ソフトバンク・近藤健介(左)とDeNAのタイラー・オースティン【写真:小林靖】

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中日、巨人、西武で捕手として活躍した中尾孝義氏が分析

「SMBC日本シリーズ2024」が、26日に横浜スタジアムで開幕する。パ・リーグのレギュラーシーズンを独走で制したソフトバンクと、リーグ3位に終わりながらクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がったDeNAが対戦する。現役時代に中日、巨人、西武で強打の捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏が展開を予想する。

「あえて予想するなら、ソフトバンクの4勝2敗。もっと早く決まってしまう気もします」というのが中尾氏の見立て。「DeNAが(試合に)勝つとすれば、2-1、3-1といったロースコアの展開に持ち込んだ時だと思います」。

 DeNAはレギュラーシーズンでリーグ最多の522得点を挙げた打線が売りだが、短期決戦は投手力が明暗を分けるケースが多い。巨人とのCSファイナルステージでも、シーズンでチーム防御率がリーグ5位の3.07で振るわなかった投手陣が、6試合で9失点(1試合平均1.5失点)と奮闘し、勝因となった。

「打ち合いになれば、ソフトバンクが有利でしょう。ソフトバンクの方が、打ち損じの少ない打者が多いと思います。4番の山川(穂高内野手)はCSで、レギュラーシーズンよりも確率の高い打撃をしていました」。今季本塁打、打点の2冠に輝く一方、打率は.247にとどまった山川だが、日本ハムとのCSファイナルステージ3試合では、打率.500(12打数6安打)、3本塁打6打点の猛打を振るっていた。

 両チームの“キーマン”を挙げるとすれば、中尾氏は「DeNAはオースティン、ソフトバンクは近藤」と見ている。

 タイラー・オースティン内野手はCSファイナルステージ6試合で、打率.200(20打数4安打)、2打点に過ぎなかったものの、本塁打2本は、1本が1-1の同点で迎えた7回に菅野智之投手から放った決勝ソロ、もう1本がフォスター・グリフィン投手から打った同点ソロ。いずれも勝利を呼び込む1発となった。

「4番の山川が活躍したのも後ろに近藤が控えていたからこそ」

 一方、「ソフトバンクで4番の山川がCSであれだけ活躍できたのも、後ろの5番に近藤が控えていたからこそです」と中尾氏は強調する。

 今季パ・リーグで唯一の3割打者(.314)となり、自身初の首位打者に輝いた近藤健介外野手は、レギュラーシーズン終盤に右足首を痛め戦線離脱していた。しかしCSでは「5番・指名打者」で復帰し、打率.545(11打数6安打)、1本塁打3打点をマーク。近藤が万全なら、相手投手は好調の山川を四球で歩かせるわけにもいかないのだ。

 投手陣を比較しても、「ソフトバンクの方が上。先発3本柱はなかなか打てない。特に、モイネロがエグい。普段対戦していないDeNA打線がとらえるのは至難の業でしょう」と中尾氏は言い切る。

 今季から先発に転向したリバン・モイネロ投手は、いきなり11勝5敗、リーグトップの防御率1.88をマークする無双ぶりだった。DeNAとは6月7日、敵地で行われたセ・パ交流戦で対戦し、8回1失点に抑えて勝利投手となっている。

「DeNAの強みは、CSで阪神、巨人を連破して勢いに乗っていること。逆にソフトバンクに不安な点があるとすれば、CSファイナルステージ終了後、日本シリーズ開幕までに1週間の間隔が空いてしまったこと(DeNAは4日間)くらいでしょう」

 CSファイナルステージで、日本ハムに3連勝し一蹴したソフトバンクに対し、DeNAは最終第6戦までもつれ込んだことを、逆にプラスへ転化できるか。時には思いがけないハプニングが勝敗を分けるのも、短期決戦の魅力である。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)