2026年現在、毎年のように日本列島を襲う台風や集中豪雨。どれだけ災害リスクが低いとされるエリアに住んでいても、自然災害の脅威を完全に避けることは困難です。
こうした災害の後に、被災者の不安や焦りにつけ込んで言葉巧みに近づいてくる「悪徳業者」によるトラブルが後を絶ちません。今回は、建築士・ホームインスペクターである、さくら事務所取締役の田村啓さんが、実際に寄せられた相談事例を交えながら、その巧妙な手口と身を守るための防衛策を分かりやすく解説します。

■ 1. 「火災保険で無料」という営業トークに潜むリスク
台風で外壁が割れたり、屋根の金属が飛んでいったりした場合、加入している火災保険(風災特約など)を適切に活用して直すこと自体は、住まいを維持する上でとても大切な権利です。しかし、「無料で直せる」を強調する業者には注意が必要です。
・「経年劣化」は保険の対象外 火災保険が適用されるのは、あくまで「自然災害による突発的な被害」のみです。元々メンテナンスを怠って傷んでいた箇所(経年劣化)は対象外となります。この違いを無視して「何でも保険で直せる」と言い切る業者は極めて危険です。
・保険金が降りる前に契約を迫るトラブル 悪質な業者は、あれもこれもと高額な見積もりを作り、保険会社の審査(ジャッジ)が終わる前にリフォーム契約を結ばせようとします。後から「保険金が一部しか降りなかった(あるいは却下された)」となった場合でも、「もう契約したから」と自己負担での工事を迫られるトラブルが毎年繰り返されています。

■ 2. 「近所で工事中」は定番。嘘の写真で騙す点検商法
災害の後に、タケノコのように現れるのが「点検商法」と呼ばれる訪問業者です。その手口は非常に巧妙になっています。
・「引き(全体)」の写真がないアップ画像は疑う 「近くの家を直している者ですが、お宅の屋根の瓦がズレているのが見えたので、無料で点検しますよ」という文句は定番の手口です。実際に屋根に登らせた後、「瓦が割れていた」とスマホの写真を見せてくるケースがありますが、その写真が「アップ(拡大)」ばかりで家全体が写っていない場合は要注意です。最悪の場合、別の家で撮った写真を使って不安を煽っている可能性があります。
・災害時の「偽の判定札」など悪質な実例も 過去の大規模な水害地域では、自治体が行う公式な「応急危険度判定」の札に似せた偽の書類を勝手に貼り付け、「今すぐここへ連絡してください」と誘導する極めて悪質な業者も確認されています。

■ 3. トラブルに巻き込まれないための自己防衛策
災害の後はメンタル的にも弱りやすく、正常な判断が難しくなる瞬間があります。トラブルを未然に防ぐためには、あらかじめ「型」を決めておくことが大切です。
・訪問販売の点検は原則「断る・無視する」 本当に善意で教えてくれる業者がゼロとは言い切れませんが、リスクを避けるためには、突然訪問してくる業者は一律で相手にしない、または点検を断るのが最も安全です。一度屋根に登らせてしまうと、見えないところでわざと壊される危険性もあります。
・その場ですぐに契約書にサインしない どれだけ「早く直さないと大変なことになる」と急かされても、絶対にその場で契約してはいけません。
・高齢の家族へ事前に注意を促しておく 特に実家などで一人暮らしをしている高齢の方は、悪徳業者からターゲットにされやすい傾向があります。「怪しい訪問点検があったら、まずは子供(自分)に相談して」と日頃から声をかけ、家族間でリテラシーを高めておくことが大切です。

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