今季から岐阜でプレーする山田。キャリアで初となるJ3挑戦を決めた理由を訊いた。(C)Kaz PhotographyFC GIFU

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 今季、キャリアで初めてJ3の舞台に身を置いた元日本代表MF山田直輝。昨季限りで湘南ベルマーレとの契約満了が発表され、一度はスパイクを脱ぐことさえ考えたが、燃え尽きかけていたサッカーへの情熱に再び火を灯し、FC岐阜への移籍を決断した。

 加入1年目からキャプテンという重責を担う35歳のベテランは、新たな挑戦の先で何を見据えているのか。※第3回(全3回)

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 昨シーズンが終わり、山田は静かにキャリアの岐路に立たされていた。「正直去年で引退しようかなと思っていて」。プロ17年目を迎えようとしていた男の心から、情熱の炎が消えかけていた。所属していた湘南で「必要とされてないような感じ」を抱いた時、サッカーへの熱が「スッと抜けた」という。

 そんな山田を現役続行へと奮い立たせたのは、最も身近な存在からの言葉だった。サッカーを楽しそうにプレーしていない夫の姿を見ていた妻が、こう問いかけた。

「大好きだったサッカーをこのままやめてもいいの?」

 この一言が、山田の心を揺さぶった。「あ、これは違うなって思ったのが、まず1つで」。そこから、止まっていた時間が再び動き出す。

「逆にもう、本当にサッカーがすごくやりたくなっちゃって。大好きだったサッカーを楽しむという気持ちを取り戻したいと思ったら、もう本当サッカーがやりたいって」

 一度は空っぽになったはずの心に、サッカーへの渇望がみるみる満ちていった。オフシーズンには「チームが決まっていないのに、今までで一番、身体を動かした」と語るほど、山田は再びボールを追いかける喜びに目覚めていた。

 現役続行を決意し、新たな挑戦の場を探す山田のもとに、熱意あるオファーが届く。岐阜の小松裕志社長が直々に話に来てくれたという。

「社長の情熱や、チームがどういうビジョン、理念を持ってやっているか、という話をしてくれた。岐阜の理念ってすごく面白いんです。岐阜で一番愛される企業になるという理念がある。

 僕はサッカー選手として、何を社会に還元できるかということをよく考えるようになっていたので、その理念、ビジョンが僕の中で探し求めていたものと一致していたんです」

 さらに、心を射抜かれたのは、真っ直ぐな言葉だった。

「そのビジョンを達成するためには、僕の力が必要だって。本当に本心で言ってくれていると感じた。カテゴリーがどうこうよりも『あ、このチームのために頑張りたいな』って気持ちにさせてくれたので、FC岐阜に行く決断をしました」

 自分を本気で必要としてくれるチームがある。その事実が、山田の行き先を明確にした。その覚悟は「正直、移籍するのはJリーグじゃなくても、海外でもどこでもいいと思っていた」という言葉に凝縮されている。最も強く自分を求めてくれた場所が、岐阜だったのだ。
 
 新天地では、加入1年目からキャプテンに任命された。任された役割は明確だ。「チームを強くしてくれ」。社長の想いを胸に、日々の練習から「かなり厳しくやっていたし、(周りの選手にも)強く要求していた」と山田は振り返る。

 しかし、J1、J2を知る男の目には、J3というカテゴリーならではの課題も映っていた。

「まだ昔の僕みたいな人は多いのかなという気はします」

 かつて自身もプロ入り直後、浦和時代の先輩・田中達也から「もっと本気になれる」と指摘されながら、当時はその真意に気づけなかった。その経験があるからこそ、モチベーション維持の仕方、若さゆえの考えを持つ選手たちの姿に過去の自分を重ねる。

「多分、田中達也さんが僕にしてくれた時の状況なんだろうなって。『本気でやってるよ』って、当時の僕みたいに思っているとは思う」