「チリ産ウニを摩周湖の水で洗浄して再冷凍」「外国産のそば粉でも山梨県産」…!寄付金総額1兆円の裏で起きている「ふるさと納税」の「信じられない加工」の実態

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「こんな仕事やりたくないんです……」ある自治体のふるさと納税担当者は、取材にそう漏らした。1兆円市場の裏で、現場では疲弊する職員が続出。「税金集め競争」と化した実態を明らかにする。

冷凍ウニを解凍して再冷凍

総務省が8月2日、'23年度のふるさと納税の寄付金総額を発表。その額は1兆1175億円に上った。だが、初めて1兆円の大台を突破した裏で、自治体の現場では「返礼品競争」が激化している。

総務省が定めるルールは、「返礼品の金額は寄付額の3割以下」、そして、市区町村内での加工により「相応の付加価値が生じている」ものを「地産品」として認める、というもの。限られたコストのなかでおトク感のある品をそろえ、なおかつ総務省の基準もクリアする―各自治体が「税金集め」に血道をあげた結果、名ばかりと言われかねない「地産品」を返礼品とするケースが多発しているのだ。

本誌は今回、各自治体のさまざまな返礼品を調査。市役所や町・村役場の担当者へ取材したところ、各自治体が置かれた苦しい状況も浮かび上がってきた。以下は、その実例である。

・北海道弟子屈町のウニ

返礼品として絶大な人気を誇る「冷凍ウニ」が寄付金額1万5000円で200gもらえる。

ポータルサイト上には「原産地:チリ産」と明記されているが、地産品とするためにどんな「加工」を行っているのか。町役場の担当者は次のように答えた。

「事業所からは冷凍で輸入していると聞いています。そのうえで解凍して異物がないか確認し、摩周湖の伏流水を使って洗浄しています。そのほか、防腐剤も吹きかけている。

職員や副町長も加工場には足を運び、定期的に状態を見に行っています。総務省に提出した『返礼品申請書』にも加工方法を記載し、許可をもらっています」

コストがかかるうえ身崩れなどのリスクもあるため、海外産の冷凍ウニは解凍せずそのまま出荷することが一般的だ。地元で「加工」し付加価値を与えるため、弟子屈町ではわざわざ摩周湖の水で洗浄しているのだろう。

「国産」と謳っているが…

・北海道網走市のタラバガニ

寄付金額5万6000円で約1kg。ロシア産。こちらも取材に対し、「ロシアで船上冷凍したものを事業者が地域内で茹で、再冷凍している」と回答。市役所の担当者は率直にこうも明かしてくれた。

「確かに同業者が一般販売しているロシア産タラバガニは、一度冷凍したものをそのまま消費者に届けている。しかしふるさと納税の場合、それでは地場産品基準と合致しないため、こうした工程を経ていると思われます」

・山梨県忍野村の蕎麦

寄付金額8500円で約10人前(250g×5個入り)。ポータルサイト上では「山梨県産」と明記されているが、村役場の担当者は「蕎麦粉の産地は忍野村ではない」とし、外国産を含め産地は限定しておらず、「問屋さんがどこのものを持っているかによって変わってくる」と話した。

そうであるならば、「山梨県産」ではなく、「県内製造」などの表記に変えないのか―そう尋ねると、担当者はこう語った。

「総務省にも詳しく説明し、許可をいただいている。厳密に言うと(県内産とは)違うという位置づけになってしまうかもしれないですが、それを言い始めると日本中ほぼすべての蕎麦がダメということになってしまうので……。忍野村のおそば屋さんが、丹精込めて作っているのは間違いありません」

・北海道千歳市のラムスペアリブ

寄付金額1万9000円で約1.5kg。ニュージーランド産。前述したウニやカニと同様、外国産ラム肉も現地で冷凍したものをそのまま販売するのが一般的で、総務省は「肉や魚を単に切り分けただけでは地場産品として認められない」とも定めている。

地産品の基準を満たすための「加工」について聞くと、同市の担当者は次のように語った。

「切り分けただけでなく、温度管理や品質チェックも含めた工程を総務省に申請し、パスしています」

今回取材した自治体はいずれも、総務省に申請したうえで許可を得ており、本誌の取材に対しても「総務省から疑義があると指摘されればすぐに見直す」と口をそろえた。

後編記事『「中間業者」がボロ儲け、総務省も「疑義のある返礼品はある」と認知…!自治体職員が「ふるさと納税は悪魔の制度」と呼ぶ「返礼品競争のヤバすぎる実態」』へ続く。

「週刊現代」202491421日合併号より

「中間業者」がボロ儲け、総務省も「疑義のある返礼品はある」と認知…!自治体職員が「ふるさと納税は悪魔の制度」と呼ぶ「返礼品競争のヤバすぎる実態」