「一生忘れない」嵐ライブ映像をSNS投稿したら犯罪? 動画とスクショで異なる法的リスク、弁護士が解説
活動終了を迎えた人気アイドルグループ「嵐」の配信ライブを視聴したファンによるSNS投稿が相次いでいます。
ライブ映像の一部とみられる画像や動画を添付した投稿も見られ、「ありがとう嵐」「一生忘れない」といった共感の声が寄せられています。
一方で、「ファンならやめたほうがいい」「著作権侵害ではないか」「1000万円以下の罰金の対象になる可能性もある」といった指摘も上がっています。
所属事務所のSTARTO社は公式サイトで、配信コンテンツの録音・録画や無断転載を禁止するとともに、違法アップロードなどについて「10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金(または併科)」になる可能性があるとして注意喚起しています。
配信ライブの映像の一部をSNSに投稿した場合、どのような法的問題が生じるのでしょうか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞きました。
●複数の権利侵害になる可能性
──ライブ配信の映像をSNSに投稿した場合、著作権法上どのような問題が生じるのでしょうか。
まず、配信されているコンサートの映像を、端末のスクリーンレコード機能や手持ちのスマートフォンなどで動画撮影し、それをSNSに投稿するケースを考えてみましょう。
(1)実演家の権利
嵐のコンサート映像を動画撮影すると、必然的に嵐のメンバーが歌ったり踊ったりしている様子を録音・録画することになります。また、サポートミュージシャンが演奏している場合には、その演奏も録音することになります。
これは、実演家の権利(録音権・録画権)を侵害することになります。また、その動画をSNSに投稿する行為も実演家の権利(送信可能化権)の侵害です。
この実演家の権利は「著作権」ではなく、「著作隣接権」と呼ばれる権利のひとつです。
(2)レコード製作者の権利
完全な生演奏のコンサートであれば別ですが、多くのコンサートでは、レコード音源(CDや配信用音源のインストバージョンなど)が使われています。
この音源については、レコード会社などのレコード製作者(音源の制作者)が権利を有しています。これも著作隣接権のひとつです。
そのため、コンサート映像を動画撮影した際にレコード音源も録り込み、その動画をSNS投稿すると、レコード製作者の権利(複製権、送信可能化権)の侵害になってしまいます。
(3)音楽著作物の著作者の権利
ここでは著作権の問題も生じます。
具体的には、コンサートで歌われたり演奏されている楽曲(音楽著作物)を録り込み、その動画をSNS投稿する場合、作詞者・作曲者(著作者)が持つ著作権(複製権・公衆送信権)を侵害することになります。
ちなみに、実演家やレコード製作者との関係では、たとえ1秒であっても形式的に権利侵害になり得ます。
これに対して、著作者との関係では、「あの曲だ」と認識できる程度の長さでなければ、著作権侵害とは評価されないという違いがあります。
(4)コンサート撮影者の権利
オンラインで配信されているコンサートは、スタッフなどがカメラで撮影しています。
生配信だけでなく同時録画もおこなわれている場合には、「映画の著作物」に該当し、無断で撮影・投稿することは、その著作権の侵害にもなるのではないかとも思われます。
このような中継に関する著作物性の有無については、スポーツ中継や国会中継などでさまざまな議論があり微妙なところですが、今回のケースでは、考慮する必要はないものとしましょう。
●違法アップロードは刑事罰もありえる?
──STARTO社は、違法アップロードなどについて法的措置を取る場合があると注意喚起しています。実際にライブ配信の一部をSNSへ投稿したファンは、どのような民事上・刑事上の責任を負う可能性があるのでしょうか。
実演家の権利、レコード製作者の権利、著作者の権利、いずれも著作権法上の権利の侵害です。
民事上でいえば、差止請求や損害賠償請求の対象になります。
また、刑事罰も規定されています。具体的には、「10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、または併科」という非常に重い罰則になっています(著作権法119条)。
実際には、悪質な海賊版業者などでない限り、このような重罰を科されることは考えづらいですが、STARTO社が注意喚起していることからしても、刑事罰を問われる可能性は否定できません。
●スクショ投稿は著作権侵害にならない?
──今回、動画の投稿が多かったのですが、動画ではなくスクリーンショット(静止画)を投稿した場合も同様でしょうか。
配信されているコンサートの映像をスクショで保存したり、スマートフォンで写真撮影したりしてSNSに投稿する場合を考えてみましょう。
(1)著作権法上の権利
実演家の録音権や録画権は、あくまで「録画・録音」を対象とする権利であり、写真(静止画)まで対象とするものではありません。著作権法上の「実演」は、音や動きを伴うことを前提にしているわけです。
同様に、実演の様子を撮影した写真をインターネット上にアップロードしたとしても、実演家の送信可能化権を侵害するものではないと考えられます。
そのため、実演家の権利は侵害しないということになります。
また、写真は無音であるため、当然ですが、レコード製作者の権利や音楽著作物の著作者の権利も侵害しません。
つまり、動画の場合とは異なり、静止画の投稿については、著作権法の権利の侵害にはあたらず、そのため、刑事罰もありません(ただし、コンサート撮影者との関係は別です)。
このように、動画か写真かによって結論が変わってくるのが、法律のおもしろいところです。
(2)肖像権・パブリシティ権
もっとも、写真であれば無断撮影やSNS投稿が自由というわけではありません。
実演家の実演の様子を無断で撮影し、その写真をSNSに投稿する行為は、肖像権またはパブリシティ権の侵害にあたると考えられます。
肖像権もパブリシティ権も、法律に明文規定がある権利ではなく、判例で認められてきた権利です。
刑事罰はありませんが、民事上は不法行為として、差止請求や損害賠償請求の対象になります。
そのため、写真であっても無断投稿には十分に注意しましょう。
【取材協力弁護士】
高木 啓成(たかき・ひろのり)弁護士
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。映像・音楽業界の企業やタレント事務所、ゲーム会社、広告代理店などをクライアントとするエンターテイメント法務を扱う。音楽事務所に所属して「週末作曲家」としても活動し、アイドルへ楽曲提供を行っている。HKT48の「Just a moment」で作曲家としてメジャーデビューした。Twitterアカウント @hirock_n
事務所名:渋谷カケル法律事務所
事務所URL:https://shibuyakakeru.com/
