パリ五輪に出場した大畑。ベルギーに来て1か月強、あらゆる面で急加速的な順応ぶりを示している。写真:中田徹

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 最近のルーベンは終了間際の劇的ゴールが多く、監督の名前を拝借して「コールマン・タイム」という時間帯を作っている。3月2日の対ウェステルロー戦のクリス・コールマン監督は0-0で進んだ79分に、大畑歩夢を左ウイングバックのポジションに投入して勝負に出た。
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 大畑の見せ場は88分に来た。ハーフウェーラインを越したところでボールを持った大畑は前線にパスを付けると、そのまま左サイドを駆け上がって攻撃のスイッチを入れた。そして、ゴールライン近くからニアサイドに低く鋭いクロスを蹴り込んだが、オスカル・ヒルのダイレクトシュートは枠を外れていった。

「チームが点を取りに行く中、『チャンスが来たら得点に関わることができるように』と入りました。あの一本、組み立てまでは良かったんですけれど、最後のクロスをもう少し浮かしていたら奥の選手(ヨバン・ミヤトビッチ)がおそらくフリーだったので、そこができていたらなと思ってます」

 対戦相手のトップ下、坂本一彩は86分から右ウイングにポジションを移した。そして、坂本のほうから大畑に歩み寄って挨拶を交わし、2人は対峙した。ウェステルローの左サイドからのクロスに対して、ゴール前で大畑と坂本がボールのないところでポジションを取り合うシーンはあったが、目立ったワン・オン・ワンはなかった。

「彼は今、ベルギーで点を取って乗っている状態です(3ゴール・1アシスト)。日本人として本当に良いことだと思います。今回の試合でも素早い動きを見せました。最後、一緒のポジションでJリーグみたいになりました。もっと1対1の場面があったらよかったです」
 
 2月15日のデンダー戦(3-2)の後半からプレーしたのが大畑にとってのベルギーデビュー。ここまで2試合プレーしてみて、ベルギーリーグの感想を尋ねると背番号66はこう答えた。

「Jリーグとまったく違うサッカーだなというのと、組織というより個人で一人ひとり剥がすところだったり、本当に来てビックリしました。フィジカルもそうですし、足の長さや腕の長さといったリーチが全然違う。オープンサッカーで、(攻守が行き交うゼスチャーを交えて)ずっと行ってるような感じがある。最初は僕からすると『落ち着く場面も必要だな』と思ってたんですが、ベルギーはそういうサッカーなので、自分が合わせないといけません」

 24年シーズンのJリーグを昨年12月に終えると、1月にルーベンと契約してから一度日本に戻り、2月に入ってチームに合流した。

「12月からずっと試合に出てなかったので、この間のデンダー戦は45分間プレーしたんですが、それでも足を攣ったので、コンディションをもっと上げていかないといけません。自分の感覚的にはまだ90分間は持たないと思います。そこをもっと上げていきたいです。(ベルギーリーグのレギュラーシーズンが)あと2試合で終わり、それからプレーオフがあるので、勝負は次のシーズンだと思ってます」
 ベルギーに住み始めてまだ1か月。チームメイトに明本考浩、大南拓磨の2人がいるのは心強かったのでは?

「もちろんです。『いなかったら』と考えたらけっこうキツかったと思います。本当にいてくれて良かったです」
 
 どういうことを助けてもらったのだろうか。

「もちろん、私生活から全部(笑)。本当にゼロからの状態で来たので、そこは良かったです。ここは静かだし、スーパーが近いし、ちょっと行けばブリュッセルもあるので住みやすい街だと思います。こっちのスーパーは高いですね。食事は大南選手や明本選手のところに行って食べたり、外食したりしてます」

 どのような思いで欧州に来たのだろうか。

「『代表のために』とかではなく、一番は、自分のプレーがどこまで通用するのかチャレンジしたかった」

 4月に24歳を迎える大畑に、この1年を「オリンピックにも出たし、充実していたほうだと思いますね」と振り返ってもらいながら、話は前所属先である浦和レッズのチーム状況に話が飛んだ。

「昨シーズンはなかなか勝てない中、夏過ぎに監督がスコルジャさんになりましたが、それでもそんなに勝てませんでした。今シーズンも4戦2分2敗だったと思います。今朝、試合を見たんですが、苦しい状況なので、そこは応援してます」

 J1で107試合に出場し7得点を記録した大畑に「Jリーグでやり切ったたのか?」と尋ねると「まだ全然。また日本に帰ってやりたい気持ちもあります。帰るときにはもっとレベルアップして帰りたいです」というリターンパスが届いた。

――ベストの自分をJリーグで見せたいという気持ちがあるんですか?

「そうですね。こっちに、そんなに長くいるつもりはないので、レベルアップした状態で帰りたいと思ってます」

――鳥栖で2年、浦和で3年というタームで移籍している。いろいろなチームでチャレンジしたい、いろいろなレベルでチャレンジしたい、いろいろな国でチャレンジしたい、という思いがあるのでは?

「どうですかね。一番は『ひとつのクラブで長くやりたい』という気持ちがあるんですけれど、契約だったりタイミングだったりあるので、そこは特に気にしてないです」

――「早くステップアップしたい」という話を日本人選手からたくさん聞くんです。大畑選手は、ルーベンで一旦腰を据えて、ある程度ちゃんとここで名前を残して、その上で良いオファーがあれば移籍する、という考えでしょうか?

「そうですね」
 
 欧州でプレーした日本人選手がJリーグに復帰するトレンドがある。しかし、そのほとんどは欧州でやり切ったり、出場機会の減少に伴うものだったり、キャリアの最後のほうだったり、家族の都合であったり、ブレークし切れなかったりすることがほとんど。だが昨夏、働き盛りの川辺駿が推定350万ユーロ(約5億5000万円)という移籍金で、スタンダールからサンフレッチェ広島に復帰した例もある。

 未来のことは誰にも分からない。もちろん、彼が選手としてのピークをヨーロッパで迎えることになっても、それは幸せなこと。一方、Jリーグから欧州にどんどん選手が流出していくこのご時世、全盛期の大畑の姿をJリーグで見ることができたら、それもまた素晴らしいことではないだろうか。

「そんなに長く欧州にいるつもりはない」と語った大畑が、節目ごとにどういうジャッジを下していくか、今後の注目ポイントになるだろう。

取材・文●中田 徹