左利きのCBアイダル(右)。鬼木監督は「カバーリングやパスの供給を落ち着いてやっていた」と評価。写真:福冨倖希

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 Jリーグ、天皇杯と並び日本サッカーの3大タイトルのひとつとされるリーグカップ戦、JリーグYBCルヴァンカップのプライムラウンドが9月4日、準々決勝第1戦でスタートした。Uvanceとどろきスタジアムでは、ホームの川崎フロンターレがJ2のヴァンフォーレ甲府に1−0で先勝。遠野大弥が27分に決勝点を蹴り込んだ。
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 今シーズンは負傷者が多く、リーグ戦の第29節を終えて20チーム中14位と苦しむ川崎は、加入して間もない3人の選手をこの一戦で起用した。FC町田ゼルビアから期限付き移籍したGK山口瑠伊、サガン鳥栖から加わったMF河原創、そしてレッドブル・ブラガンチーノ(ブラジル)からやはり期限付き移籍したコロンビア人DF、セサル・アイダルである。

 川崎は特にセンターバックの補強が急務だった。丸山祐一、ジェジエウが負傷で離脱。大南拓磨はOHルーヴェン(ベルギー)に期限付き移籍。このルヴァンカップの期間は、パリオリンピックにおける活躍で一躍クローズアップされた高井幸大が日本代表に招集されて、チームを離れている。

 この7月に移籍が発表されたアイダルは、甲府戦で車屋紳太郎とセンターバックのコンビを組んだ。クリーンシートで試合を終えたこともあり、まずは無難なデビュー戦といえるだろう。88分にはチームのピンチを救い、勝利に貢献した。ピーター・ウタカがGK山口をかわして角度のないところから放ったシュートをゴールポスト際で蹴り出し、CKに逃れた。71分には相手陣内に進出し、強烈なミドルシュートで甲府ゴールを脅かす場面もあった。
 
 試合後の記者会見で新加入選手のパフォーマンスについて問われた鬼木達監督は「全員が彼ららしいプレーを見せてくれた」と前置きした上で、アイダルについては「セサルもゲームはそんなにこなしてこなかったが、カバーリングやパスの供給を落ち着いてやっていた。課題はあるが、それは次のゲームに向けて修正できれば」と評していた。

 183センチ、76キロの体躯は、少し華奢な印象がある。ウタカとの競り合いでは当たり負けする場面もあった。相手がシュートを撃つ際の間合いについても、改善の余地がありそうだ。18歳になった翌日にアトレティコ・ジュニオールでプロデビューを果たしたアイダルは、当時の『EL HERALDO』紙に「自分の主な長所はテクニック、安定性、そして自信だ」と語っている。ファイターというより、クレバーな守りが持ち味なのだろう。

 9月8日には甲府とのルヴァンカップ準々決勝第2戦を控え、間もなくアジアクラブ王者を目ざすAFCチャンピオンズリーグエリートも開幕する。そして、2連敗中のリーグ戦では順位も上げていかなければならない。23歳のセンターバックがディフェンスラインの中央に君臨する可能性を秘めているのか、今後の日本サッカーへの適応が注目される。

取材・文●石川 聡