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Airbnbは、ホスト支援を強化する「補助ホスト」マーケットを新設し、物件掲載のハードルを下げ、供給拡大を目指している。

競合対策として、パーソナライズされた体験提供に注力し、SNSを中心にブランドキャンペーンを展開している。

短期賃貸市場への規制強化に対応し、ブランド価値を守るため一貫したメッセージ発信を重視。


宿泊施設のマッチングサービスを提供するエアビーアンドビー(Airbnb)は、自社プラットフォームにより多くの人が物件を掲載してくれることを望んでいる。そのため、同社は過去2年間で勢いを増してきたブランドキャンペーンに依存している。

10月中旬、エアビーアンドビーは同社プラットフォームで物件を貸し出しているホストが物件管理や清掃などのサービスに簡単にアクセスできるよう、内部の「補助ホスト」マーケットをローンチした。これにより、プラットフォーム上のホスティングがもっと容易になれば、より多くの人が自分の物件を掲載し、米国、英国、オーストラリアなどの主要な目的地市場での供給が増えるだろうと期待をかけている。

「時には、少々手間がかかりすぎるように感じることもあるし、初めての人の場合は少し敷居が高いように思うかもしれない」と、同社のグローバルマーケティング責任者であるヒロキ・アサイ氏は言う。

よりシンプルで直感的かつパーソナライズされた体験の提供



以前はパフォーマンスマーケティング手法に依存していたエアビーアンドビーだが、2020年にアサイ氏を採用した後、ブランドに焦点を当てた大規模なキャンペーンに回帰。今年上半期の同社の営業およびマーケティング費用は、2023年同期比13.9%増の10億8000万ドル(約1633億8000万円)に上った。

潜在的ホストをターゲットにしたメッセージは、2022年から実施しているブランドキャンペーン「Airbnb It」に集約されている。インハウスのクリエイティブチームはこの内部マーケットの導入を伝えるべく、キャンペーンの最新スポット「ロデオ(Rodeo)」を制作した。

アサイ氏は予算の詳細やキャンペーンの具体的なメディアミックスについては明言を避けたものの、YouTubeやインスタグラムなどの有料ソーシャルを中心に展開すると述べた。「一部の市場では有料TVも多少あるが、主にソーシャルキャンペーンだ」。

また、Airbnbはサイト内検索をアップデートし、ユーザーの過去の予約や「提案された」検索フィルターに基づく目的地のレコメンデーションを追加した。アサイ氏によると、アプリを通じてバケーションを予約するユーザーに、よりシンプルで直感的かつパーソナライズされた体験を提供することを意図しているという。

世界的には民泊サービスからホテルへ回帰する動き



この変更は、Booking.comやエクスペディア(Expedia)傘下のバーボ(Vrbo)といったホテルチェーンや仲介プラットフォームとの競争に対抗するエアビーアンドビーの最新の取り組みである。バーボは4月に独自のキャンペーンをローンチし、潜在的な物件ホストにアピールしようとしている。

旅行会社や航空会社イージージェット(EasyJet)と提携しているエージェンシーVCCPのプランニンググループ責任者、ステファン・ジーデントップ氏は「彼らは両サイドから圧力を受けている」と話す。

「多くの大規模ホテルが施設をアップグレードし、よりローカルな体験を受け入れ始めている。また特にヨーロッパでは、より独立したキュレーションされた体験を提供するブティックホテルが増えている。これはAirbnbにとってさらなる脅威となっている」と同氏は述べた。

Airbnbが提供するようなホームシェア体験とホテルとの価格差が縮小するにつれ、プレミアイン(Premier Inn)のようなホテルカテゴリーのブランドは、利便性と一貫性を強調して適応してきた。たとえば旅行会社トゥイ(Tui)は、2024年のスタートが予想外に好調だった理由に、パッケージホリデーの需要が高かったことを挙げている。

「明らかに、従来のAirbnbのような民泊サービスからホテルへ回帰する動きがみられる」と、クリエイティブエージェンシーのブレイブスパーク(Brave Spark)の戦略ディレクター、ケイティ・マリガン氏は米DIGIDAYに述べた。

会社のことを理解してもらうには



「こうしたプレッシャーに直面するなかで、Airbnbのブランド重視の姿勢は理にかなっている」と、ジーデントップ氏は言う。「直接的、間接的に多くの競合が存在する。その場合、ファネルの一番上を満たす必要がある。一貫性は非常に重要だ。一貫性はクリエイティビティに複合的な効果をもたらす」。

アサイ氏は、Airbnbが一貫したブランドの取り組みに注力することは、商業的な利益をもたらすだけでなく、近年同社が直面している世間の批判からブランドを守ることにも役立つと述べた。

たとえば、Airbnbは短期賃貸市場を取り締まろうとする英国や欧州の地方自治体と対立している。また、観光客に人気の高いバルセロナでは、2028年から短期賃貸の禁止が実施される予定だ。

「ブランドキャンペーンは、Airbnbとそうした批判とのあいだの『防御策』となる」とアサイ氏は言う。「我々が言いたいことを言わず、作りたいメッセージを作らなくても……ソーシャルやメディアで我々のメッセージが勝手に作られてしまう世界がある」と同氏は述べ、「我々がどのような会社で、何を大切にしているのかをしっかり理解してもらいたいだけだ」と言い添えた。

[原文:Airbnb doubles down on brand over performance for campaign to draw more hosts]

Sam Bradley(翻訳:Maya Kishida 編集:島田涼平)