若い投手のボールを受けながらアドバイスを送る金村コーチ【写真:羽鳥慶太】

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韓国ロッテ入りした金村暁氏、AI駆使のロボット審判をどう見た?

 今季から韓国プロ野球「KBOリーグ」には各球団1人のアジア枠が設けられ、多くの日本選手が海を渡った。さらに指導者の交流も続いている。昨年限りで阪神を退団した金村暁氏は、釜山を本拠地とするロッテ・ジャイアンツの投手統括コーディネーターに就任した。指導者の目に韓国の最新技術はどう見えているのか。いわゆる“ロボット審判”に対応できる投手とは――。

 金村氏はロッテのコーチに就任して、最初にABS(機器を利用したストライク・ボールの判定システム)の話をされた。韓国で採用されているのは、米大リーグのようにチャレンジの要求があったときだけ機械の判定を利用するものではない。全ての判定を軌道追跡システムとAIをもとに行い、球審はそれをコールするだけという、もう一つ踏み込んだシステムだ。

「AIの審判だから、ストライクゾーンはこうキッチリしていると言われてね。しかも日本より、数段高めを取る傾向があると説明されました」

 実際、高めがストライクとコールされるのは試合でも感じるという。ただ「とにかく球が速い選手が、高めに投げていれば打たれない」とされるここでの“常識”には違和感を覚えた。「ふたを開けてみたら、150キロを超えていようが、打者は高めをカンカン打つんですよ。韓国の打者はストレートにめっぽう強いので」。

 ABSの利用は2024年から始まっており、もう3年目になる。その中で打者にも慣れが発生している。「高めのここはストライクってわかっているから、打ってくるんです。で、今抑えているのはどんな投手かといえば……」。意外な現実があったという。

「球速は144キロくらいでも、低めに丁寧に投げて、そこから変化球も落としている選手が結果を出してるんです。日本と一緒だと僕は思っていますね。スピードじゃない。ちょっと動く変化球とか、低めに絶対間違えずに投げられるとか、そういう投手が結局活躍できると思うんです」

 低めへの制球の良さは、日本の投手の特性の一つとされる。学生時代から植え付けられているからだ。そう考えれば、韓国プロ野球で日本人投手が韓国人との“違い”を発揮し、抑えられる可能性は高いのだろうか。

日本人の特性にピッタリ…求められる条件「いくらでも勝てる」

「可能性は全然あると思いますよ。小さく動く変化と、低めのコントロール。それさえあればいくらでも勝てると思います。今こちらの野球は高め、高めって言ってるけど、絶対に大事なのは低め。そこから高めをたまに見せる投手なら、より空振りも取れる、やっぱり“原点”っていうように、アウトコース低めが一番だと思うんです」

 人間の目ではなく機械がジャッジするABSは、捕手のフレーミングや変化球の動く方向に判定が影響されないのが特徴だ。投手が考えるべきストライクゾーンは間違いなく変わる。「高低は広いけど、左右はそんなに広くない」。そして広いと言われる高めを有効に活用しようとすれば、考え方が大切だという。

「150キロを投げる投手でも、ずっと高めに投げていれば打たれてしまう。そこに意識がいきますからね。やっぱりいろいろ散らすから、目が動いて打てなくなるのがバッターだと思うんです」。高めをうまく使える投手として挙げたのは、阪神で指導した才木浩人投手だ。「ああいうホップ成分のある投手は空振りを取れますけど、韓国の投手は手元で伸びない球質が多い」。それなのに、高めにこだわってしまう傾向がある。

「だから、考え方ひとつです。僕は変えられる自信がある。細かいことをやってきていないだけで、やろうとすればできるんです。野球脳を与えるだけで、ここから絶対変わりますよ」

 阪神を退団した昨季限りで、ユニホームを脱ごうと思っていた。異国に渡っての指導者生活で願うのは「俺と一緒にできて良かったなと思ってくれる選手が、1人でもいてくれたらいいな」ということだけだ。「タイガースのときもそうだけど、俺と関わった以上は、もう1円でも多く稼いでくれと思っているので」。ここではその思いがさらに強くなった。

 キャンプで投手陣と、年俸の話になった。韓国プロ野球ではFA移籍した選手の年俸が突出して高く、それ以外の選手が低く抑えられているという現実がある。「去年60、70試合投げましたという選手の年俸が『えっ』という感じなんです。日本円にしたら300万円くらいもザラで。プロ野球選手になった以上、僕の指導した選手がみんな稼いでくれたらハッピーなので」。考え方ひとつで、急成長を遂げることもあるのが野球。ロッテの若い選手たちが、それを実証してくれる。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)