予選でいまだ無失点。隙のない守備を続けていると思うけど、ロングボール対策はまだ完璧ではないと思う。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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 これまでアウェーのサウジ戦は勝てていなかったけど、ようやく勝利できたね。ワールドカップのアジア最終予選、連勝中の日本は敵地でサウジに2−0。これで3連勝だ。

 現地の気温や大勢のサウジサポなど、これぞアウェーで難しさはあったと思う。でも、日本は前半の早い時間帯に先制できた。右の堂安から左の三笘へ、その折り返しを守田がヘッドで落として鎌田が押し込む。

 あれだけ左右に振られれば、サウジも対応が難しかっただろうね。ピッチを広く使ってゴールをこじ開けてみせた。素晴らしい得点だった。終盤の追加点も、いずれも途中出場の伊東のコーナーから小川がヘッドで叩き込む。セットプレーで点が取れたのも大きかった。

 効率良く得点して、粘り強く守る。予選3試合を終えて計14ゴール、失点はゼロ。まさに盤石の勝ちっぷりだ。選手層も厚いし、アジアではもはや敵なしじゃないかな。

 そう、アジアでは――。日本、強いなって思う一方で、2年後のワールドカップを考えると、懸念がないわけではない。

 この前のアジアカップしかり、もっと言えば、2018年のロシア・ワールドカップ、ベルギー戦で敗れた時も。やっぱり日本は、ロングボールに対する弱さ、危なっかしさがまだあると思う。
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 今回のサウジは、最初はドリブルなど地上戦で勝負してきたけど、特に後半は斜めのロングボールで、日本の3バックの脇を狙ってきていた。結果的に失点はしなかったとはいえ、それでもピンチにつながりそうな雰囲気はあった。

 ボールの質さえ良ければ、いくら人数が揃っていても、ロングボール1本で簡単に崩される。当然ながら、ヨーロッパや南米など世界レベルでは、その質はグンと上がる。

 アジアレベルで日本はまだ、どこか不安定さが見え隠れする。細かいところだけど、世界を見据えると、どうしても気になるかな。

 今はまだはっきりと表面化していないウィークな部分だと思う。遠藤や守田らが陣取る中盤の強度はすこぶる高い。でもそこを飛び越えられて、ラインを押し下げられた時に、どう対処するか。3バックの脇をいかに埋めるか。両ワイドが下がれば、それこそ攻撃に迫力がなくなってしまう。

 次は選手個々のサイズがあるオーストラリアが相手。最初からパワープレーに持ち込まれたら苦戦するかもしれない。実力的に日本が上なのは間違いないけど、相手の戦略を含めて、4連勝を期待しつつ、日本の戦いぶりに注目したい。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、52歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。