銅線泥棒“生活圏”へ犯行拡大 電柱から電線切断され盗まれる 銅価格上昇で被害件数が約5500件→1万6000件に急増

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銅線窃盗が全国で急増し、被害が生活圏に広がっている。
2020年には約5500件だった金属窃盗の被害件数が、2023年には3倍以上に増加した。
銅価格の高騰や円安が背景にあり、漁港や公園、観光施設でも被害が相次いでいる。

「本当に許せない」観光施設でも銅線泥棒

全国で続発している銅線ケーブルの窃盗事件。
これまでの「銅線泥棒」は、工事現場や太陽光発電施設といった、人通りの少ない場所での犯行が一般的だった。

ところが最近、私たちの生活圏で起こるようになっている。

青井実キャスター:
警察庁によると、金属窃盗の被害件数は、統計を取り始めた2020年は、約5500件でした。しかし去年(2023年)には1万6000件以上と、3年で3倍に急増しています。

「銅線泥棒」が現れた千葉・鴨川市の漁港に取材に行った。

青井キャスター:
盗まれたのは漁港にある電線で、200メートルの銅線が8本で、約1600メートルにもなるといいます。
ーー電柱から電線が切断され盗まれたという銅線に、どうやって気づいたのでしょうか?

市民:
トイレは奥に1個あるけど、真っ暗だった。港が真っ暗だったので、あれ変だなって思って。1週間くらい工事している。けさ、ようやく明かりがついたから、そろそろ復旧かな。

青井キャスター:
被害額はあわせて約400万円だといいます。さらに、銅線泥棒は観光施設にも現れました。埼玉・行田市にある「古代蓮の里」では、公園のマンホールのフタが開いていて、地下に埋められている電線が切られていました。市の担当者に、どんな被害が出たのかを聞きました。

行田市都市計画課・寺田定弘課長:
電線が窃盗されたことで、古代蓮の里の公園の北側のトイレが使えなくなった。照明灯がつかなくなった。自動販売機の3機が通電していない。この行為は単なる窃盗ではなく、公共施設の破壊行為に近いので、本当に許せない。

銅価格の上昇と円安が影響

青井キャスター:
盗まれた銅線は814メートルで、被害額は約350万円にのぼり、現在も復旧していないといいます。被害を受け、現在警察が捜査していて、周辺のパトロールも行っているということです。

ほかにも、群馬県にある万座温泉スキー場で銅線ケーブルなどが盗まれ、4基のリフトが動かせなくなるなど、生活圏内で「銅線泥棒」による被害が相次いでいます。

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん(パックン):
アメリカでも、こういった事件は多く、ラスベガス市だけで、長さが300km分の動線が盗まれました。あと、ロサンゼルスでは、鉄の消火栓も数百も盗まれていて、火事があったら、防火活動できないため大迷惑です。

青井キャスター:
この銅線泥棒増加の背景について、専門家の田口庸友さんに聞きました。

七十七リサーチ&コンサルティング首席エコノミスト・田口庸友氏:
銅価格の上昇、高止まりなどの要因がある。犯罪のリスクを冒しても、それを上回る利益が得られるといったような状況。あとは歴史的な円安が進んだなどの要因がある。盲点を突くように、市街地でも人通りの少ないところで、狙われやすくなってきている。

青井キャスター:
銅の値段は2020年ごろと比較すると、約2倍に上がっています。銅線などの金属は盗まれたあとに、売り飛ばされることが多いといいます。銅線買い取り業者の方は、対処のしようがあるのでしょうか。

銅線買い取り業者:
盗んだものかどうかは、正直分からない。「あなたこれ盗んできたものですか」と聞いて、「そうです」という人はいない。弊社の場合はそういうリスクを極力減らしたいので、怪しい人からは買わない仕組みを作っている。

青井キャスター:
しかし、その怪しい人物から電話がかかってくることもあるそうです。

銅線買い取り業者:
「身分証出さないとダメですか」と聞かれることがあります。そういうのは、だいたい非通知でかけてくるので、怪しいなと思い、相手にしないようにやっている。

青井キャスター:
相次ぐ被害に、国も動き出しました。9月30日、金属盗対策に関する検討会が開かれ、警察庁は盗まれた品の流通防止や、犯行に使用される道具に関する法規制のあり方も含めた対策の検討を進めています。身近にも迫る銅線泥棒に、私たちも日ごろから目を光らせる必要があるのかもしれません。
(「イット!」10月16日放送より)