘が生まれたばかりで、もちろん今の状況はまだ理解できないでしょうけれど、彼女もこの空気感の中できっと一緒に喜んでくれていると思っています。

 あと、10年、20年会っていなかった旧友からも突然連絡が来たりして。それも嬉しかったですね。

――そもそもなぜ、中久木さんは「FOX 4 News」のリポーター、ティシア・ムジンガさんから取材されることになったのでしょうか。

アナウンサー大賞に選んでいただいて…」W杯を現地観戦した経緯

中久木 まず、私が現地に行くことになった経緯からお伝えしたいのですが、「千鳥かまいたちゴールデンアワー2時間スペシャル」(日本テレビ系列)という番組で、全国の系列局アナウンサーが集まって自分をアピールし、番組を盛り上げた人に「全国ご当地アナウンサー大賞」として、副賞のW杯チケットを贈るという企画があったんです。

 そこで大変幸運なことに、アナウンサー大賞に選んでいただいて、オランダ戦の観戦チケットをいただきました。

 そのあと会社に相談したら、仕事としてW杯に行きましょうという話になりました。

――サッカー自体はお好きなんですか?

中久木 小学生のときからサッカーを始めて、高校3年間サッカー部でした。ずっとサッカーが大好きです。

 二十数年来のレアル・マドリードファンで、フィーゴが入団したころから見始めて、ジダンの左足のボレーに大興奮してハマっていきました(笑)。

 ただ、海外サッカーはずっとテレビ観戦で。長期で海外に行く時間がなかなか取れなかったというのが正直なところで、現地観戦は夢でした。だから、今回のW杯はその夢の実現でもあったんです。

「番組に出たくてあそこにいたわけではない」

――仕事とはいえ、念願叶ってW杯を現地観戦できることになったんですね。

中久木 ただ仕事で行く以上、「W杯に行って面白かったです」で終わるわけにはいかないじゃないですか。だから、ダラスやフォートワースの街中、試合当日の会場周辺などを取材していました。

 そうしたら、「FOX 4 News」が中継しているところに鉢合わせたので、私はその状況を映像で捉えながら、リポートしようとしていたんです。

――お互いにW杯の取材中だったと。

中久木 そうです。番組に出たくてあそこにいたわけではないんですよね。

――その後、なぜ中久木さんが取材を受けることになったのですか?

「カモン!」「え、僕ですか?」中継が始まる直前に手招きされて…

中久木 現地レポートをしようと思って、拙い英語で「ジャパニーズ・TVステーション」とティシアさんに声をかけたんです。

 そしたら彼女が、ジェスチャーで「もうすぐ中継が始まるから、ちょっと待っててね」という感じのことを伝えてくれて。

「中継が終わったら対応してもらえるのかな」と思いながら様子を見ていたら、中継が始まる直前に、ティシアさんが「カモン!」みたいな感じで、私に向かって手招きしてくれたんですよね。

 最初は自分が呼ばれていると思っていなくてぼーっとしていたのですが、周りにいた英語がわかる人から「呼ばれてるよ」と教えていただいて。「え、僕ですか?」という感じで入っていったあとに起こったことが、あの映像です。

 まさかああいう形で入ることになるとは思っていなかったので、かなり気が動転していましたね。

「英語は1割も理解していません」中継で生まれた“奇跡的なやりとり”

――取材を受けている最中、英語はどのくらい理解できていたのですか。

中久木 1割も理解していません(苦笑)。

――でも、ティシアさんの「How excited are you?」という質問に対して、「I'm EXCITED!!!」と絶叫しながら答えていましたよね。

中久木 あれは完全な奇跡です(笑)。私は彼女から何を質問されているのか、まったく理解できていなくて。

 単語が耳に入ってきた中で、無意識のうちに「EXCITED」という言葉を出したら、それが奇跡的にかみ合って、あのやりとりが生まれました。

――ものすごいテンションで、まさに「EXCITED」なことが伝わってきました。

中久木 もともとテンションは高いほうですが、W杯の興奮にプラスして、アメリカの生放送に出ているという状況にアドレナリンが全開になっていました。

 それに、せっかく呼び込んでもらったんだから、日本サポーターとしての声を届けたいという思いもありましたね。

 伝え手の仕事をしている人間として、何もわかりませんで終わるわけにはいかないという使命感もあって。何かを言わなければいけない、この思いをどうにかして伝えなければいけない、という一心でした。奇をてらうつもりは一切なかったんですよ。

「全てティシアさんのおかげ」なぜ動画が世界的にバズっているのか?

――中久木さんとティシアさんのテンションも噛み合っていたように感じます。

中久木 私が「EXCITED」と叫んだとき、ティシアさんも同じテンションで叫んでくれましたよね。「I love it! Yeah! Baby!」みたいな感じで、ものすごい声で。あの第一声のテンポの速さがすごくて。

 あれはおそらく、私に合わせてくれたんだと思います。そうすることで、「このインタビューは成立している」ということをティシアさんが示してくれた。見ている人は「このテンションで受け取っていいんだ」と感じられたはずです。

 もしティシアさんが「困ったサポーターを連れてきてしまった」という対応をしていたら、絶対にこんなことにはなっていない。

 今回こんなに話題になっているのは、全てティシアさんのおかげだと思っています。本当に彼女に感謝しています。

――ティシアさんの対応が素晴らしかったと。

中久木 私が「いつも、いっちゃん。」(KNBのキャッチコピー)と叫んだり、富山の話をしているときは、ティシアさんがちょっと困ったような、ユニークな顔をしていましたよね。多分あの表情も、あえてしていたんだと思います。

 テンションが高い人に対しても、低い人に対しても、その人から何かを引き出すために、どうするべきかを考えて対応している。プロフェッショナルというのはこういうことだと、動画を見返しながら本当に勉強になりました。

「世界から集まる人々を受け入れて、リスペクトしてくれている」

 あと、ティシアさんがあのような素晴らしい対応ができるのは、相手が日本人であれ外国人であれ、自分以外の誰かに対するリスペクトを持っているからだと思うんです。

 ワールドカップを機に世界から集まる人々を受け入れて、リスペクトしてくれている。私のような答え方をする人間を排除しようと思えばすぐにできたのに、私が声を発するたびにそれを拾ってくれようとするティシアさんの姿勢に、彼女の人柄を強く感じました。

――ティシアさんは後日、SNSで「時に、最も心を動かす瞬間は完璧な言葉から生まれるのではなく、人と人との本物のつながりから生まれる」「言葉は障壁ではない」とつづっていましたね。

中久木 私はそれを見て、本当に嬉しくて。世の中には差別があって、国と国の間だけでなく、国の中でも、地域の中でも、学校の中でも、自分とは違う何かを認めないということが起きています。

 でも今回のティシアさんの対応や姿勢を見れば、「差別なんて必要ない」というのが伝わってくると思います。

「お互いに『グッドラック』と伝え合い…」オランダサポーターとの“幸せな交流”

――取材中、ユニフォームの背中に書かれた「TOYAMA」という文字を見せながら、「富山」という言葉も連呼されていました。

中久木 日本代表に富山県出身の選手はいないけど、「私が富山県民の思いを背負ってエールを送ってきます」という気持ちで現地に行ったんです。

 英語がもっと話せれば富山のことをもっとアピールできたので、そこは申し訳なかったと思っています。ただ「富山」というワードを耳にした方が、手元のスマートフォンで調べてみるきっかけになれば嬉しいな、という思いでした。

――ユニフォームの背中にはメッセージも書かれていました。

中久木 富山県内の高校サッカーの関係者、保護者の方、富山県サッカー協会の方々などからメッセージをいただいたんです。皆さんのエールが日本代表の選手たちに届くように、試合中はユニフォームを裏返して観戦していました。

――スタジアム周辺では、サポーター同士の交流もあったのですか?

中久木 オランダサポーターとの交流がありました。それも素晴らしかったです。皆さんすごくウェルカムで。

 もちろん「俺たちが勝つ」とは言うのですが、日本のこともリスペクトしてくれているんです。そして最後には、お互いに「グッドラック」と伝え合いました。

 健闘を祈り合うこの空気感こそが、スポーツの力、サッカーの力だと改めて感じましたね。悲しいニュースが多い世の中ですが、現地ではすごく幸せな空気を味わうことができました。

「日本サッカーがここまで成長したのか」試合後にはスタジアムで号泣

――実際に現地でオランダ戦を観戦した感想は。

中久木 あの空気感を現地で感じられて、感無量でした。アメリカで、しかもダラス・スタジアムはすごく大きいのに、青いユニフォームが半分ぐらいを占めているように感じたんです。

 日本から1万km以上離れたところに何万人もの日本サポーターが集まっている。その光景に感動しましたね。

 試合が終わった後は、日本サッカーがここまで成長したのかという感動と確信を全身で感じて、涙が止まりませんでした。

――今後の日本代表に期待することは?

中久木 日本代表の選手たちとスタッフの皆さんが、今回の北中米大会を振り返ったときに「本当に良い大会だった」と思えるような時間を作ってほしいですね。

 そして、これから日本代表を目指していく子どもたちに、夢を与えるようなプレーを見せ続けてほしいと思っています。

 日本代表選手たちのそういったプレーが、次の世代の日本を強くしていくことに繋がっていくと、私は信じています。頑張れ、ニッポン!

写真=本人提供

(「文春オンライン」編集部)