沼津で就任3年目の中山監督。「まずは裏だろう」と強調。「それを今季はどれだけ出していけるか」。写真:元川悦子

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 2月15日に開幕した2025年J3。消化試合にバラつきがあるなか、23日時点でアスルクラロ沼津、カマタマーレ讃岐、ザスパ群馬、FC大阪の4チームが1勝1分けで勝点4を確保。上位をキープしている状況だ。

 このうち、特に注目されるのが、中山雅史監督体制で3シーズン目の沼津。就任1年目の2023年は3位、2年目の24年は2位につけていた時期もあったが、2年続けて終盤に失速。最終的に13位、10位でフィニッシュする羽目になった。

 J2昇格はもちろん、プレーオフ圏内も逃しただけに、負けず嫌いの指揮官の悔しさはひとしおだったに違いない。

 とはいえ、年間運営費5〜6億円と小規模経営の沼津は、活躍した選手がすぐに引き抜かれてしまうクラブ。今季を迎えるにあたっても、昨季11得点の和田育がFC大阪、9得点の津久井匠海が水戸ホーリーホックへ移籍。中盤の要の1人だった持井響太がFC今治、左SBの茺託巳がカターレ富山へ赴くなど、多くの主力がチームを去っている。
 
 となれば、中山監督としても新たなチームを再構築しなければならない。鈴木拳士郎や森夢真、徳永晃太郎といった既存戦力に、東京農業大から加入した藤井建悟、専修大から迎え入れた一丸大地ら新人を融合させ、1年間戦い抜ける集団を作ろうと試みているのだ。

「それこそ、(今やっているのは)『トライ』です。メンバーが変わっているし、昨季と全く同じことをしても難しい。選手の能力とか特徴があるので、それに合わせた戦い方があると思いますが、基本的には攻守においてアクションを起こし、全員がどれだけ絡んでいけるのか。それをどうグラウンドで表現できるかだと思っています」

 中山監督はこう語気を強めたが、23日の松本山雅FC戦(1−1)を見る限りでは、これまでほど中盤のパス交換やボール保持にこだわらず、シンプルに前を狙うべく、より縦の速さを活かしたスタイルに変化している印象だった。

「昨年までもボールポゼッションに重きを置いていたわけではないですけど、実際にはそういうサッカーにはなっていた。でも、僕の中では『まずは裏だろう』という思いがあった。それを今季はどれだけ出していけるのかが重要なんです。

 一番の理想は“後出しじゃんけん”。相手が出てきたところで、次の手を打って、自分たちが優位に立つ。より高い強度やスピードの中でそれをやっていくというチャレンジだと思います」とも指揮官は熱っぽく語っていたのだ。

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 裏を狙う意識、縦への推進力を押し出そうとしている沼津にとって、狙いが具現化したシーンと言えるのが、1点ビハインドで迎えた77分の川又堅碁の同点弾だろう。

 この場面は、松本のGK大内一生のロングキックから中盤でのボールの奪い合いになったのが始まりだった。相手が一歩前に出たと思われたところで、途中出場の右SB一丸大地が前線に大きくボールを蹴り出し、待ち構えていた川又が一気にDF陣の背後へ。そのままスピードに乗って左足を一閃。1−1のドローに持ち込むことに成功した。

 この日の沼津は前半から松本に主導権を握られ、苦戦を強いられた挙句、56分に先制点を献上していただけに、選手交代によって攻撃のギアを上げ、起死回生の1点をもぎ取ったのは大きな意味があった。

「(一丸の)パスがトリッキーな感じだったんで、僕も騙されたんですけど、向こうも足が止まっていたんでラッキーだった。裏に抜け出す動きは、近年、足の状態もあってなかなかできなかったけど、今季はプレシーズンもしっかり練習できて、ここまで順調に来ているので、そういうプレーもだんだん増えている感じですね」とチーム最年長FWの川又も手応えを掴んだ様子だった。

「今年は『もう少し前に速く』というコンセプトでやっていて、自分たち中盤からどうボールを引き出すかが重要になってくる。中盤3人のメンバー構成が昨年と変わり、今は沼田(航征)と柳町(魁耀)とやっているので、連係をすり合わせていく必要があるかなと思います」と、中山体制でずっとインサイドハーフのポジションを担ってきた徳永も話したが、中山監督の戦術の微妙な変化をピッチ上で表現すべく、選手たちも躍起になっている。

 速いサッカーになればなるほど、体力的な負担も大きくなる。それを視野に入れ、今季の沼津はトレーニングメニューの中に素走りを導入。シーズンを通して走り切れる力を養っているという。
 
「今年からフィジカルコーチが代わって走りが入った。それが失速しない戦いにつながるかどうか分からないけど、昨年もいた僕らみたいな選手にとっては良い刺激。もちろん走れれば勝てるわけじゃないし、(サンフレッチェ)広島だってそこまで走って勝ってるわけでもない。ただ、土台作りとしては意味があると思っています」

 川又に次ぐ年長の齋藤学も前向きにコメントしていたが、そういったトライを通して、彼らは今季こそJ2昇格を本気で狙えるタフな集団に成長していこうとしているのだ。

「J2に上がるために必要なのは、自分たちがやりたいサッカーができなくなった時にどうするか。過去2年間はそれができなくて失速してしまった。でも今季はそうならないようにしていく必要があると思います。

 今日の松本山雅戦は良い戦いができなくて苦しんだけど、自分たちでコミュニケーションを取って、修正して、後半に追いつくことができた。満足はしていないですけど、少しは修正力を出せたのかなと思います」と徳永が言うように、この勝点1は価値あるものなのだろう。

 今季のJ3も大混戦になると見られるが、中山監督の「熱く戦う」というスピリットは選手たちに確実に浸透している。それも大きな強みになりそうだ。いずれにしても、2025年の沼津が右肩上がりの軌跡を辿っていくか注目したい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)