7回2死満塁、二飛に倒れた萩尾匡也(カメラ・相川 和寛)

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◆JERA セ・リーグ 阪神0―1巨人(23日・甲子園)

 7回。先制のチャンスに阿部監督は坂本を代打に送り込んだ。22日の試合で3度の得点圏で凡退し、敗戦の責任を一身に背負った男を、ふさぎこんだ気分のまま甲子園から帰すわけにはいかない。優勝へ、日本一へ、これから先、もっと坂本の力が必要だから。指揮官はそんな思いだったと思う。もちろん信頼する気持ちと同時に、ある意味、試合の勝ち負けを度外視した賭けでもあった。

 期待に応えた坂本も、さすがの百戦錬磨。前夜、ことごとく内角で打ち取られていたため、勝負球は外角だろうと読み、ボール気味の外角ストレートを軽打でタイムリーにした。一塁ベース上でも笑顔はなかった。「昨日の失敗がある。これぐらいの仕事はしなきゃいけない」。そんな表情に見えた。

 この勝利で優勝に8割まで近づいたように思える。この2連戦の甲子園独特のムードを考えると、CSでの戦いは是が非でも本拠地で行いたい。日本一へ駆け上がるために必要なのが優勝ということになる。

 1点を先制して、なお2死満塁。長野の代打も考えられたが、萩尾がそのまま打席に。浅野をスタメンで起用していることと同様に、ベテランに頼るだけではなく、若手にも修羅場を経験させる。阿部監督の度胸が据わった采配だった。(スポーツ報知評論家・高木 豊)