三菱自動車が発売した「アウトランダー」の新型PHV(1日、東京都港区で)

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 自動車大手がプラグインハイブリッド車(PHV)の投入を加速させている。

 世界的に電気自動車(EV)の販売が減速するなか、ガソリンと電気を併用できる実用性と環境性能が評価され、需要が高まっているためだ。海外勢も開発を強化しており、今後は国内外での競争激化が予想される。(奈良橋大輔)

「充電の心配がない」

 三菱自動車は1日、スポーツ用多目的車(SUV)「アウトランダー」の新型PHVモデルを発表した。大幅改良は3年ぶりで、航続距離は電池だけで100キロ・メートル超と、現行車種から約20キロ・メートル伸ばした。価格は税込み526万円からで、欧米市場でも2025年から販売を予定する。

 加藤隆雄社長は「脱炭素に向けて電動化が加速しているが、充電の心配がないPHVは、今の時代の最適解だ」と強調した。

 他社の動きも活発だ。トヨタ自動車は10月、主力のプリウスに、税込み400万円を切るPHVを追加。マツダも10月に発売したSUV「CX―80」のラインアップにPHVを加えた。ホンダも、三菱自からのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を検討しているという。

 富士経済によると、世界のPHV販売台数は、24年の545万台から、30年には1031万台に倍増する見通しだ。PHVは、EVの本格普及までの「つなぎ」とみなされてきたが、加藤氏は「もう少し長く活躍できる。世の中の考え方が変わってきている」と話す。

「長期的にはEVシフト」

 にわかに高まったPHV人気の背景にあるのが、EVの成長鈍化だ。価格の高さや充電設備の少なさへの不安から、世界で販売が停滞している。富士経済は、EV大国の中国でも、24年は前年比7%減の532万台に落ち込むと予測する。

 こうした流れを受け、EV販売で急成長した中国BYDも、PHVの車種を拡充し始めた。7〜9月の販売台数は、EVは横ばいだったが、PHVは76%増の68万台と急伸した。

 欧米でも、スウェーデンのボルボ・カーが30年までに全ての新車をEVにする目標を撤回し、PHVの開発も進める。米ゼネラル・モーターズも同様の方針だ。

 トヨタなど日本勢の多くは、海外勢が進めてきた「EV一本足戦略」から距離を置き、ハイブリッド車も含めた多様な動力源の開発を続けてきた。足元のPHV人気は、追い風になるかもしれない。マツダの毛籠勝弘社長は「どの電動化技術が支持を受けるかは、まだ分からない。顧客のニーズに合わせて選択できる時代になると良い」と話す。

 もっとも、全方位戦略は開発費がかさみ、体力勝負にもなりかねない。調査会社フォーインの福田将宏氏は「長期的にはEVシフトが進むとの見方も根強い。資金分配の観点からは、難しいかじ取りが当面続くだろう」と指摘する。