「南海トラフ巨大地震」が起きたら、名古屋に襲ってくる津波の「高さ」と「場所」

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液状化は、国際貿易港に深刻ダメージ

港区は名古屋市で唯一伊勢湾に面した海陸物流の一大拠点だ。区の南部は国際貿易港・名古屋港に所属する埠頭が大部分を占めている。区内には交通の動脈である国道23号線と伊勢湾岸自動車道が通り。鉄道は名古屋市営地下鉄名港線が東部を走り、名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線(あおなみ線)と、南東部には名古屋鉄道築港線が1区間だけ横断している。

南海トラフ巨大地震が発生した場合、大揺れ、液状化、津波などにより道路・鉄道など物流の大動脈が寸断される可能性がある。さらに、港区は最大震度7の激しい揺れに見舞われる。名古屋市の「地震災害危険度評価」では、大部分の地域が建物全壊率20%の区域に色分けされている。つまり、揺れだけで100軒のうち20軒は全壊する危険性があるという。その上大規模な液状化が発生すれば、建物、各種設備、危険物タンク、社会システムなどに大きなダメージを与える、その上、長周期地震動が襲い、最大5mの津波が押し寄せてくる。

2018年北海道胆振東部地震(M6.7)では、震源から約60km離れた札幌市清田区で大規模な液状化が発生し、砂交じりの濁流が流れ出し、85棟の住宅が傾くなどして応急危険度判定で「危険」と判定された。清田区は液状化危険度マップで危険とされていた地域だが、液状化の被害は住宅だけでなく、一帯の埋設配管なども被害を受け、停電、断水などによる不自由な生活を長く強いられることになった。

中でも一番厄介なのが上下水道などの埋設配管や暗渠・側溝・マンホールなどの浮き上がりや砂の流入、側方流動や構築物の不同沈下・傾倒、砂詰まり・損傷など。広範囲で液状化が発生すると、復興が長期にわたるため、上下水道、電力、ガスなどが長期断絶し液状化地域で暮らすことが困難となり、液状化疎開を余儀なくされた人たちも多い。

東日本大震災でも千葉県では千葉市美浜区、習志野市、浦安市などの東京湾沿岸の埋め立て地や川沿い地域で液状化により大きな被害を出した。住宅損壊、道路陥没、上下水道・配管損壊など。私も現地調査に行ったが、浦安の最大震度は震度5強だったが、あちこちで水と土砂が噴出し町中泥だらけになり、車が半分泥に埋まっていた。道路と建物の間に段差ができ、明海地区ではマンホールが道路の真ん中に地表から約2m突き出ていて、ぎょっとした。浦安だけで電柱が308本傾き、高級住宅街の一角で不同沈下や側方流動が発生し基礎ごと傾いた住宅も多かった。

浦安市における被害は、液状化被災世帯3万7023世帯、液状化面積約1455ha、液状化による下水道破損地区面積820ha、道路の被害延長111.5kmなど。浦安市全面積の86%で液状化が発生していた。その上、計画停電が3回もあり、ガス管も一部損傷し最大8631世帯への供給が停止。問題だったのは、3000個以上のマンホールに土砂が流入し、さらに上下水道管や暗渠の損壊・砂詰まり、漏水などによる長期断水、一部地区ではトイレや下水が流せない状態が長く続いた。浦安市では13カ所に919基の仮設トイレを設置、携帯用トイレ(便袋)を2万9626世帯に30万3868枚を配布した。断水は一時4万8840戸、減水は12万9000戸に上った。市は、給水車及び給水タンク約80台を学校などに配置、20日後にようやく応急給水は終了したが、下水道使用制限は35日間に及んだ。

津波の想定

南海トラフ巨大地震が発生すれば、日本で一番液状化の危険度が高いと推計される中京圏の中心である名古屋市でも、市の約8割を占める沖積平野や埋め立て地などで液状化が起こる可能性が高い。液状化については、前述の<「揺れ」「津波」「液状化」だけじゃない…「巨大地震」発生時に「大阪」で頻発する「意外な被害」>を参照。そして、津波もやってくる。

津波の詳細説明は、前述の<なんと12日間燃え続けた…「長周期地震動」で発生した「史上最悪の石油コンビナート火災」>、<「中央区・港区・江東区・品川区・大田区・江戸川区」で「最大3mの津波高」…「南海トラフ巨大地震」発生時の意外な想定>の記事を参照。

さらに関連記事<「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う「衝撃的な事態」>では、内閣府が出している情報をもとに、広範に及ぶ地震の影響を解説する。

「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う「衝撃的な事態」