サッカー W杯 公式スポンサーでなくても勝つ。潮流に乗る小規模ブランドの戦術

記事のポイント
公式スポンサーではないスタートアップ各社が、限定商品や観戦イベントを通じてサッカー・ワールドカップ北中米大会需要の取り込みを狙っている。
クランブルは開催3カ国をテーマにした限定クッキーを発売し、SNS投票やアプリ演出を活用して大会との接点を創出している。
オリポップやプリンス・ストリート・ピザは観戦イベントやプレゼント企画を展開し、「サッカーウィーク」などの表現で商標リスクを回避している。
だが、すべてのブランドが公式スポンサーシップに数百万ドル(数億円)を注ぎ込むわけではない。
クランブル・クッキーズ(Crumbl Cookies)やオリポップ(Olipop)のような比較的小規模な米国のスタートアップは、パブリックビューイングの開催やサッカーをテーマにした商品の展開などを通じてワールドカップの熱気を取り込もうとしており、試合会場との近さを活かして、2026年最大ともいえる文化的潮流に乗ろうとしている。
開催月には数百万人もの観光客が北米に押し寄せるため、ブランドの幹部たちは、この好機に何らかの形で参入しなければならないと感じている。
金融大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のグローバル・リサーチによる新たなレポートによれば、過去最大規模となる見込みで、世界の75%が何らかの形でこのイベントに関わるとされている。
「ワールドカップの恩恵をもっとも受けやすいセクターには、飲料、スポーツウエア、レストラン、放送、ソーシャルメディア、オンライン・ベッティング(ネットを利用した賭け)が含まれる」とレポートは述べている。
6月11日から7月19日まで開催される今年の大会は、米国、カナダ、メキシコの3カ国で過去最多104試合が行われる。これにより、各ブランドには、さまざまな体験型マーケティングのコンセプトを展開するための十分な好機がもたらされることになる。
クランブルが開催3カ国の限定フレーバーを発売
クランブル・クッキーズにとって、今年のワールドカップは絶好のタイミングで訪れた。この多国籍フランチャイズ企業はユタ州で創業したが、近年はカナダにも進出し、現在では同国内に十数店舗を構える。さらに、今夏のいずれかの時期に、ワールドカップの5試合を開催するメキシコシティに初出店する予定でもある。
「実際にスポンサーになるところまでこぎ着けるのは、かなり難しい。だから我々は、『自社の商品開発を通じて参加する以上によい方法があるだろうか』と考えた」と、クランブル共同創業者のソーヤー・ヘムズリー氏は語る。
クランブルはすでに限定フレーバーで知られており、サッカー大会にちなんだフレーバーのラインを発売することは当然の選択だった。
6月7日、クランブルは開催3カ国にインスパイアされた限定フレーバーのセットを発売した。フレーバーには、アメリカン・ブラウニー・サンデー・クッキーや、同社がタヒン(Tajín)とのコラボレーションで生み出した酸味のあるマンゴー・クッキーなどが含まれる。このクッキーのセットは7月18日まで販売される。
クランブルは、サッカーファンの心に響くコンセプトを試そうとした。このコレクションのなかでもよりユニークなフレーバーのひとつが、クランブルのブルーラズベリー・スポーツドリンク・クッキーで、ヘムズリー氏はこれがオンライン上でも店舗でも大きな話題を呼ぶと期待している。
「もちろん公式スポーツドリンクのパワーエイド(Powerade)を使いたかったが、残念ながら彼らは自社のミックスを食品やデザートに使うことを許可していない」とヘムズリー氏は言う。代わりに、クランブルはこの有名な水分補給ドリンクにインスパイアされたフレーバーを作り出した。
「こんなことはこれまで一度もやったことがない。きっと大きな話題になるだろう」。
ヘムズリー氏によると、店頭でのサッカークッキーのプロモーションに加え、同社はソーシャルメディアを駆使した大規模なプロモーションで新フレーバーの発売を積極的に宣伝していく予定だという。
「我々はソーシャル戦略を通じて、オンライン上で楽しい企画を行う」と彼は語り、どのフレーバーや国のプロフィールがもっとも高く評価されるかを測るための投票などを例に挙げた。
「ソーシャル上の盛り上がりは毎日見守る必要があるため、状況は潮の満ち引きのように変化する。我々のチームは、どうやって関心を引きつけるかを常にブレインストーミングしている。Webサイトやアプリのビジュアルも、サッカーのテーマに合わせて変更する予定だ」とヘムズリー氏は言う。
「クランブルにはすでに熱狂的なファン層がある。これらのクッキーが、新たなファンをもう少し増やしてくれることを期待している」とヘムズリー氏は語った。
プレゼント企画やリアルな場での仕掛けに乗るブランド
ギブアウェイ(プレゼント企画)は、多くのスタートアップが取り入れているもうひとつの人気の手法であることが明らかになっている。プリンス・ストリート・ピザ(Prince St. Pizza)は、1スライス購入するごとに、入手困難な試合チケットが当たるチャンスをファンに提供した。
このピザチェーンは、5月4日から6月初旬にかけて、ロサンゼルス、ダラス、マイアミの各市場で「スライス・トゥ・ウィン(Slice to Win)」と題したワールドカップ・チケットのプレゼント企画を実施した。同社はまた、この企画を自社のロイヤルティプログラムの宣伝にも活用し、会員登録した顧客に5口、友人を紹介した顧客に3口の応募権を与えた。
ほかのブランドも、旅行者と地元住民の双方が観戦パーティーに繰り出したがるだろうと見込んで、リアルな場でのアクティベーションでサッカー熱に乗っている。
オリポップはダラスで30日間のブロックパーティー
機能性ソーダブランドのオリポップは、大会期間を通じて、今夏のワールドカップ開催都市であるダラスのダウンタウンで、30日間にわたるブロックパーティーとアクティベーションのスポンサーを務める。
同社によれば、ファンは6月中旬から7月中旬まで集まって試合を観戦できる。このアクティベーションには、オリポップの「フィール・グッド(Feel Good)」ソーダバーや、ジャージ作り用のオリジナルブランドのワッペンなどが用意される。
この観戦イベントに合わせて、オリポップは6月から8月にかけて、開催都市であるマイアミとロサンゼルスの2都市で、スタジアム周辺やダウンタウンのホテルエリア付近に広告を出すOOHキャンペーンを展開する。
オリポップのマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるタラ・パイパー氏は、Modern Retailに対し、試合当日の集まりの多くが夏の暑さのなかで開かれることを踏まえると、ワールドカップはソーダが自然にフィットする文化的瞬間のひとつだと語った。
このアクティベーションはワールドカップに合わせたものだが、同時に、オリポップが新たに打ち出したリブランディングとも重なっている。「ザ・フィール・グッド・ソーダ(The Feel Good Soda)」というキャッチフレーズもそのひとつだ。パイパー氏は、新しいクリエイティブは、あらゆる場面でより健康的なソーダを提供するというブランドの使命をアピールするものだと述べた。
「我々は、その視点からこの夏に取り組んでいる。夏のあいだを通じてキャンペーンを実現させるために、その精神を自然と体現するアスリートたちともパートナーを組む予定だ」とパイパー氏は語った。
商標を避ける「サッカーウィーク」という戦略
クランブルのヘムズリー氏は、無数の公式スポンサーによって大々的に収益化されている世界的な大型イベントに対して近接性マーケティングを行うことには、いくつかの難しさがあると述べた。
「我々はこれを『サッカーウィーク(soccer week)』と呼んでいる」と彼は言う。これは、商標をめぐる紛争を避けられる程度に一般的な言い回しでありながら、イベントを明らかに連想させる表現だ。
クランブルは過去の近接性マーケティングのキャンペーンでも同じ手法をとっており、たとえばスーパーボウルに合わせて発売した商品を「ザ・ビッグ・ゲーム(The Big Game)」クッキーと名づけたことがある。
「これは非常に安全で、消費者にも理解しやすい表現なのだ」と彼は語った。
[原文:Brands are catching World Cup fever even without official sponsorships]
Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)
