最終予選ではいまだ出場機会がない菅原。3−4−2−1布陣で最適のポジションは? 写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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“鬼門”ジッダでのサウジアラビア戦を2−0で勝利し、2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選3連勝でC組のトップに立つ日本代表。

 サウジ戦で森保一監督は、これまで同じポジションでライバル関係だった三笘薫(ブライトン)と前田大然(セルティック)、堂安律(フライブルク)と伊東純也(S・ランス)を左右のシャドーとウイングバックで共存させるなど、新たな組み合わせと配置にもトライ。結果のみならず、内容面でも収穫の多い一戦だったと言っていい。

 その傍らで、全く出番を得られない選手もいる。その筆頭が菅原由勢(サウサンプトン)だろう。2023年は右サイドバックのレギュラーに君臨し、9月のドイツ戦勝利(4−1)の立役者となった男は、今年6月からの3−4−2−1布陣採用でポジションを失う形になっているのだ。

 今年に入ってからの菅原は、1〜2月のアジアカップで調子を落とし、代表での序列が下がる格好に。それでも、すぐさま気持ちを切り替え、3月から新たなマインドで再スタートを切った。

 そして今夏には悲願だったイングランド・プレミアリーグに初参戦。ここまで全7試合に出場し、チームはいまだ未勝利だが、アーセナルやニューカッスルとの対戦などで高度な国際経験を積み重ねている。
 
 今季のサウサンプトンは3バックと4バックを併用。3バックでは右のウイングバックがメインだが、最終ラインの右に入ることもある。そして4バックでは右SBでプレー。臨機応変さをアピールしているのだ。

「チームは勝てていないので、評価は難しいですけど、個人的にはプレミアリーグ1年目というところですごく違いも感じるし、対応していかなきゃいけない部分もまだまだあります。

 その反面、自分のやれることもすごく多いですし、このまま一戦一戦を大切に戦っていけば、確実に成長できる場所だなと毎試合感じています」と、本人も充実感を覚えている様子。適応力やインテリジェンス、ユーティリティ性を含めて優れた人材だけに、今の代表で使わないのはあまりにももったいない。

「僕がプレミアに行ったから代表で出られる確約はもちろんないし、森保監督もどういう選手を使ってゲームを組み立てるかを常に考えている。そういうなかで、僕に限らず、自チームで出ていても代表で出られない選手は多いと思います。それでもみんなすごくモチベーションが高い。出た時に自分の価値を証明しようという気持ちを僕も持っていますし、そういう悔しさを持っていなければ選手としてダメですよね」と、賢い菅原は自分の立ち位置を冷静に客観視している。

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 今の代表で菅原が出るとすれば、右ウイングバックか3バック右となるはず。

 前者の場合は2022年カタールW杯メンバーの堂安と伊東がいて、指揮官の2人に対する信頼も絶大だ。ここ3試合は堂安が先発して攻守両面で異彩を放ち、伊東がジョーカーとして後半から登場。確実に得点につながる結果を残している。

 そんな2人に比べると「菅原は攻撃力でやや見劣りする」という評価があるから、今は起用が見送られているのだろう。

 ただ、試合展開や相手次第では、菅原の方がベターということもあり得る。たとえば日本がリードして、終盤に守りを固めたい時などは、より有効なピースになり得る。そういった最適解を森保監督にはいち早く見出してほしいところだ。

 一方、後者の場合だと、板倉滉(ボルシアMG)や間もなく怪我から復帰してくる冨安健洋(アーセナル)がライバルになる。カタールW杯前から主軸と位置付けられる2人を外して菅原を入れるというチョイスは今のところ難しそう。となれば、やはり彼は右ウイングバックで活路を見出していくのが賢明だ。

「(右ウイングバックでは)前に関わっていく回数、得点に繋がるプレーはもっともっと出せると思う。そこはチームでもあまり結果を出していないので、もっともっと自分にシビアに言い聞かせないといけないですね。自分は攻守両面に関わる部分や走力は十分に出せると考えている。守備に重きを置くんじゃなくて、今、出ている選手を超える攻撃力を目ざしていくことが大事になると思っています」
 
 菅原本人も今、何をすべきかよく分かっている。ならば、練習や所属クラブの試合で攻撃面の際立った違いを出すべく、積極的に取り組んでいくしかないのだ。

 さしあたって、次は15日のオーストラリア戦。チームは12日から国内で全体練習をスタートするが、おそらく森保監督は堂安のスタメン、伊東のジョーカーを変えないだろう。菅原が出番を得る可能性は低いものの、彼には11月もその先もチャンスがある。

 特に11月はいずれもアウェーでインドネシア、中国という格下との2連戦。そこで余裕ある戦いができれば、指揮官も「今回は菅原を右ウイングバックでテストしてみたい」と考えるかもしれない。

 1年前まで右SBの絶対的主力だった選手にとっては過酷な環境に他ならないが、一つひとつ序列を引き上げていくしか出番を勝ち取る方法はない。

 現実の厳しさを受け止めつつ、持ち前のアグレッシブさと負けじ魂を前面に押し出し、貪欲にぶつかっていくことが菅原にはできるはず。今は辛いだろうが、その苦悩が明るい未来につながると信じて、高みを目ざし続けてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)