日清食品が小売価格拘束。警告について、公取委が記者会見(C)共同通信社

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 この手の“犯罪”は脱税と同様に極めて「タチが悪い」(法曹関係者)とされている。被害者を特定することが困難なためだ。端的に言えば被害者は国民であり、消費者ということになるが、では自分が具体的にどれくらいの不利益を被ったのか、損害額も被害の実態も分からないので実感が湧かない。従って犯罪者の贖罪意識も乏しい。

 日清食品ホールディングス(HD)傘下の即席麺最大手、日清食品がカップ麺の店頭価格を通告・指定した金額まで引き上げるようスーパーなど小売業者に圧力をかけていたとして公正取引委員会が先週、同社に対して「警告」を発した。独占禁止法でご法度とされている「再販売価格の拘束」に当たる疑いがあるというのである。

 対象となった商品は「カップヌードル」やシリーズの「シーフードヌードル」「カレー」と「日清のどん兵衛きつねうどん」「日清焼きそばU.F.O.」の5品目。今年3月の消費者調査ではカップヌードルが国内シェア34.0%、どん兵衛が同20.6%を獲得するなどいずれも日清が高い占有率やブランド力を持つ。

 公取委によると、同社はこうした優越的地位をいいことに、2022年6月と23年6月の2回にわたって希望小売価格をそれぞれ5〜12%、10〜13%引き上げた際、店頭価格の目安を設定。範囲内で売るよう小売店側に要請していたという。

 一連の行為は「15年ごろから続いていた」(公取委関係者)とも言われ、小売店側が要請に応じているか、担当者が実際に店舗を回り、値札をスマホで撮影したり、商品を購入してレシートを集めるなどチェックを繰り返していたというからあざとい。

 日清食品HDの業績はまさに「絶好調」(市場関係者)だ。24年3月期は過去最高となる最終利益541億円を叩き出し、25年3月期はこれを更新する勢いだ。しかしこうした好業績が不当な手段で彩られたものだとしたら消費者に対する重大な背信だろう。

 もっとも値上げが相次ぐ食品業界では「日清以外にも過剰利得をむさぼっているメーカーは少なくない」(事情通)との噂がしきりと駆け巡る。マヨネーズやドレッシングなど大手の寡占状態にある市場や製品ほど、そのさえずりはかまびすしい。

(重道武司/経済ジャーナリスト)