◆「自分が面白いと思えることが一番」

 膨大なインプットの中から、面白いものをすくい上げ、ビジネスになるものを見つける。これは自身で実践するだけでなく、編集長として後輩たちにも伝えてきたのだという。

「僕はよく『君にしか作れない企画を出してほしい』と、会社の人間に言ってきました。企画で大事なのは、オリジナリティです。自分が何かのオタクになるか、趣味に走ってみれば、きっと読者はついてくるんです。僕もある意味では、裏社会オタクだと思います。それを見たい人がいるから、商品になるんです」

 まずは自分が「面白い」と思えることが一番で、「お金のために仕事をしたことはありません」と断言する。

「編集でも創作でも、がんばってもうまくいくとは限らないんです。前の作品が売れても、次の作品が売れるなんて全然わからない。ただ、努力することで、その可能性をあげることはできます。そうやって一生懸命取り組むことが大事なんです。

 自分も楽しんでいると、相手にも伝わります。以前、読者から『本をまるまる一冊、初めて読めました』という感想をもらったことがありました。あれはすごく嬉しかったですね」

--彩図社を退職し、今後は編集者から作家業をメインにシフトする予定で、YouTubeの企画と漫画原作に仕事を絞っているという草下さん。てっきり時間ができたと思いきや「漫画原作は9本になりそうで、まだまだ忙しくなりそうです」と笑う。

 草下さんは、さまざまな形でこれからもヒット作を生み出し続けていくのだろう。

<取材・文/綾部まと、編集・撮影/藤井厚年>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother