[10.15 W杯最終予選 日本 1-1 オーストラリア 埼玉]

 MF遠藤航(リバプール)の体調不良で先発のチャンスを掴んだ日本代表MF田中碧(リーズ)だったが、結果でアピールすることは叶わなかった。1-1のドローに終わった試合後、田中は「勝ち点3が取れなかったし、出る以上は勝ち点3が最大の功績なので、そこは悔しい」と感情をあらわにしつつ、「ただ冷静になってみると、勝ち点1を拾えたこと、そこ自体はポジティブに捉えないといけない」と追いつく形でのドローを前向きに受け止めようとしていた。

 3年前のカタールW杯最終予選では、同じ埼玉スタジアム2002のオーストラリア戦で最終予選デビューを飾った田中。その一戦ではA代表初ゴールも奪う活躍も見せ、当時1勝2敗と崖っぷちに立っていた日本代表を救っていたが、この日は最終予選3戦全勝と勢いに乗るチームの中で、試合前に話していた「あの時は右も左も分からないまま、ただがむしゃらにやって助けられてサッカーしていた部分もあったけど今はまた違う」との言葉どおり、異なる役割を担おうとしていた。

「ボールをチームとして保持するのは心がけていたし、いい意味でトランジションを減らせればと思っていた」。チームとしての狙いはボールを保持しながら相手を押し込むことで、オーストラリアが得意とするオープンな展開をなるべく避け、主導権を握り続けながらゴールを狙うこと。その目論見は序盤から奏功し、MF守田英正(スポルティング)のゲームメイクに田中が呼応する形で、試合を優位に進めていった。

 オーストラリアの1トップ2シャドーに対し、日本は3バックに加えて守田が低い位置に降りることで、ビルドアップの安定性は向上。また徐々に田中が左サイドに流れながらスペースを突くことで、そこに相手を引きつけ、左ウイングバックのMF三笘薫へのパスコースを開けさせるなど、狙いを持った攻撃の流れも随所に見られた。

 だが、結果的にはオーストラリアの5バックを効果的に崩せず、1-1のドロー。田中は「前に人数をかけるところでどれくらい行っていいのかというのは、僕も3-4-3で初めて(先発で)出るのもあって、相手がオーストラリアだとカウンターもある中で様子を見ていた部分もあった」と葛藤をにじませつつも、「もう少し前に入って行っても良かったと思う」と反省点を口にした。

 とはいえ、ビルドアップのバランスを模索する際に後ろに重くなるのはよくある現象。試合の中で試行錯誤が見られたことも、「最後は入っていってチャンスも作れたし、自分がボックスの近くでプレーすることでチャンスを作れると思うので、そこの回数を増やす必要があった」という課題に向き合ったことも、今後に向けた一つのモデルケースになりそうだ。

「重くなる時間帯はあるのが事実だし、重くして自分たちがボールを握る時間帯を増やすことも大切。その使い分け。自分自身も3-4-3で最終予選に出るのは初めてだったので、そこはこれからより変えていける部分だと思うし、より高い位置に出て行けるし、アンカーとしてもプレーできるし、僕はサイドに行ってもできるので、立ち位置をうまく整備できれば、そこを守田くんともっと話し合ってできれば、より面白いサッカーができるとは思う」(田中)。11月からは再び遠藤とのポジション争いが始まるが、“攻撃的3バック”布陣においての個性は示す一戦となった。

(取材・文 竹内達也)